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ベネチア国際映画祭、ベルリン映画祭と並ぶ世界三大映画祭のカンヌ国際映画祭が、12日(日本時間13日)から23日まで、フランス南部に位置するカンヌで開かれる。57回目を迎える今回は、日本人にも大いに注目されるものとなりそうだ。まず、押井守監督作品『イノセンス』や是枝裕和監督の『誰も知らない』が日本からの正式出品作品として参加。また話題の香港映画ウォン・カーウァイ監督『2046』には木村拓哉が俳優として出演。さらに、ハリウッド映画の『シュレック2』の日本語吹替えを担当した藤原紀香もカンヌ入りしているという。これから約10日間に渡って、そんなカンヌの情報をゴシップ情報も混ぜながらお届けします。
喜びをかみしめるマイケル・ムーア監督(Photo:中山治美)
『誰も知らない』の是枝裕和監督(Photo:中山治美)
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5月22/23日 マイケル・ムーア感涙『華氏911』パルムドール受賞
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日本時間23日、第57回カンヌ映画祭授賞式が行われ、パルムドール賞は痛烈なブッシュ批判で話題をさらったマイケル・ムーア監督の『華氏911』が受賞した。名前を呼ばれたマイケル・ムーア監督は一瞬とまどった様子で「いったい何なんだ!」と審査員長でもあるクエンティン・タランティーノ監督に驚いた表情をぶつけ「今、すごく気が動転しているんだ」涙声になり、あの饒舌なマイケル・ムーア監督が言葉につまった。カンヌ映画祭が開催されているのは、イラク戦争に正面から反対を唱えていたフランス。記者からイラク戦争とブッシュ政権を激しく非難する本作だけにフランスだからとれた賞なのではないかとの声があがった。しかし、マイケル・ムーア監督は「これは、フランスの賞ではないんだ。審査員9人のうちフランス人は1人だけ。だからこれは国際的な賞で世界の声なんだ」と述べた。
また、日本の作品、是枝裕和監督の「誰も知らない」の主演、柳楽優弥がなんと14歳で最優秀男優賞を受賞。「監督に言われたとおりに演技しただけ」と受賞の驚きをかくせない様子。また、最優秀女優賞には『クリーン』のマギー・チャンが選ばれた。マギーは「この役を演じるのはいまだかつてないほど、難しいことでした。他の女優さんのほうが私よりこの麻薬常習者という役をうまく演じることが出来たかもしれない。でもオリヴィエ監督は私の感性を信じてくれました」と元夫でもあるオリヴィエ監督に感謝の気持ちを述べた。
受賞結果は次の通り
パルムドール賞:『華氏911』(監督:マイケル・ムーア)
グランプリ:『オールドボーイ』(監督:パク・チャヌク)
最優秀女優賞:マギー・チャン『クリーン』
最優秀男優賞:柳楽優弥『誰も知らない』
最優秀監督賞:トニー・ガトリフ『Exils』
最優秀脚本賞:アニエス・ジャウィ、ジャンピエール・バクリ『ルック・アット・ミー』(Comme une Image)
審査員特別賞:『トロピカル・マラディ』(監督:アピチャポン・ウイーラーセタクン)/
『レディ・キラーズ』(監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン)
新人カメラドール:カレン・イディア『Or』
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マギー・チャン(Photo:中山治美)
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5月21日 元夫が監督!マギー・チャンの『クリーン』も大反響
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マギー・チャンが主演の『クリーン』がコンペ上映され観客から大きな支持を得た。マギー・チャンは元夫の監督オリヴィエ・アサヤスとともにレッド・カーペットに現れ、まるで今でも夫婦であるかのような仲のよさを見せつけた。『クリーン』は、落ちぶれた元ロッカーの夫リー(ニック・ノルティ)がドラッグ過剰摂取で死亡し、その妻エミリーはヘロイン所有の罪で半年間の刑務所暮らしの後息子の養育権を取り戻すため努力をするという心温まる人間ドラマだ。監督のオリヴィエ・アサヤスは記者会見で「映画をずっと撮り続けてきたが、今回は原点に戻ってみた。