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特集 目からうろこの海外ドラマのトレンド(2) アメドラには欠かせない!カナダのテレビ最新事情

型破りシネマ塾

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型破りシネマ塾 最終回

こんな作品もメイド・イン・カナダ!最新ドラマのパイロット事情カナダが舞台のお薦め最新ドラマ

目からうろこの海外ドラマのトレンド(2)アメドラには欠かせない!カナダのテレビ最新事情

舞台はアメリカでも実は撮影地はカナダという作品が、ここ10年で急増している最新事情をレポートした昨年の特集の第2弾! バンクーバー在住歴10年以上で、海外ドラマにも詳しいライターの高野宣李さんが、現地の最新情報を交えながらカナダで撮影されているアメリカのテレビドラマの最新事情をご紹介します!
 
文 / 高野宣李

思わぬ所にメープル印!こんな映画もあんなドラマもメイド・イン・カナダ

 「マクドナルド」といえば誰もが思い浮かべる黄色い「M」のロゴ。アメリカ文化を象徴するといってもいいぐらい世界中で見掛けるものだが、カナダにあるマクドナルドの「M」にはカエデの葉=メープル印がひっそりと付いている。まるで“一見アメリカっぽいけど実はカナダです”とひそかに主張しているようだ。今や「ハリウッドノース」という呼び名がすっかり定着したカナダでは、メープル印は付かないものの、アメリカ資本の映画やドラマが数多く撮影されている。最近の映画では、『マン・オブ・スティール』(ブリティッシュコロンビア州バンクーバー)や『パシフィック・リム』(オンタリオ州トロント)、今後の公開作では『X-MEN:フューチャー&パスト』(ケベック州モントリオール)『GODZILLA』『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ(原題) / Fifty Shades of Gray』(ブリティッシュコロンビア州バンクーバー)などの話題作が続々登場する。テレビドラマでは「SUPERNATURAL スーパーナチュラル」「ARROW/アロー」「ワンス・アポン・ア・タイム」等がバンクーバー、「SUITS/スーツ」「ハンニバル」はトロント、真田広之がレギュラー出演しているアメリカのSyfyチャンネルの話題作「ヘリックス(原題) / Helix」はモントリオールでの撮影だ。

 こうしたハリウッドノースの盛況ぶりを支える大きな柱は、各州が提供する税制上の優遇措置。プロダクションの誘致が成功すれば雇用創出にもつながり、結果的に経済の活性化、税収の増加などが見込めるからだ。しかし近年、アメリカ各州も大幅な税優遇を打ち出して、映画産業の誘致に乗り出してきた。例えば『マン・オブ・スティール』の続編はトロントで撮影予定だったが、3,500万ドル(約35億円・1ドル100円計算)の税優遇を提供したミシガン州に移動することになった。また、ルイジアナ、ジョージア、テキサス、ノースカロライナ、サウスカロライナなどを中心とした南部の各州はより多くの税優遇を提供して、積極的に誘致を働き掛けており、今や「ハリウッドサウス」と呼ばれるようになっている。「トゥルーブラッド」「ザ・オリジナルズ(原題) / The Originals」(「ヴァンパイア・ダイアリーズ」のスピンオフ / ルイジアナ州)、「ウォーキング・デッド」「ヴァンパイア・ダイアリーズ」(ジョージア州)、「レボリューション」(テキサス州)、「スリーピー・ホロウ」(ノースカロライナ州)の他、「NCIS ~ネイビー犯罪捜査班」の新スピンオフはその名もズバリ「NCIS:ニューオーリンズ(原題) / NCIS: New Orleans」。この映画・テレビ業界版南北戦争、今後の行方が気になるところだ。

「SUPERNATURAL Ⅶ<セブンス・シーズン> コンプリート・ボックス」(Blu-Ray4枚組)発売・販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ SUPERNATURAL and all related characters and elements are trademarks of and (C) Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.「SUITS/スーツ シーズン2DVD-BOX」発売・販売元:NBC ニバーサル・エンターテイメントジャパン Film (C) 2012 Universal Studios.All Rights Reserved.「ヴァンパイア・ダイアリーズ <サード・シーズン> コンプリート・ボックス」(Blu-Ray4 枚組)発売・販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ(C)2012 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
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元祖ハリウッドノースの底力!押さえておきたい最新ドラマのパイロット事情

「ベイツ・モーテル(原題) / Bates Motel」でノーマン・ベイツ役を演じるフレディ・ハイモアと、その母ノーマ・ベイツを演じるヴェラ・ファーミガ Vera Anderson / WireImage / ゲッティ イメージズ 「Almost Human/オールモスト・ヒューマン」のメインキャスト(左から、カール・アーバン、リリ・テイラー、 マイケル・イーリー、ミンカ・ケリー)Michael Buckner / ゲッティ イメージズ

