『ダ・ヴィンチ・コード』トム・ハンクス、ジャン・レノ記者会見
取材・文・写真:FLIXムービーサイト
今年一番の話題作『ダ・ヴィンチ・コード』の公開を5月20日控え、主演のトム・ハンクスとジャン・レノが来日した。『ダ・ヴィンチ・コード』の記者会見で主役のツーショット会見が行われたのは今回が世界初のため、日本のみならず、世界中からの注目が集まった。会見の直前に35分の特別映像を上映することもあって記者が会見場に入るには空港並みの厳しいセキュリティチェックを受けるという物々しい警備の中での会見だったが、ジョークを連発するトム・ハンクスのおかげでリラックスした、なごやかな会見となった。
何でも知っているかのように演じる
Q:世界中でベストセラーになっている原作の映画化ですが、どういった経緯で出演の依頼を受けたのでしょう? そのときの感想も教えてください。
トム・ハンクス(以下、T):あんまり、おもしろい話じゃないよ。いいかい? ロン・ハワード(監督)から、ある日電話があった。「ダ・ヴィンチ・コードに興味あるかい?」と。僕は「もちろん」と答え本を読んだのさ。それですぐに、OKしたんだ。
ジャン・レノ(以下、J):僕も電話をもらったんだ。ロン・ハワードじゃないけどね(笑)。そのときに監督がロン・ハワード、主演がトム・ハンクスということを聞いたんだ。「ダ・ヴィンチ・コード」は前に本を読んでいたんだ。とてもおもしろいと思っていたけど、まさかその映画に自分が出演するとは思ってもみなかったね。撮影中に感じたんだけど、僕はとてもラッキーな人間だと思ったよ。トム・ハンクスという偉大な俳優と、ルーブル美術館の歴史的芸術と3週間もいっしょにいることができたんだから。
Q:役を演じるにあたってどのような解釈で取り組まれたのでしょうか? また監督から何かアドバイスはありましたか?
T:600頁余りもある膨大な原作の情報をどうやって2時間程度の映画にするかというのがポイントだと思ったよ。僕が演じたラングドンという役は専門分野のことは、なんでもすべて知り尽くしているという役なんだ。だから演じるときに「すべてを知り尽くした人間」であるかのように演じるよう心がけた。僕も人生において、いつでもそうするよう心がけているんだよ(笑)。
J:僕の役作りはシンプルだよ。本に書いてあることのすべてを理解することは難しいしね。「厳しさ」というものがこの役を表現していると思う。そして、この人物は自分が信じていた何かに裏切られたことにより、内面にヒビが入り崩壊していくんだ。その内面が一番興味深いところだった。
「モナリザ」は見るたびに違った
Q:今回の撮影では、たくさんの絵をじっくりご覧になったと思うのですが、個人的に持ち帰ることができるとしたらどの作品?
T:これは映画では、カットされているシーンなんだけど、「ナポレオン一世の載冠式」という絵画が出てくるんだ。この絵を盗んだよ……記者のみなさん、これはジョークだからね。決して記事の見出しに使わないでくれよ(笑)! 「トム・ハンクス絵画を盗む」なんて出ちゃったら大変だよ。
J:モナ・リザは有名な絵画だけど、やっぱりすばらしいね。この絵の前に立つたびに違った感情が湧き起こったんだ。これがダヴィンチの才能なのだと再認識したね。僕は絵画の愛好家ではないけど、この絵画のおかげで「絵画を愛好する」ということを学んだと思うよ。
Q:原作で、ラングドンはツイードを着たハリソン・フォードという表現がされていましたが意識しましたか? また、ハリソン・フォードと自分はどちらがカッコイイと思いますか?
T:ハリソンは確かにカッコイイ男だけど、僕の方がチャーミングだろ?
ジャンは怖いと思っていた
Q:お2人は初共演ですが、会う前はお互いにどのような印象を持っていましたか? また、実際に仕事をしてからは?
T:最初はとても怖かったね。だって『RONIN』や『レオン』では、いつも誰かを殴ったり、誰かを追いかけたりしていたしね。でも実際会ってみたらジャン・レノはジャン・レノだったね。ああいう役を演じるのは仕事なんだし……それに僕のことをなぐらないと約束してくれた。カーチェイスもしないってね(笑)。
J:それはね……トムがたくさんお金をくれたから約束してあげたんだ(笑)。トムは偉大な俳優だし、彼が出演した映画は映画史に残る作品が何本もある。トムを見ていると簡単に演じているように見えるけど、それは彼が偉大な俳優であるという証拠なんだ。彼は偉大な才能を持ったまれな人で、大きなヒューマニティをもった人でもあるんだ。出会う前は俳優として尊敬していたけど、今は人として、とても尊敬しているよ。
T:(突然起立してジャン・レノに向かって深々とおじぎ)ありがとう! イチバーン!(?)
J:シェイシェイ(ありがとうの意味?)
役者は秘密が持てない
Q:この作品は「封印」がキーワードになっていますがご自身の中で封印していることはありますか?
T:俳優という仕事は過去の体験から掘り起こして、役作りをすることが仕事なんだ。だから、秘密を持ったりすることはできないよ。自分のすべてをさらけ出さなければいけないからね。それが役者の宿命だと思っているよ。
J:トムの言ったことはその通りだよ。僕らは役を演じるにあたって他人の人生を演じるわけなんだから。それには自分を分析する必要があるんだ。いい役者とは、自分に対して秘密を持たないこと、自分自身を正しく分析できる人のことだと思うよ。
Q:撮影の合い間は何をしていましたか?
J:トムと、芸術や家族……オリーブオイルのこと子どもや友達の話もしたね。でもお互いの時間を尊重していたよ。トムは1人でいることを大切にする人でもあるからね。
T:あと、女性の話もしたね(笑)。
J:そうだ、女性の話もしたよ(笑)。
T:僕は、毎日毎日仕事だった。撮影は夜が多かったね。広い回廊をローラースケートで走り回ったりしたよ(笑)。これはジョークだけど。ルーブルは昼はお客さんで混雑しているけど、夜はお客さんがいなくて「モナリザ」と2人きりになれるというスペシャルな体験を味わうことができてハッピーだったね。
オドレイ・トトゥのエネルギー
Q:オドレイ・トトゥとの共演はいかがでしたか?
T:素晴しい才能を持った女優だね。彼女の英語はとても上手だった。それでも暗号解読官という難しい役だったので、コーチがついて指導を受けていたけど、うまくこなしていたね。彼女はほかの俳優を引き立てることがとてもうまい女優さんだ。
J:彼女とは以前会ったことはあるんだけど撮影は初めてで、一番驚いたのは、彼女の持っているエネルギーの大きさだね。体は大きくないけど、そのエネルギーはとても大きいんだ。
アメリカを代表する俳優のトム・ハンクスとフランスを代表する俳優ジャン・レノ。2人とも職業柄か、人一倍サービス精神旺盛で、記者会見は終始笑いに包まれていた。2人が時折発する日本語や中国語とおぼしき言葉も日本人への精いっぱいのサービスのように思えた。常に回りに気を配ることができるすてきなジェントルマンなのだ。こんなすてきな世界的俳優たちの演技の共演を1日も早く観てみたい。
『ダ・ヴィンチ・コード』は5月20日より、日劇1+日劇3ほか全国東宝洋画系にて公開。