それは僕自身の本来のスタイルでもあるんだ。今回の作品では人と人のつながりの中で生まれる心の温かさを描いたつもりだ。この作品はドラッグに溺れていく人間の弱さを描いている。そして人の命の大切さも感じてもらいたい」と作品に対する熱い思いを語った。また、主演のマギー・チャンは「私はオリヴエが脚本を書く前から主役を決めていることを聞いていたの。彼とは旧友と仕事をするようなものだと思うわ。彼は他の監督と違って私を決まったイメージで描こうとしないの。私の本質を知り尽くしている感じがするわ」と元夫でもあるアサヤス監督と会見中も視線を絡ませるなど仕事仲間としてはまだ熱い関係であることを述べた。
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上映後の会見(Photo:中山治美)
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日本のアニメがコンペ部門に初出品され注目を集めた押井守監督の『イノセンス』が上映され、口ひげにタキシード姿の監督が記者会見を開いた。監督は「人生において何が重要で、他者とどのように共存していくべきかを考えてほしい」と、観客に対してメッセージを述べた。また、ハリウッドのアニメについて「3Dのみの映像には興味が無い」と確固たる意思を示したが、今後しばらくはアニメをつくる予定はなく、本作ですべての力を出し切り満足しているようだ。
その後上映された木村拓哉らアジアのスターの競演が話題の『2046』は、編集作業に手間取り上映が危ぶまれていたが、テープは当日の朝方到着した。しかし、字幕入れの作業は直前まで行なわれていたという。そのため記者会見は翌日に延期されたが、無事完成披露の運びとなった。
チャン・ツィイー。(Photo:中山治美
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『2046』のパーティに出席するト二ー・レオンと長年の恋人で共演者のカリーナ・ラウ。(Photo:中山治美)
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レッド・カーペットにはウォン・カーウァイ監督、ト二ー・レオン、コン・リー、チャン・ツィイー、カリーナ・ラウらと共に、黒いスーツに黒いネクタイ姿の木村拓哉も登場した。作品の出来栄えについて聞かれると「最高の映像! 見終わった瞬間スーっとして、作り手たちのパワーを感じた」と満足そうな表情だった。また、カンヌの印象については「日本の熱海みたいな感じ」とユーモアたっぷりに答えてくれた。カンヌの観客からも、15分間にも及ぶスタンディング・オベーションが起こり、パルム・ドール受賞の期待が高まった。
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『モーターサイクル・ダイアリーズ』がコンペ部門で上映され、キューバ革命の指導者チェ・ゲバラを演じたガエル・ガルシア・ベルナルの他スタッフ、キャストがレッド・カーペットに現れた。作品の舞台となったメキシコの国旗を掲げたファンを見つけると、笑顔で声援に応えていた。ベルナルはこの作品に出演するにあたって「多くの関連書籍を読み、ラテン・アメリカの社会と政治について学んだ」と役作りにかけた情熱について語った。監督のウォルター・サレスは「最も感動的なのはサン・パブロ・ハンセン病患者植民地のシーンだよ」と見どころについても述べた。
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一方、特別招待作品ではチャン・イーモウ監督作『LOVERS』が上映され、会場には監督と、黒いスーツにノーネクタイ姿の金城武、チャイナ服に身を包んだアンディ・ラウ、そして紅一点のチャン・ツィイーはジーパン姿と比較的ラフな衣裳で登場した。"メンタル・アーツ(武道)映画"の巨匠として世界中から注目されている同監督は記者団に対し「このジャンルの映画はアクションと感情が融合するのでとても面白い。今回は今までとは一味違った作品に仕上がっているよ」と述べた。また観客に対し「愛は人の心をかき乱すが、そのためにすべてを犠牲にすることもある。3人の登場人物が愛に苦しみ、耐える姿を見て何かを感じることが出来ると思う」と自信に満ちた表情だった。主演の金城武は同監督と、コンペ出品作『2046』のウォン・カーウァイ監督の2大監督と仕事をした経験から「ウォン・カーウァイ監督は準備をほとんどせず、即興で撮影する。一方チャン・イーモウ監督は入念な準備をして、何を撮りたいかが撮影前には決まっているんだ」と2人の違いについて話した。
