西田敏行『釣りバカ日誌16浜崎は今日もダメだった』単独インタビュー
取材・文・写真: FLiXムービーサイト
日本人が愛する国民的映画の「釣りバカ日誌」も、今年で16作目になる。本作には今最も輝いている女優の伊東美咲がヒロイン役で登場するほか、人気タレントのボビー・オロゴンが出演するなど、注目のキャストがめじろ押し。誰からも好かれる"釣りバカ"サラリーマンの浜ちゃんを演じた主演の西田敏行が、嫁ぐ娘と父親のエピソードに対する父親としての感想や、浜ちゃんが自身に及ぼした影響など、自身の「釣りバカ」人生を大いに語ってくれた。
自分の娘が嫁ぐときは号泣するはず
Q:今回の作品にご自身で点数をつけるとしたら、ずばり何点でしょうか?
今回のような「釣りバカ」も観たかったので、僕はかなり高い点数をつけますね。若い人にも受け入れてもらえる仕上がりになっているんじゃないかな。そういった意味で非常に満足しています。
Q:今回は頑固者の父親と嫁いでいく娘の物語が描かれていますが、お2人の娘さんがいらっしゃる西田さんはどのような気持ちでご覧になられたのですか?
あそこまで深刻にはならないとは思いますけど、劇中の父親と一緒で複雑な気持ちでしたね。結婚すると聞かされたら、1番なついてくれていた頃の思い出が走馬灯のようによみがえってくると思います。娘って父親を疎ましく思う時期がありますよね? そんな時期は僕にとっては空白になっているんです。最近は飲みに誘うと付き合ってくれるんですよ! なので嫁に行かれたら寂しいだろうな。
Q:実際に男性を連れていらっしゃったらどんな態度をとると思いますか?
納得はしないと思います。自分の器と比べてみたり、ダメ出したりするかもしれませんが、大人として接したいですね(笑)。お互いが好き合っていればそれでいいです。父親は娘に対して恋人みたいな気持ちがあるんですよ。僕の長所も短所もすべて知っている上で、「お酒飲み過ぎちゃだめよ」って自愛に満ちた目で言われるとすごくうれしい。そういうことがなくなるのは寂しいな。だからうれしいのは3割、残りは寂しいです。
妻への愛情表現は浜ちゃん状態
Q:奥さまのみち子さんとますますラブラブですが、浜ちゃんの夫婦円満の秘訣は何でしょうか。
50才を超えると「残りの人生のほうが短いんだ」という実感が出てくるんですけど、そのとき縁あって夫婦になった連れ合いの存在が不思議といとおしくなってくるものなんです。でも奥さんのほうがだんなを見限って熟年離婚なんていうのもありますが、浜ちゃんの場合は絶対ないですね。あれだけみち子さん一筋に愛情を注いでいる男ですからね。結婚という一夫一婦制を重んじる人にとって、浜ちゃんは理想的な男だと思います。
Q:ご自身も浜ちゃんをお手本にされているんですか?
だんだん浜ちゃんっぽくなってきているんですよね。たとえば女房が台所で料理を作っていたら、うしろから目隠ししたり、他人が見たら「何してるんだ?」と思うようなこともたまにしたりします(笑)。すると女房は「ばたばたしないの」みたいな冷静な目で僕を見るんですけどね。僕が1人で浮かれていて、浜ちゃんと同じ感じです(笑)。結婚したときは確かに恋人だったんですけど、しばらく妻で、そのうち姉になったあと、遠い親戚のおばさんみたいな時期が……長かったですかね(笑)。今は弟みたいな存在になりました、これからはこの兄弟愛を貫いていきます!
世界平和のためには浜ちゃんになればいい
Q:今回はとても国際色豊かな作品に仕上がっていますが、どんな意図があったのですか?
佐世保が舞台だったこともあって、今回のような作品に仕上がったと思います。そのお陰で、肩に力の入っていない楽なコメディになりましたね。さらっとした感じが観ていて好きです。ボビーがミサイルを手で運ぶあたりは荒唐無稽(こうとうむけい)なんですけど、実はそこに反戦のメッセージが込められているんです。イージス艦の上で釣りしちゃうなんていうのもありえないですよね(笑)
Q:今の社会情勢を改善するために「釣りバカ」が果たす役目とは?
本当かどうかわかりませんが、歴史上で戦火が消えたことは2日間しかなかったらしいですよ? なぜ戦争が絶えないのかなぁと考えたとき、物事をシビアにとらえ過ぎないでもっと楽に考えればいいんじゃないかと思います。浜ちゃんみたく「ぽわーん」としていていいんじゃないですかね(笑)
Q:ゲスト出演したボビー・オロゴンの印象はいかがですか?
ボビーは大したものですよね。これだけ日本に馴染んで活躍しているわけですから。でも女の子を見ると「俺の嫁さんにしちゃおうかな~」とオオカミ目線になってしまうので、そのときは「ここは日本だから一夫一婦制なんだよ」って教えてあげるんです(笑)。
浜ちゃんと同じ「ぽわ~ん」とした笑顔でインタビューに答える西田は、まさに「釣りバカ」の浜ちゃんそのもの。その上実生活でも浜ちゃんそのもの。今後も人を和ますパワーを秘めたその笑顔で日本だけでなく、世界中を幸せにしてくれることを期待したい。
『釣りバカ日誌16浜崎は今日もダメだった♪』は8月27日より丸の内プラゼールほかにて公開。