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『グエムル』から15年…娘役コ・アソン「当時は全てが不思議だった」

最新作『サムジンカンパニー1995』や映画デビュー作『グエムル』について振り返ったコ・アソン
最新作『サムジンカンパニー1995』や映画デビュー作『グエムル』について振り返ったコ・アソン - (C) 2021 LOTTE ENTERTAINMENT & THE LAMP All Rights Reserved.

 ポン・ジュノ監督が手掛けた大ヒット映画『グエムル -漢江の怪物-』(2006)から15年、中学生の娘役で天才子役として注目を浴びたコ・アソンは現在28歳になり、7月9日に日本公開される最新作『サムジンカンパニー1995』では大企業の隠ぺいを暴こうと奮闘する女性社員を力強く演じた。「10代も20代も映画と共に過ごした時間でした」というアソンが、『サムジンカンパニー1995』の撮影現場、そして自身のキャリアについて振り返った。

【写真】『グエムル』当時のコ・アソン

90年代の雰囲気を理解する過程

サムジンカンパニー1995
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 本作でアソンが演じたのは、1995年の韓国・ソウルで大企業サムジン電子に勤める会社員のジャヨンというキャラクターだ。しかし、大企業勤務といっても高卒の女性平社員たちに与えられる仕事はお茶くみや書類整理といった大卒社員の補助ばかり。ジャヨンの実務能力がどんなに高くても、それを生かす場がない状態だった。

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 そんな90年代の会社員を演じるため、さまざまな勉強をしたというアソン。「ジャヨンは会社でコーヒーを入れるのが得意という設定だったので、当時どんな風に入れていたのか研究しました。当時はインスタントコーヒーを入れていたんですよね。コーヒーの粉やお砂糖などをそれぞれの好みに合わせて入れること、そして作業は女性社員が担当していたことを今回知りました」

 さらに、アソンの母方の叔母は実際に劇中と似たような会社に勤務していたそうで、その当時の写真も役づくりの大きな参考になった。「叔母に見せてもらったのは、制服を着た女性会社員3人が集まっている写真だったんですが、叔母に説明を頼まなくても写真を見るだけでその当時の雰囲気がよくわかりました。まさに当時の雰囲気を代弁してくれるようなものだったんです。その写真を借りてきて、監督にも見せたりしました」。当時まだ幼かったアソンだが、90年代の女性の姿や雰囲気などは朧気ながら記憶に残っており、「それを映画の中で具現化することが楽しかったです」と楽しみながら撮影を行うことができたという。

女性社員たちの友情がアツい!

サムジンカンパニー1995
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 会社での活躍の場が限られているジャヨンは、そんな状況から抜け出すため、TOEIC600点超えで与えられる“代理”という肩書を目指すことを決意。ところが、会社の工場から汚染水が川に流出しているのを目撃してしまい、その証拠を隠ぺいしようとする会社に立ち向かっていくことになる。

 アソンいわく、ジャヨンは「意外と難しいキャラクター」だったという。「なぜなら、ジャヨンは相反する二つの面を持っているからです。大胆に見えて小心者な部分もあったり、楽天的に見えてすごくシリアスな面も持っていたりと、表現するのが難しいキャラクターでした」。また、脚本を読むうちにアソンは自身の周囲にジャヨンのような人がたくさんいたことに気付いたそう。「これまで生きてきたなかで、私はジャヨンと似た人にたくさん会ったことがあるような気がしたんです。それは、仕事を愛している女性。無謀にも思えることにも責任感をもって、仕事をしている女性。そういう女性たちの姿をたくさん見てきたので、彼女たちのような姿を表現したいと思ったんです」

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 そんなジャヨンに協力するのが、同僚の女性社員たちだ。クビになる危険性があるにもかかわらず、一丸となって真相解明に向けて奔走する彼女たちの友情は、温かな感動をよぶ。