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カンヌ国際映画祭では欠かせない存在となった、コーエン兄弟の新作『レディ・キラーズ』がコンペティション出展作品として上映された。このブラック・コメディに主演したのは、2度のアカデミー賞に輝いたオスカー俳優トム・ハンクス。アメリカではすでに大御所の彼だが、意外にもカンヌは初参加とあり、注目を集めた。レッド・カーペットには黒のタキシードと蝶ネクタイという、ビシッと決めた姿で登場。愛妻家で知られるトムの隣には、ゴールドのセクシーなドレス姿のリタ夫人が寄り添っていた。監督であるコーエン兄弟は、兄のジョエルのみの参加となった。ジョエルはオリジナル作品であるアレクサンダー・マッケンドリック監督の『マダムと泥棒』に関し、「オリジナルを汚さないよう心がけた」と述べた。また、トムは作品について「どうしようもなく楽しい作品に仕上がった」と、久しぶりに出演したコメディ映画の出来栄えに満足しているようだ。その他レッド・カーペットには名優オマー・シャリフ、ダリル・ハンナらが姿を見せた。
また、日本時間の18日にはウォン・カーウァイ監督作品『2046』 に出演した、SMAPの木村拓哉がカンヌに向けて出発。日本の“キムタク”が、初カンヌとなる今作でいよいよ世界進出を果す。20日の公式上映で、アジアのスターらと共にレッド・カーペットに現れるのが楽しみだ。
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開催二日目の目玉として、招待作品の『トロイ』が上映された。レッド・カーペットには、ブラッド・ピット、オーランド・ブルームら主要キャスト・スタッフ総勢12人が集まった。カンヌ初参加となるブラッド・ピットは、白いドレスに身を包んだ愛妻ジェニファー・アニストンと共にレッド・カーペットを歩き、終始ご機嫌の様子。記者会見では名優ピーター・オトゥールとの共演について、「やりがいがあった」と語った。その後“トロイ御一行”はプロモーションのため、日本に向かう予定だ。その他日本からの正式出品作品の、是枝裕和監督『誰も知らない』も上映され、なかなか鳴り止まない拍手を聞いた監督や主演したタレントのYOU、5人の子役らは満足げな表情を浮かべていた。また、これらコンペ部門とは別に同時開催されている“監督週間”で、栄えあるオープニング作品に選ばれた石井克人監督作品『茶の味』も上映され、「今年の日本映画で1番」と評された。監督の他、主演女優の坂野真弥(8歳)と浅野忠信も現地入りしており、多くの取材をこなし熱烈な歓迎を受けている。
監督週間オープニング作品「茶の味」の(左から)浅野忠信、坂野真弥、石井克人監督(Photo:中山治美)
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上映後のパーティーに参加した「誰も知らない」の(写真左後から)YOU、是枝裕和、柳楽優弥、北浦愛、韓英恵、(写真手前左から)木村飛影、清水萌々子
(Photo:中山治美)
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日本時間13日、カンヌ国際映画祭のオープニング・セレモニーが開かれた。審査委員長を務めるクエンティン・タランティーノ監督は、同じく監督のソフィア・コッポラと仲良く腕をくんで登場した。その他審査員のキャスリン・ターナーやコン・リーらがあでやかな姿で現れ、レッドカーペットに花を添えた。開幕宣言でオープーニング作品の『バッド・エデュケーション(原題)』監督ペドロ・アルモドバルが、母国マドリードでの列車同時爆破テロの犠牲者に哀悼の意をささげ、会場は厳粛な空気に包まれた。また、オープニングに娯楽大作ではなく、虐待をテーマにした半自伝的な社会派ドラマが上映されることは珍しく、今年のカンヌは一味違った映画祭になることが予想される。 |
親日家として有名な2人は、やっぱり仲良し。 |
カンヌに不可欠な、中国の大女優コン・リー。 |
フランスを代表する男優ヴァンサン・ペレーズは愛妻と。 |
『バッド・エデュケーション』に主演したガエル・ガルシア・ベルナルの姿も。 |
開幕宣言をしたスペインのアルモドバル監督。 |
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