西島秀俊、アカデミー賞出席思い「心が動いた」世界的評価から得た希望
俳優の西島秀俊が5日、日本記者クラブで開催された映画『ドライブ・マイ・カー』凱旋記者会見に濱口竜介監督、山本晃久プロデューサーと共に出席。第94回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した作品について「希望があった」と感想を述べていた。
『ドライブ・マイ・カー』は、村上春樹の短編小説を基に、『寝ても覚めても』などの濱口竜介が映画化。突然妻を亡くし、喪失感を抱えながら生きている舞台俳優兼演出家の家福悠介(西島秀俊)が、自身の愛車のドライバーをすることになった女性・渡利みさき(三浦透子)との出会いをきっかけに再生していく物語。
第94回アカデミー賞では、邦画初となる作品賞をはじめ4部門にノミネートされ、『おくりびと』以来13年ぶりの国際長編映画賞を受賞。現地で授賞の瞬間に立ち会った西島は「素晴らしい体験をさせていただきました。たくさんの方々に美しい映画だと言っていただけたことが嬉しい」と笑顔を見せると、世界中からの評価について「僕は俳優なので正直説明はできませんが、僕たちが思っている以上に、世界中でたくさんの方が喪失感を抱えているのかもしれません。だからこそ、主人公が再生していくことを希望に捉えたのかも」と自身の見解を述べていた。
初参加となったアカデミー賞については「行くまでは緊張するのかなと思っていたのですが、実際に現場に入ると、映画を作る人たちの集まりで、映画愛の強い人たちばかりで、とても居心地が良かったです」と笑顔で振り返った西島。
続けて、今回のアメリカ滞在でもっとも印象に残った出来事について「式の前日にジョン・カサヴェテス監督のお墓参りに行ってきたんです」と話し出すと「2000年に『ハズバンズ』『ミニー&モスコウィッツ』『ラヴ・ストリームス』という映画を観て、非常に感動して、こんな人間そのままの演技がしたいと思っていました。それから20年以上たって、ロスに降り立ってお墓に行って、明日アカデミー賞に出るんだなと思ったら、自分でも驚くぐらい心が動いたんです」と目を輝かせながら語っていた。
そんな西島は「今回の僕の演技は、かなり説明を排除している芝居で、観客の皆さんと共同作業で作り上げるような演技だったと思っています」と語ると「その演技が、アメリカをはじめ多くの国の方に観ていただけたという事実は、僕にとって大きな希望でした。今回、自分の信じている演技をもう一度見つめ直してやろうと決意した記憶があったので、若い俳優さんたちも自分の信じる演技を続けていってほしいです」とメッセージを伝えていた。
一方の濱口監督は、3週間のアメリカ滞在を経て「予算規模を含めて、自分の持っている尺度が通じないというか。ケタ違いの世界だと感じました」と感想を述べると「そんな世界でも、一人一人のクリエイターが、パーソナルなものに根差して作品を作っている姿勢は変わらないんだなということを感じることができました」と語っていた。(磯部正和)