 「ジャヨンにはユナやボラムという友達がいたので、会社の隠ぺいに立ち向かうことが可能だったと思います。常に励ましてくれる二人がいたんです。事件についてジャヨンは悩んでいた時期もあったのですが、二人が助けてくれたから乗り切ることができたんだと思います。二人が助けてくれるという状況になったとき、演技をしている私までとっても嬉しかったんです。また、TOEIC教室のシーンの撮影では、同じ空間に同じ制服を着た同年代の女性たちが集結して、そこから作り出されていくパワーがすごかったです。シナリオを読んだ時から現場のパワーでこのシーンは乗り切れるんじゃないかと期待していたんですが、みんなが一つに団結していけば、大きな目標を達成できるのではないかと思いながら演じていました」

 多くの女性キャラクターが登場するなかでも、特にジャヨンと仲が良いのがユナとボラムの二人。この三人のシーンは、アソンも心の底から楽しんで撮影することができたといい、「もしかしたら珍しいことなのかもしれないんですが、この映画は登場人物各自の家が出てきたりせず、キャラクターの個人的なバックグラウンドもあまり出てこないんです。その反面、みんなで一緒に仕事をするシーンが多かった。ユナやボラムと夜勤をしながら夜食を一緒に食べるシーンなど、三人で一緒にいるシーンを撮るのは本当に楽しかったです」と明かした。

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転機となった作品は?

コ・アソン
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 今年、韓国の年齢の数え方(数え年)では30歳になったアソン(※満年齢では28歳)。彼女にとって、10代・20代は映画と共に過ごした時期となった。「10代、20代を振り返ってみると、人を研究して、人を表現するためにたくさんの時間を費やした時期だったと思います。とにかく演技をするのが楽しくて、作品の一つ一つを通してたくさんのことを学ぶことができましたし、そのなかで未熟な部分を発見して、次はそれを補おうと努力して、本当に一生懸命頑張ってきました。私にとっては成長できる時期だったと思います」

 なかでも、映画デビュー作となった『グエムル -漢江の怪物-』、そして1980年代に生きる警察官を演じたドラマ「ライフ・オン・マーズ」からは多くのことを学んだという。

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 「『グエムル』は私にとって初めての映画だったので、全てが不思議でした。当時は10代でしたが、驚くことに30代でもこうして演技をしています(笑)。『グエムル』が公開された後、これから演技をやるのかやめるのか今決めなければいけないと思ったのを覚えています。こんなにステキな良い作品に出会えて、この作品だけを残して消えるのか、それとも今ほどは愛されなくてもこれからしっかりと地に足をつけて演技をしていくのか、どちらにしようかと悩んで、後者のほうを選択しました」

 「最近では『ライフ・オン・マーズ』というドラマからとてもたくさんのことを得ることができました。80年代を背景にしたドラマなんですが、ユン・ナヨンというキャラクターを演じるためにひとつひとつ役づくりをしていって、私にとってはまたひとつの新たな挑戦になった作品です。最初は私自身すごく不安でしたし、心配もしていたんですが、放送後は視聴者の方に『よくやったね』『新しい挑戦だったね』と認めていただけて、とても満ち足りた気持ちになりました」

 『グエムル』でアソンとタッグを組んだポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』、そして『ミナリ』のユン・ヨジョンが米アカデミー賞を受賞するなど、近年、韓国の映画人の活躍が続いている。そんな先輩たちの姿にアソンも大きな刺激をうけたそうで「ニュースを見て私もびっくりしたんですが、そうした素晴らしい方たちと同じ時代を生きていることは非常に光栄です。去年と今年は(世界的な新型コロナウイルス感染拡大によって)映画人にとっては非常に厳しい、つらい時期だったんですが、そういうなかで希望を届けてくれた先輩方に尊敬の気持ちを表したいです」と語った。

 現在、まだ多くの人がコロナ禍で大変な生活をおくっている。「私はどこか元気をもらえて、一日を誠実に過ごせる映画が好きなんです」というアソンが、「今回の撮影ではそんな映画になればと思って、ポジティブな気持ちをたくさん込めました」という『サムジンカンパニー1995』は、今の時期にピッタリな爽快感と感動にあふれた作品だ。(編集部・吉田唯)

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