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『スーパーサイズ・ミー』モーガン・スパーロック監督独占インタビュー

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『スーパーサイズ・ミー』モーガン・スパーロック監督独占インタビュー

取材・文・写真:FLiXムービーサイト

スーパーサイズ・ミー』は監督自らが人体実験に取り組んだ、まさに体を張ったドキュメンタリー映画。1日3食をすべてファーストフード(マクドナルド)で、1か月間に渡って食べ続けたら、人体にどんな影響が出るのか? 当初の予想をはるかに越え、肝臓や腎臓など内臓に深刻な影響が出て、ドクター・ストップがかかりながらも決して実験をやめなかったモーガン・スパーロック監督に映画にかけた意気込みを聞いた。

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■本当に命が危なかった

Q:ドクター・ストップがかかっても実験を続けられましたが、この時、生命の危機を感じながらもあなたを実験に突き動かしたものはなんだったのでしょう。

僕はいったんやろうと決めたらそれを貫きたいタイプなんだ。そうはいっても実験を続けていくうちに怖くなった。3週間目で3人の医者から口をそろえて「やめなさい」と言われた。もちろん恋人からも。劇中には登場しなけいけど、父や母やさまざまな友達に電話で「もう証明したいことは十分証明されたから、もうやめなさい」と説得された。でも一番最後に電話した一番上の兄からこう言われたんだ。「普通の人はファーストフードを一生食べるわけだから、あと9日間食べても死ぬわけはないだろう」と。これを聞いて僕は実験を続けることを決めたんだ。でも今思い返しても、大事に至らないでよかったなって思うよ。

Q:ファーストフードがアメリカの学校給食にも登場していることはショッキングでしたが、病院にも出店していることはさらにショッキングな事実でした。

病院内にお店がある場合もあるし、デリバリーサービスもあるからね。患者はベットに居ながらにしてファーストフードを食べることができるんだ。もちろんパジャマのまま買いに行くことができる。信じられるかい? でも世界各国の病院で行われていることなんだ。僕が映画に登場させているのは、テキサス州の児童病院。そこは世界でも最大級の子供のための病院だ。そこでは医者が子供たちにファーストフードを食べさせているんだ。「なぜ?」と僕はそこで働く医師に聞いたよ。彼はこう答えたんだ。「ガンの子供たちはほとんど食べることができない。なんでもいいから食べてくれればいい。それがファーストフードであろうと構わない。食べてくれるなら。だからファーストフードでも食べさせているんだ」とね。僕は生命が終わりかけている子供たちに、追い討ちをかけるようにファーストフードを食べさせるべきではないと思ったよ。

■マクドナルドはスーパーサイズを廃止

Q:この作品には、ビッグ・マック・マニアのドン・ゴースクという男性が登場します。彼は毎日の食事の90%がハンバーガーということでしたが、彼はスリムで健康そうに見ましたがどうなのでしょう。

彼の場合は、1日2回、ビック・マックしか食べない。朝食はなし、昼食にビック・マック1つ、夜にまたビック・マック1つ。ポテトもシエイクもアップルパイも食べない。時にはコカ・コーラを飲むかもしれないが、あとは水だけなんだ。だから痩せているんだよ。一日必要なカロリーは、僕の場合、2500~2700kcal。彼は身長があるから、2700Kcal強は必要なはず。でもビック・マック2つじゃ全然足りない。だからスリムなんだろうけど、実際はどうなのかわからない。血液や内臓がどうなっているのかはね。

Q:この映画が公開され、マクドナルドは映画とは無関係だとしながらも、スーパーサイズのキャンペーンをやめて、サラダなどを強化しました。映画の影響は各地で広がっていますね。

そうだね。イギリスでこんな運動が起きているんだ。マクドナルドの“M”のマークは“ゴールデン・アーチ”と呼ばれている。それをイギリスでは“ゴールデン・クエスチョン・マーク”と呼ぶキャンペーンが起きていて、「我々が口にしてるものは本当に安全なものなのか? 」という“?”マークの運動が起きているよ。

■マイケル・ムーアは尊敬している

Q:この作品を公開した際、観客はどんな反応でしたか?