 1990年代に「X-ファイル」の撮影地となったことで、ハリウッドノース活況への足がかりとなったバンクーバー。しかし、ブリティッシュコロンビア州は税優遇制度の枠がケベック州やオンタリオ州に比べて小さく、同じハリウッドノース内での誘致合戦で不利な状況にある。撮影プロダクションが流出することに危機感を抱いたブリティッシュコロンビア州の映画業界では、業界全体や政治に訴え掛けるため、昨年“Save BC Film”というキャンペーンを展開した。とはいえ、いまだにバンクーバーで撮影されるテレビドラマのプロダクション数はトロントやモントリオールに比べてダントツに多い。コスト面の他、同じ西海岸で本社のあるロサンゼルスと時差がなく連絡できるというのは大きなポイントなのだ。

 毎年1月から4月のパイロットシーズンには、新ドラマのパイロット版製作のため大勢の撮影クルーや俳優たちがバンクーバーに集結する。昨シーズン、バンクーバーでパイロット版を撮影してシリーズ化されたのは、ヒッチコックの『サイコ』に登場する殺人鬼ノーマン・ベイツの高校時代を描いた「ベイツ・モーテル(原題) / Bates Motel」、超能力を持つ若者たちと彼らを管理しようとする組織との戦いを描く「ザ・トゥモロー・ピープル(原題) / The Tomorrow People」(「ARROW/アロー」主演のスティーヴン・アメルのいとこであるロビー・アメルが主演)、放射能に汚染された地球に再び文明と人類の繁栄をもたらすべく送り込まれた100人の若者たちのサバイバルを描く「ザ・ハンドレッド(原題) / The 100」、そして、日本でも間もなく放送が始まる人間の刑事(カール・アーバン)とアンドロイド(マイケル・イーリー)のバディー・コップドラマ「Almost Human/オールモスト・ヒューマン」などがある。

「ザ・フラッシュ(原題) / The Flash」で主人公のフラッシュを演じるグラント・ガスティン Frederick M. Brown / ゲッティ イメージズ 「LAW & ORDER ロー&オーダー」などのジェシー・L・マーティンも「ザ・フラッシュ(原題) / The Flash」に出演 Theo Wargo / WireImage / ゲッティ イメージズ

 今シーズンのバンクーバーでも、オランダのテレビシリーズの米国版リメイク「シー・オブ・ファイヤー(原題) / Sea of Fire」ジェニファー・カーペンター主演)、シャロン・ストーンが米国副大統領を演じるポリティカル・スリラー「エージェント・エックス(原題) / Agent X」を始め、多くのパイロット版が撮影されている。中でも「SUPERNATURAL スーパーナチュラル」「ARROW/アロー」といった人気ドラマを抱えるアメリカのCW局は、3本のパイロット版をバンクーバーで撮影している。

 まずは、「SUPERNATURAL スーパーナチュラル」のスピンオフとして企画されている「スーパーナチュラル:ブラッドライン(原題) / Supernatural:Bloodlines」。新米ハンターのエニス(ルシアン・ラヴィスカント)とシカゴの裏社会を支配するモンスター一味との戦いを軸に、人狼(じんろう)とシェイプシフター(人の姿に変化する怪物)の許されぬ恋物語なども登場して、より深くモンスター側の視点でもストーリーが展開される。彼らの初登場は本家「SUPERNATURAL スーパーナチュラル」のシーズン9第20話。

 二つ目は、“次世代ヒロインはゾンビ女子大生?”で注目の「アイ・ゾンビ(原題)/ iZombie」。「ARROW/アロー」と同様、DCコミックスの同名タイトルが原作だ。シアトルの検死官事務所で働く医学生オリヴィア(通称リヴ)は実はゾンビ。運ばれてくる死者の脳ミソを食べることで、ひそかにゾンビとしての欲求を満たしていた。しかし、この”まかない飯”のおかげでオリヴィアは死者の記憶を共有するようになり、やがてその能力を生かして「サイキック」(超能力者)として警察の捜査に協力することになる。「ゾンビ物+捜査物」という、一見相いれない二つの人気要素を強引につなげたアイデアはお見事。毎回脳ミソを食べるシーンがどう描かれるのかも見ものだ。オリヴィアを演じるのは「ワンス・アポン・ア・タイム」シーズン3でティンカー・ベルを演じたローズ・マクアイヴァー。

