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映画産業不振に挑戦し続けるスティーヴン・ソダーバーグ

この人の話を聞きたい

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映画というものは、伝達手段(映画言語)を使って表現されるべきものだと思ってます。わずか30秒のコマーシャルにそれがあって、オスカーを受賞した2時間半の映画にそれがないことがあります。。-スティーヴィン・ソダーバーグ- ~この人の話を聞きたい~その5:映画産業不振に挑戦し続けるスティーヴン・ソダーバーグ
「映画産業不振、観客動員数減少、配給会社買収!」そんな文字が、アメリカの新聞、雑誌等に踊り始めてから数年経つ。

年間のビデオ・ゲームの売り上げが、映画の年間興行収入を上回り、HDーTVの普及により自宅でクオリティーの高い映像を観られるようになったことなどに加え、DVDの一般家庭へのデリバリー(配達)など、映画館から客足が遠のく要素は、毎年増えてきている。
 
それらに追い打ちをかけるかのようにまた一つ、客足を遠のかせる要素が加わった。それは、今年1月、『オーシャンズ11』『トラフィック』の監督で知られる、スティーヴン・ソダーバーグが、「2929エンターテイメント」の設立者マーク・キューバン、トッド・ワグナーと組んで試みた、3つの媒体(映画、TV、レンタル)すべてへの作品の同時リリースだ。(この新たな試みをした最初の作品『バブル』(原題)は、映画俳優を使わず、撮影の行われた現地で一般の人を選考し俳優として撮影している)
 
一見、「劇場で映画を観る」ということを基盤にした、映画業界に挑戦状を叩き付けたような行為だが、果たしてそれが真意なのか、それとも実は映画業界を救う一つの方法なのか? そんな疑問に、スティーヴン・ソダーバーグを始め、マーク・キューバン、トッド・ワグナーはその真相を明かしてくれた。

下記は、彼らが映画祭のパネル・ディスカションに参加したときのもの。ほかの出席者には、Bittorrent(インターネット配給会社)のアシュウィン・ナビンとMPAA(アメリカ映画協会)ディーン・ガーフィールド、そしてハリウッド・リポーターのジョージ・ザレイ。彼らの解説とともに一般からの質問も含めて掲載する。
(ジョージ)よくされる質問なのですが、今日の映画産業は、一体どれくらい見通しが悪いのでしょうか?
 
トッド、あなたは、映画の配給会社にたずさわっているわけですが、映画、TV、レンタルへの同時リリースで議論を醸し出した映画『バブル』(原題)のリリースを行ったのは、なぜでしょう。映画産業への不快を感じてのことなのか、それとも何か新しいものを生み出そうとしたのですか?
(トッド・ワグナー)われわれが『バブル』(原題)のリリースを始めたとき、数多くのメディアで映画産業は、終焉(しゅうえん)を迎えたみたいな大げさなことが書かれてたのですが、これほど真実から離れているものはありません。
 
わたしにとって、利用できる新しい分野を活用しただけなんです。まずそれに答えるために、6年前に戻ってみる必要があります。1999年に僕らがやっていたライブスポーツ(スポーツの生放送)のインターネット配信会社Broadcast.comがYahoo!に3兆円で買収されたので、その後われわれは、ハリウッドに向かったのです。
 
テキサスからの資産を持った、れわれは大歓迎され、すぐにハリウッドの門番たちが声をそろえて「あなたにちょうどいい映画、企画があります」と言い寄って来たのです。皆さんもご存じの通り、ハリウッドに住み着いた、金持ちの足跡をたどってみると、2年後には、ほとんどナケナシの金で町を逃げ出してくることになるんです。そこでまず、われわれがやり始めたことは、監督、俳優、配給会社の頭取たちと会合をしたのです。
 
その場で、わたしは彼らに唐突に「一体全体、映画産業の何がおかしいのか、何が正しいのか、何が怖いのか」と聞いたのです。すると大多数の意見が合致していたのです。それは、変化に気付きながらも、誰も次のステップ(打開策)を図ろうとしていないことです。
 
(ジョージ)スティーヴン、あなたは、メジャー映画を作ったり、このような小さい作品もありますね?
映画作家として長い物に巻かれねばならないということはあるのでしょうか。
(スティーヴン・ソダーバーグ)わたしにとって、、3つの媒体(映画、TV、レンタル)を利用しての同時公開は、このような小さい映画『バブル』(原題)を公開にこじ付けられる唯一の手段だったのです。また地元の人をキャスティングやり方で資金を手に入れらたのです。
 
映画というものは、伝達手段(映画言語)を使って表現されるべきものだと思ってます。わずか30秒のコマーシャルにそれがあって、オスカーを受賞した2時間半の映画にそれがないことがあります。今度の映画を一般が、どこで観ようがわたしは構わないのです。今回の企画に関して、わたしは、ただ映画の表現(伝達手段)を拡張するということに飛びついただけです。
 
(ジョージ)ナビン、あなたは、ずっとオンラインでの配給を考えているそうですが、オンラインで映画を配給するようになるにはどれくらい時間がかかるでしょうか?
 
