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2002年5月

私的映画宣言

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報誌等で活躍するライターや編集者が毎月5本の映画を評価! 映画を観ることに関しては‘プロ’には違いないが、プロといえども人の子。作品の出来の善し悪しに関わらず、好き、嫌いはどうしてもつきまとう。このコーナーでは作品評価の他に個人的な好みを★5段階で表現した。ただしあくまで映画は私的なものなので、ここでの評価が低いからといって読者にとってつまらない映画かといえば……それは劇場へ行って自分の目で確かめよう!
-近況など-

映画ライター
テレビ好きなんですけど(特にバラエティ)、最近「サバイバー」と か「マネーの虎」とか素人の過剰な本音剥き出しモノが米国並みに増えててとっても 嫌です。飯時には軽いオカズになるようなモノ希望です
ライター
J・ニコルソン『プレッジ』、ジーン・ハックマン『ザ・プロフェショナル』、ピーター・フォンダの『さすらいのカウボーイ』。魅了されたオヤジな作3本。私、至福の時を感じております。でも、『ピンポン』のARATAにも惚れた。

編集者&ライター
ブラッカイマーよ、映画でこれだけ儲けて今度はTVまで! と呆れながらも仕事のために観たドラマ『CSI:科学捜査班』(WOWWOW )。「アメリカ版科捜研の女じゃんねー」などと文句を言いつつ、今じゃ毎週ビデオに録画して見逃さないようにしている……。

スパイダーマン

ストーリー: ピーター(トビー・マグワイア)は幼いころ両親を亡くし、伯父夫妻とともにニューヨーク郊外に住む普通の高校3年生。ある日、友人のハリー(ジェームズ・ブランコ)がオズコープ社の経営者で天才化学者である父ノーマン(ウィレム・デフォー)にピーターを紹介する。
日本公開: 5月11日
(日劇1他全国)
上映時間:2時間10分
配給: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
(C)Spider-man(R),the character,(C)2001 Marvel Characters.Inc


ある日突然超能力を身につけちゃったいじめられッコの物語として、ディテールが描きこまれててすごく楽しい。感情移入しまくり。トビーと一緒に「ヒャッホー!」と雄叫びあげながら、ビルの屋上を飛び回りたいような気分になった。だが肝心の敵役が登場してからがひと味足りないんだな。戦いが単調で飽きちゃう。予知能力とかスパイダーネットをもっと効果的に使えたと思うんだけど。でも、スパイダーマンはまだ新人。戦いに習熟してないんだって事で続編に期待。


クモの糸をピュッピュ飛ばして、NYの摩天楼を飛び回るスパイダーマン。最新VFXを使った映像に、観てるこっちまで宙を駆け抜けてる気分だ。うーん爽快! それにしても166億円もの製作費をかけながら、何気に漂うチープ感は『死霊のはらわた』や『XYZマーダーズ』なんてすっとぼけたものを撮ってたライミ監督ならではか。トビーのどこか垢抜けない味も生かされ、デフォーの悪役ぶりも最高。ちゃらけた歌まで歌い、ある意味スパイダーマンを食ってます。いいわぁ~!


NYのビルの谷間をクモの糸(?)で飛び回るスパイダーマンことトビーくん。『ダークマン』のラストを彷彿とさせられるのだが、これがあまりに楽しそうなので、展開が見え見えとかその辺は全部許せます。作り手サム・ライミは、これまでにやってみたかったことを全てもりこみ、ものすごく楽しんで作ったんじゃないかなぁ。『シンプル・プラン』や『ギフト』みたいにお上品にやってるよりも、本作のようにB級の気安さがあって、論理的に筋の通っていない話の方がライミには合っている。

ノー・マンズ・ランド

ストーリー: セルビアとボスニアの中間地帯、ノー・マンズ・ランドに取り残された敵対する兵士チキ(ブランコ・ジュリッチ)とニノ(レネ・ビトラヤツ)。さらにツェラが息を吹き返すが、地雷を仕掛けられて身動きがとれない。一触即発の状況下、3人は立ち往生してしまう。
日本公開: 5月25日
(シネ・アミューズ他全国)
上映時間: 1時間38分
配給: ビターズ・エンド