 三つ目は、おそらく今季の目玉となるに違いないCW局期待の新ドラマ「ザ・フラッシュ(原題) / The Flash」。DCコミックスのスーパーヒーローであるフラッシュを主人公とした「ARROW/アロー」のスピンオフだ。フラッシュことバリー・アレンを演じるのは「Glee」でおなじみのグラント・ガスティン。すでに「ARROW/アロー」シーズン2の第8話と第9話の前後編に出演し、好感触で迎えられている。3月にはシリーズ第1話となるパイロットが撮影され、フラッシュのコスチューム姿も目撃されている。「LAW & ORDER ロー&オーダー」ジェシー・L・マーティンもシリーズレギュラーに加わっており、シリーズ化の決定を待つばかりとなっている。

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“縁の下の力持ち”から表舞台へ!カナダが舞台のお薦め最新ドラマ

「モーティヴ(原題) / Motive」のメインキャスト(左から、ルイ・フェヘイラとクリスティン・レーマン) Kharen Hill / Disney ABC Television Group / ゲッティ イメージズ 「オーファン・ブラック~暴走遺伝子」のメインキャスト(左から、ジョーダン・ガヴァリス、タチアナ・マズラニー、ケヴィン・ハンチャード、ディラン・ブルース)George Pimentel / WireImage / ゲッティ イメージズ

 カナダで撮影されているドラマの舞台設定はほとんどがアメリカ。トロントはニューヨークに、バンクーバーはサンフランシスコやロサンゼルス、時にインドのムンバイや中国の上海に、と変幻自在にその姿を変える中、カナダはずっと「日陰の存在」だった。しかしここ数年の間に「カナダを舞台にしたカナダのドラマ」がアメリカに「輸出」されるようになってきた。その先駆けとなったのがトロントで撮影され、各国で大きな人気を得た「フラッシュポイント -特殊機動隊SRU-」である。はやりに乗じることなく丁寧でリアルに描かれる骨太な人間ドラマは、派手なアクションや殺人事件に飽きつつあった視聴者の心をがっちりと捕まえた。今では、日陰の身を脱したカナダ産ドラマがアメリカでの市民権を得つつある。そこで、現在アメリカで放送されているお薦めカナダドラマを紹介したい。

 まずは米ABCでシーズン2を放送中の「モーティヴ(原題) / Motive」。バンクーバーが舞台の警察ドラマである。視聴者には冒頭で犯人と被害者が明かされ、事件が起こる。しかしその動機(motive)はわからない。通常の捜査物は犯人捜しがメインだが、このドラマは犯行の裏に隠された動機とそれをめぐる人間ドラマが主流で、単なる謎解きとは違った面白さがある。バンクーバー警察のフリン刑事を演じる主演のクリスティン・レーマンはトロント出身。長くアメリカを拠点として活動してきたが「フラッシュポイント -特殊機動隊SRU-」を観てその良質なドラマ作りに感銘を受け、じっくりと丁寧に取り組めるカナダのドラマ製作現場で働きたいと、カナダに「里帰り」してしまった。

 もう一つは、BBCアメリカとカナダSpaceチャンネルの共同オリジナルシリーズ「オーファン・ブラック~暴走遺伝子」。2013年3月から放送されている新顔ながら、既にゴールデン・グローブ賞テレビ批評家協会賞など数々の賞にノミネートされ、全部で26部門のノミネーション中19部門を受賞した話題作である。自分とうり二つの女性が目の前で自殺するのを目撃したサラ。それをきっかけに次々と謎の事件が起こり、さらに二人の「自分」が現れる。二転三転するプロットは全く予測がつかず、見始めたら先が気になって仕方がない、中毒性のあるドラマだ。撮影地はトロントで舞台も「一応」トロントだが、「英米加の国境を超えたプロジェクトである」という製作側の意向で、明確な言及はない。とにかくスゴイのは、一人で何役もこなす主演のタチアナ・マズラニー。今のところ一人四役を演じ分けているが、それがとても自然で別々の人間に見えてしまう。シーズン2ではさらに演じる役が増えるそうで、ますます楽しみだ。

 この他にも、まだまだ面白いカナダ産ドラマがたくさんある。ぜひとも日本に上陸して、多くの皆さんに観てもらえることを願ってやまない。

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高野宣李プロフィール

さすらいの旅がらすライター。「スターゲイト SG-1」好きが高じて撮影地のバンクーバーに渡り、カナダの永住権を取るも、今度は「ホワイトカラー」にハマった揚げ句にアメリカのグリーンカードを取得。面白ければ何でもござれの雑食系で、現在3か国を股に掛けて映画やテレビを追っ掛け中。

連載「エンタメ“わき道”のススメ 型破りシネマ塾」は、今回が最終回となります。
長い間ご愛顧いただき、ありがとうございました。

こんな作品もメイド・イン・カナダ!最新ドラマのパイロット事情カナダが舞台のお薦め最新ドラマ
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