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震災映画、製作の原動力は怒り…3.11を見つめ続ける映画人の思い

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フォーラムに参加した新宮晋と菅乃廣監督、脚本家・井上淳一
フォーラムに参加した新宮晋と菅乃廣監督、脚本家・井上淳一 - 写真:中山治美

 開催中の第9回大阪アジアン映画祭の特別企画「東日本大震災から3年~『メモリアル3.11』」内で11日、「東北を描く、未来を描く」と題したトークセッションが開催された。壇上には福島の家族を描く映画『あいときぼうのまち』の菅乃廣監督と脚本家・井上淳一、クリーンエネルギーを巡るドキュメンタリー『ブリージング・アース:新宮晋の夢』の彫刻家・新宮晋が出席した。

 震災発生後、数多くの映画人が現地に赴き、製作された映画は約1,000本でうち劇場公開されたのは200本以上と言われる。しかし井上は、そうした作品の誕生を尻目に「自分は被災者の立場に立って映画製作に携われているのか? そもそも映画にするというのは商売にするということ。それでいいのか?」とためらったという。

 だが、背中を押したのが脚本家仲間でもある菅乃監督だった。菅乃監督は福島・中通り出身。原発事故を見たとき、奇病で亡くなった父親が発した「変な病気になるのは原発の放射能が原因なんだ」という言葉を思い出して製作を決意。フィクションで勝負したいと、故・若松孝二監督の弟子である井上に脚本を託した。

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 井上の執筆の原動力となったのは“怒り”だという。「安倍政権は『福島はアンダーコントロールだ』と主張して東京五輪が決まった。これは、そういうことなどへの異議申立て。東京と福島は地続きであり、そして4世代家族の話にしたのも時間は繋がっているのだということを、作品を通して伝えたいと思った」と語った。

 一方の新宮は当初「アーティストが政治に口を出すつもりはない」と控え目だった。だが井上らと議論を重ねるうちに熱を帯び、「ハッキリ言うと安倍政権だけでなく人類はどうかしているのではないか。巨大防波堤計画もあるようだが、未来に遺される人間の愚かさのモニュメントになっても、災害防止にはならないだろう」と持論を展開。

 続けて「今の政治や大人に対しては諦めています。可能性があるのは子ども。それも心配になってきているから、そう簡単にあの世にいけない。遺言としてもメッセージとしても、できるだけ(作品を)残していきたい」というと、井上も「自分たちの合格点が見えるまで被災者の目線に立てるようなドラマを作りたい」と継続して3.11を見つめていくことを誓った。(取材・文:中山治美)

映画『あいときぼうのまち』は6月21日よりテアトル新宿ほか全国順次公開
『ブリージング・アース:新宮晋の夢』は年内公開予定
第9回大阪アジアン映画祭は大阪市内各所で16日まで開催

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