世界各国の試写会に行ったけど、みんな大きなポップコーンとジュースを買って席につくんだ。でも映画が進むにつれ、それを床に置いてしまうんだよ(笑)。映画の影響は大きいのかなと我ながら思っているよ。

Q:ところで最近はドキュメンタリー映画が映画界でブームとなっています。その火付け役がマイケル・ムーアでしたね。

マイケル・ムーアは尊敬しているし、僕がこの映画を撮るきっかけとなった人物。すごくインスパイアされたよ。彼の『ロジャー&ミー』や『ボウリング・フォー・コロンバイン』があったおかげで、僕の『スーパーサイズ・ミー』もアメリカで劇場公開され、全世界で公開されることになったと思っている。彼の大きな功績は、ドキュメンタリー・フィルムにも娯楽性があり、興行者や配給者にドキュメンタリーを上映してもお金になることを知らせたことだと思うよ。

でも彼以外にもエロール・モリス(『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白』)やたくさんの素晴らしいドキュメンタリーの作り手がいて、彼らからも僕はインスパイアされたよ。もちろんキューブリックなどのドキュメンタリー以外の監督からもね。
この映画を作る際心がけたことは、“テンポよく”ということになる。ダラダラとしていると、つい見ている間に他のことを考えてあきちゃうからね(笑)。観客の注意を引きつけるようにしたよ。子供から大人、特にティーンエイジャーが楽しめるように。ユーモアを交えたり、アニメを挿入したりしたんだ。

■1か月で8年分のファーストフードを食べた

Q:次回作の構想はありますか?

これからもドキュメンタリーを撮りたいと思うけど、次回作は脚本のある映画を撮ろうと思っている。

Q:撮影が終わってから、ファーストフードを食べましたか。

かなり時間は経ったけど、口にしてないね。100人の栄養士に「ファーストフードはどれぐらいの頻度で食べても大丈夫か」と聞いたら、「食べないことが好ましいが、食べるなら1か月に1度」と言っていたんだ。そこから考えると、僕はこの映画のために1か月で8年分のファーストフードを食べてしまった。だから今度口にするとしたら、2012年かな(笑)。

■子供たちの食生活を考えてほしい

Q:恋人のケアでその後元の体型に戻ったようですが、体調は万全ですか?

恋人の協力で、体型は戻ったし、肝機能やコレステロール値はもどったよ。
彼女は僕が過剰に摂取していたものを排除するメニューを作ってくれた。お砂糖や加糖、塩分、乳製品、小麦粉や白米などすべてを排除した。有機食材を選んで、自然食を心がけたんだ。量は少なくとも栄養がたっぷりあるものを食べるようにしたね。でもどうも太りやすい体質になってしまったんだ。いったん太って痩せても、脂肪細胞はなくならないからね。ちょっとでもカロリー過多になると、すぐ脂肪細胞が脂肪をためて、大きくなってしまう。だから太りやすくなってしまったんだ。これは一生変わらないそうだ。だから以前よりも食べ過ぎないようにしているよ。

Q:最後にこの作品で監督が一番訴えたかったことはなんでしょう。

子供たちの食生活を変えること。学校での(食に関する)教育を変えることだね。このメッセージを広く伝えたいと思い、アメリカではちょうどDVDも発売されたので、このDVDを持って学校を回っているよ。子供や先生に問題提議をしたいんだ。みんなに考えてもらいたいんだ。
あとこれは大切なことだけど、自己責任は忘れてはならない。毎日何を選んで、何を食べるのか。そこで生じるのが自己責任だ。そしてもちろん企業側にも責任がある。ただどこで線引きするかは難しいけどね。これまで企業は何かあれば悪いのは消費者だと指摘していた。消費者は悪いのは企業だと言っていた。そうやって対立しあうのではなく、企業も消費者も一緒になって何ができるか模索するきっかけが、この映画から生まれればと思っているよ。

『スーパーサイズ・ミー』は12月25日より渋谷シネマライズほかにて公開。

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