コメディとしては笑える作品ではない。笑いそうになるとギラリと現実が剥き出しになる。非武装地帯に取り残された3人が小競り合い繰り返す。小競り合いをするうちにお互いに傷つけ合い、憎しみが増幅していく。正に戦争の縮図だ。それを見ている事しかできない国連軍と、より刺激的な映像を求めるマスコミ。誰が悪いわけではない。ただ無意味なのだ。そして衝撃のラスト。まずその衝撃に呆然とし、やがて戦争全般に自然と思いが至る。その残酷さと無意味さに、再び呆然とさせられた。


派手な戦闘シーンが売りのハリウッド製の戦争映画と比べたら地味。なのに、戦争の愚劣さをこれほど秀逸に描いた作は近年ないと思う。もともとは一つの国の民だったセルビア兵とボスニア兵。付き合ったおネェーちゃんの話で盛り上がるシーンなど、そのまま意気投合しそうなのにそうならない。彼らがごく市井の人物という設定だけに、戦争が引き起こす罪の大きさ、醜悪さが全面に浮かび上がる。おまけに、取材するメディアも、国連も人の命なんざ、二の次、三の次。苦笑しながら観て、帰り道は悶々と考えてしまった。


戦争の悲惨さを描いた映画はたくさんあるが、残酷なシーンのオンパレードはもう結構。と思っていたら、こんな素晴らしい映画があったとは! ボスニアとセルビアの非武装地帯に取り残された、敵味方の3人の兵士。彼らが繰り広げる“どちらが悪いのか”といった応酬は、「卵が先かにわとりが先か」と同じぐらい不毛だ。そして浮き彫りになっていく大国の無能さと併せて、心底やりきれない気持ちにさせられる。演出、脚本ともに大変優れた作品。唯一の難点は、よく出来すぎていることぐらいか。

パニック・ルーム

ストーリー: 夫と別れたメグ(ジョディ・フォスター)は娘と2人で豪邸に引っ越してきた。その晩、彼女の家に3人の強盗が侵入してきた。メグと娘はどうにかパニック・ルームと呼ばれる隠し部屋に隠れるが……。
日本公開: 5月18日
(丸の内ルーブル他)
上映時間: 1時間53分
配給: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
(C)SONY PICTURES ENTERTAINMENT CO. CR: MERRICK MORTON


設定や人物の説明なんかほとんど抜きで、窃盗犯はズンズン家宅侵入し、家主の母子はドンドン逃げ回る。目まぐるしいが、その中に次への展開の手がかりとなる伏線がキッチリ張られていて、次々と物語は転がっていく。追いかけっこの仕掛けも駆け引きも凝っていて全く飽きさせない。ジョディ・フォスターの緊迫感とキビキビした動きがイイ。当初キャストされていたニコール・キッドマンじゃ、あのスピード感は出なかったろうな。ただ、ラストがあんまりにも甘っちょろくてトホホ。


映像に凝りまくりのデビッド・フィンチャー監督。今回も冒頭からキメてます。NYの街をサラっとカメラでなめていると思ったら、あら不思議。キャストの名前が3Dで浮かび上がる。好きだよな、ホント。でも、映像にはこだわってんのに、ストーリーは恐ろしく普通。おまけに、3人の侵入者がマヌケすぎるのでピーンと張り詰めた緊張感がユルユルになる。善人顔のフォレスト・ウィテカーを見たら、恐怖も半減するし。ジョディ・フォスターよ、『ハンニバル』を蹴ってまで出る価値あったの? 


ご贔屓デヴィッド・フィンチャーとジョディ・フォスターのコンビとくれば、期待するなという方が無理。しかも密室劇だなんて! とわくわくしていたら、なんとこれが極めて真っ当なサスペンス・スリラーじゃないですか。えー、なんでフィンチャーがこんなまともな映画を撮るの? と疑問に思いつつも、またしても奇抜なことをやってくれるだろうという大方の予想を裏切るところが、実はとってもフィンチャーっぽいのかも。と、つい深読みしちゃうのはフィンチャーへの愛ゆえ……。次回に期待。