(アシュウィン・ナビン)配給会社が、一つのマーケットとして見直し、着手するまで、われわれが思っているより早い展開で訪れると思います。すでに2つ、3つのTVがオンラインで配給されてます。今のところ、独立系映画会社が先立って改新しているのですが、大きな配給会社も遅れをとっていないと思います。
 
(ディーン・ガーフィールド)わたしは、率直に言うと今だと思うんです。最初5時間から10時間くらいかかって一つの映画をダウンロードしていた時期から、10分くらいの早さででき、配給会社は、デジタルコンテンツをインターネットで流す、多くの実験を国内でも海外でも試しています。
 
(ジョージ)配給会社が、後2年にこの同時リリースすることが可能でしょうか? 次の2年間は、どうなると思いますか?
 
(トッド・ワグナー)テクノロジーの分野から出て来たわたしの答えは、次の2年間じゃほとんど変化ないでしょう。
われわれの間では、「2年では“現状地”、10年で“新境地”」。われわれは、11年前の1995年にインターネットのライブでビデオのストリーミングをやりました。
 
それまで誰もやらなかったことでしたが、10年後の現在では、このストリーミング・ビデオを世界中のほとんどの人が聞いたことがあるか、見たことがあります。システムとして働きかけるのに、一定の期間が必要です。今となっては、TVでは、CBS、ESPNなどがWebサイトで配信をしていて、いろいろなプラットフォームで番組を流しています。
 
これは興味深いある統計なのですが、一般の人は、去年13時間映画館で過ごし、78時間借りたDVDを見て、108時間インターネットで時間を費やし、782時間ケーブルやサテライトを含めたチャンネルの番組を見ているそうです。
 
この数字は5年間、一定の平行線をたどっていて、事実あまり変化がないのです。映画界の人たちが、映画館で映画を観てもらいたいのは、共通しているんです。これから映画を家庭で鑑賞するということは簡単で、実際一般の人たちが、映画館での体験が楽しめるものじゃないことが多いと感じ始めてきた段階で、消費者の要望に答えるチャンスが与えられたと考えるべきだったのではないでしょうか?
 
(一般)スティーヴン、すごく新鮮だったのは、監督であるあなたが、観客が映画館での鑑賞に不満を持っているに気付いていることですが、ほかの映画制作者は、これを理解してるのでしょうか?
もし理解しているのなら、それに対して何かしようと思っているのか、それとも全くお手上げの状態なのでしょうか?

 
(スティーヴン)問題は、制作者以前に問題がある場合もあり、一つにくくりにくいのですが、理解している映画人たちは、Exhibitor(National Association of TheaterOwner)=アメリカ映画館館主協会をパートナーとして考え、映画館での体験をより楽しめることにしようと考えている。もっともこの映画館で映画を観るという形態は、今でもデートの一番のコースであるのは、変わらないから。あと2009年の2月までにすべてのTVがHD(High Definition)に変わるそうだが、そうなったら本当にすごいことだと思う!
 
(一般)私は、映画学校の学生ですが、もちろん、われわれの将来は、今の映画界のように不安定なのですが、今回のこの同時リリースが、われわれ学生にとってどんな意味があるものなのでしょうか?
 
(スティーヴン)現在は、映画作家にとって実に簡単に映画が作れるようになりました。それとは逆に、人に観てもらうこと、人にリリースしてもらうこと、人に買い付けてもらうことは、今までの映画の歴史の中で一番難しい時期に入ってます。わたしが世に出た時は、そんなに長編が制作されていない時で、それに比べて、今の状況下に同情さえ感じます。ただ最終的にタレント(才能)のあるヤツが、勝つといつも信じてます。


今回のこのパネル・ディスカションは、約1時間半の長丁場だったので、人の興味を引くと思われる話題だけ取り上げ、残りの多くは、割愛させて頂いた。そのためアシュウィン・ナビンとディーン・ガーフィールドのコメントは少なくなっている。現在、暗中模索して活動されている映画業界の皆さんに、少し面白い情報が提供できたら幸いである。
細木プロフィール
海外での映画製作を決意をする。渡米し、フィルム・スクールに通った後、テレビ東京ニューヨ-ク支社の番組モーニング・サテライトでアシスタントして働く。しかし夢を追い続ける今は、ニューヨークに住み続け、批評家をしながら映画製作をする。
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