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ジョン・レノンの伝記映画を監督したサム・テイラー・ウッドのトークショー-ロンドン映画祭

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サム・テイラー・ウッド監督
サム・テイラー・ウッド監督 - Photo:Yukari Yamaguchi

 現地時間27日、第53回ロンドン映画祭のクロージング作品となる映画『ノーホエア・ボーイ』(原題)のサム・テイラー・ウッド監督がトークショーを行い、頭頸部ガンを克服していたことも明かされた。

 トークショーは、人気女流アーティストとしてのテイラー・ウッド監督の代表的な作品を紹介しながら行われた。頭頸部ガンだったことが明かされたのは、2枚の写真の説明の際。木がぽつんと1本立っている寂しい印象を与える1枚と、それから数年後の、自分が宙に浮かんでいる伸びやかな1枚を比べながら、最初の写真の際はガンの治療中で、2枚目のころは克服後であったと明かした。感情がストレートに表現されることが証明された形の、ガン闘病前後の作品紹介となった。

 テイラー・ウッド監督のその資質は、短編映画でも発揮される。昨年亡くなった、イギリスで最も尊敬を集める映画人の1人、アンソニー・ミンゲラ監督に勧められて撮ることになったのが短編映画『ラブ・ユー・モア』(原題)。短編映画部門にノミネートされたカンヌ国際映画祭で、同じくアーティストから映画監督になった映画『ハンガー』(原題)のスティーヴ・マックィーン監督とレッドカーペット上で鉢合わせしたという。「2人とも正装でカンヌのレッドカーペット上にいるのはおかしかったわ!」と話す。そのとき思い出したのが、初めて会ったマンチェスターのナイトクラブでのことだという。「入り口の列に並んでて、ゲストリストにあるかチェックしてる女性が名前を聞いて、(ハリウッドスターと同姓同名)スティーヴ・マックィーンだって」と笑う。

 イギリスで映画監督になるアーティストが多い理由については「違う表現がしたくなるからかしら……よくわからないわ」と言うが、監督業とアーティストとの違いについては「自分でも驚いたことに、人の意見をよく聞いたわ(笑)。自分の好きなようにできるアーティストとの違いは、みんなで作り上げるものだということ。でももともと共同作業は好きよ」と性に合ったようだ。感情を作品で表現する巧みさを見ると、ミミ伯母さんと実母の間で複雑な感情を抱き続けたジョン・レノンの少年期を、最初の長編監督作として選んだのも合点がいく。テイラー・ウッド監督は「この脚本を読んだときはお腹にズシンときたわ。体験やトラウマがトランスフォームして、作品や音楽になっていくこともよくわかるし」と話す。このトークショーを聞いて、明後日の『ノーホエア・ボーイ』(原題)のプレミアをいっそう楽しみにしながら帰途についた観客も多かったに違いない。(取材・文:山口ゆかり / Yukari Yamaguchi)

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