アトランティスのこころ

ストーリー: 1960年、夏。母と二人暮らしのボビー(アントン・イェルチェン)の下宿屋の二階に初老の紳士テッド(アンソニー・ホプキンス)が住む事になった。ボビーはテッドの不思議な魅力に惹かれていくが……。
日本公開:5月18日
(丸の内ピカデリー2他全国松竹・東急系)
上映時間: 1時間41分
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2001 Warner Bros. All Rights Reserved


少年の一夏の経験、超能力、冷淡な母、忍び寄る謎の組織……。スティーヴン・キングお得意のキーワードがこの作品には盛り込まれてるけど、キング原作モノにありがちな薄っぺらな作品じゃない。少々「友情」は薄いが、全てのエピソードが心に響く。ところがそのいくつかが完結せずに、イビツなまま放り出されてしまう。だが、フと気づかされるのだ。告白できなかった想い、いつの間にか疎遠になった友人……。人生って振り返るとイビツな思い出ばかりじゃありませんか?


スティーヴン・キング原作で、『スタンド・バイ・ミー』と似てますなの作。ザ・プラターズの「煙が目にしみる」なんてオールディーズソングも流れる。少年時代のひと夏の思い出話に弱ければ泣けます。なんたって、主演アントン・イェルチン君がイイ。無力なのに一人前の大人ぶってみたり、好きな女のコとのぶきっちょだけど、気持ちいっぱいいっぱいのキスシーンなど、自分にもこんな頃あったな、を思い起こさせられて私的にはOK。ホプキンズ御大の怪し話を期待するとガッカリかも。


スコット・ヒックス監督が描き出す映像世界のなんと繊細なこと! 『シャイン』や『ヒマラヤ杉に降る雪』もそうだが、単に映像が美しいというだけではなく、世界観そのものがガラスのようにもろい感じがするのだ。作品自体の出来不出来に関わらず、その繊細さが個人的に大変好み。なので、本作で描かれるノスタルジックな少年時代への憧憬は、もうそれだけで琴線に触れて泣けてしまった。アンソニー・ホプキンスが特殊能力を持っているとか、キング原作という点にはあまりこだわらずに、ヒューマンドラマとして楽しむべし。

少林サッカー

ストーリー: かつての名サッカー選手ファン(ン・マンタ)は今やサッカーチームの雑用係だった。そんな彼が少林拳法普及に命を賭けるシン(チャウ・シンチー)と出会う。ファンはシンの脚力に驚嘆し、一緒にサッカーをしようと頼み込む。
日本公開: 6月1日
(渋谷東急他全国松竹系)
上映時間:1時間49分
配給:クロックワークス / ギャガ・ヒューマックス


少林拳法の達人が、どんなスーパーなサッカーのテクを見せてくれるのかがこの作品のツボだ。その点、見事にスーパーでお馬鹿で素晴らしい。特にサッカーボールの一人壁打ちシーン(?)でのお馬鹿の超激越エスカレートが最高。泣く時も笑う時も声を立てないように気をつけてるんだけど、久しぶりに大声出して笑っちゃいました。このパワーには降参だよ。それと洋服や髪形や顔つきのダサさでも笑わせるんだけど、ダサさって世界共通なんだなって妙に感心できちゃいます。


少林拳とサッカーの合体。だから何? なんだけど、このバカバカしさは観なきゃわからない。「巨人の星」のごとく、闘志に燃えた目は炎メラメラ。回し蹴りでわざわざシュートせんでもよかろーだけど、やるところに意義がある(ないけどさ)。ブルース・リーのそっくりさんがゴールキーパーとなり、例の「かかってきなさい」ポーズで敵を挑発。とにかく登場キャラがことごとくおかしい。美人女優も香港の喜劇王チャウ・シンチーの手にかかると、どブスだし。爆笑炸裂的映画!


少林拳法とサッカーを融合させるというアイディアを、ここまで真剣に映像化するとは……。こんな企画が通ること自体がすでに信じられない。さすが『食神』のチャウ・シンチー。今回も身体を張って、観客を爆笑の渦に巻き込んでくれます。この手の香港映画は苦手な私もかなり楽しんだので、この手の香港映画が大好きな人にとっては、もうたまらないはず。個人的には作品のテンションに付いていくのに必死で、後半はちょっとバテ気味でした。

 似顔絵イラスト:川合夕香

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