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タランティーノ新作の美術監督・種田陽平が語る美術と70ミリフィルムの関係!『ヘイトフル・エイト』製作秘話

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タランティーノと2度目のタッグを組んだ種田陽平
タランティーノと2度目のタッグを組んだ種田陽平

 クエンティン・タランティーノ監督の新作『ヘイトフル・エイト』で美術監督を務めた種田陽平が、同作における美術と70ミリフィルムの関係について語った。サミュエル・L・ジャクソンカート・ラッセルジェニファー・ジェイソン・リーらそうそうたるメンバーが出演する本作は、吹雪に襲われた山小屋「ミニーの紳士服飾店」を舞台にした西部劇仕立ての密室劇だ。

タランティーノが描いた絵がこうなった!美術フォトギャラリー

 製作にあたって、高解像度で横長の画面になる70ミリフィルムで撮影することを一番初めに決めていたタランティーノ監督。種田は「70ミリ大画面のダイナミックさ」と「70ミリでも緻密な空間」という一見相反する要望を満たすべく、バーでもあり、ドラッグストアでもあり、紳士洋品以外は何でもある「ミニーの紳士服飾店」の細部までこだわったセットを、マイナス10度にもなる標高3,000メートルの雪山とロサンゼルスのスタジオの2箇所に作り上げた。

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『ヘイトフル・エイト』
細部までこだわった美術 - (C) MMXV Visiona Romantica, Inc. All rights reserved.

 タランティーノ監督が美術に求めるものについて、「全体で『なんとなくいいね』という感じじゃなく、ある意味、細かいんですよね」と明かす種田。「クエンティンは役者という存在がすごく好きで、そのクローズアップが大好き。そうすると、役者のどアップを撮っている時に美術の思いもかけないところがアップになる。そういうところをすごく気にする。逆に『いやーすごいよあそこ! あんなのあったんだね!』と褒められることも」と笑いながら振り返る。

 3時間弱の上映時間中、約2時間が部屋と部屋を区切るドアもない完全なワンルームの店内のみで展開するが、種田が手掛けた美術は観ていて全く飽きない。それはもちろん種田の手腕によるところが大きいのだが、彼は70ミリでの撮影自体が効果的だったと語る。「いわゆるデジタルと違うのは、70ミリのフィルムはすごくぼける。実はこれは15メートル×15メートルぐらいのちっちゃいセットなんですが、70ミリだから毎回違う奥行ですごく遠くに見えたりして、お客さんがとても広い空間の中でさまざまなことが起こっているように感じられるんです」。

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『ヘイトフル・エイト』
種田手描きの「ミニーの紳士服飾店」図面 - (C) MMXV Visiona Romantica, Inc. All rights reserved.

 「暖炉のところに居るスミザーズ(ブルース・ダーン)から、すぐ先10メートルくらいのところにドアがあるんですが、ドアから入ってくる人たちとの関係が肉眼で見たものとは全然違って映っている。だから、クエンティンが70ミリで密室劇を撮ろうとしていたのは正解だったということになる。それがわからない人たちは『何で室内物を70ミリで撮らなくちゃいけないの』と言うんだけど、そうじゃない。普通のカメラやデジタルで撮っていたら、たぶん20分くらい観たら空間には飽きちゃいますよ」と解説。「できるだけ大画面で観てもらえると監督の狙いが伝わるんじゃないかと思います。それだけ細かいところまではっきりわかるので」と付け加えた。

 また、『キル・ビル Vol.1』(2003)以降、何度か話があったもののタイミングが合わず、今回ようやく実現したタランティーノ監督との再タッグ。種田は「クエンティン映画だから歴史にとらわれず自由なところはあるけれど、アメリカの“時代劇”に関わるということがやっぱり貴重でした。普通であればアジア人にやらせる必要はないのかもしれないけど、クエンティンの発想でいうと『いやいや、西部劇だからこそ(外国人でも)できるんだよ』みたいなのがあって(笑)。それが僕にはラッキーだったと思うし、もっとこういうチャンスがあればと思いますね」と“普通じゃない”監督との仕事に充実した表情を見せていた。(編集部・市川遥)

映画『ヘイトフル・エイト』は公開中

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