『7月24日通りのクリスマス』中谷美紀、大沢たかお(長崎)撮影現場
取材、文、写真:シネマトゥデイ
昨年の大ヒット作『電車男』の村上正典監督が、同作の脚本を手がけた金子ありさと再びタッグを組んで描くロマンチック・コメディーの『7月24日通りのクリスマス』。主演を務めるのは、中谷美紀と大沢たかお。『電車男』では主人公のあこがれの女性を演じた中谷が、本作では打って変わって、大沢演じるあこがれの男性に恋をする、地味なOL役に挑戦する。長崎で行われた本作のロケに密着した。
長崎ロケは、悪天候との戦い!
7月から始まった長崎での撮影は、まさに悪天候との戦い。記録的豪雨が九州地方を直撃している中でのロケ。毎日の天候チェックは、スタッフたちの欠かせない日課になっている。この日も曇りの中、雨が降ったりやんだりのいやな天気。加えて、やたらと蒸し暑い! そんな厳しい状況にもかかわらず、スタッフは汗だくになって働いていた。
しかし、暑さよりなにより、1番の悩みは雨! 撮影は、シーン順に撮っているわけではない。同じ日の撮影で、雨が降っていたり、晴れていたりするとつながらなくなってしまうため、天気にも細心の注意をはらわなければならないのだ。古い歌にもあるように、「雨の長崎」でスタッフたちは大苦戦! 事実、取材日の翌日は、またも豪雨。朝の5時から撮影スタッフたちは撮影現場を室内に変える打ち合わせをしており、まさに攻防戦ともいえる天気と撮影隊とのバトルが、繰り広げられていたのだった。
超地味OLに中谷美紀が大変身!
『7月24日通りのクリスマス』は、地味で妄想の世界に理想の人を描いているOL、本田小百合が、あこがれの男性である奥田聡史との出会いで、美しく変身していくラブコメ風のシンデレラ・ストーリー。
主演の小百合を中谷が演じ、彼女のあこがれの男性、聡史役を大沢たかおが演じる。
この日、作品の舞台となる長崎で行われたロケに登場した中谷は、ぼさぼさの髪に、ロングスカートという超地味スタイル。中谷自身も完全に“地味な小百合”役に入り込んでおり、存在感すら消し去りながら、まるで陰のようにスーッと現場を移動していた。
その徹底した地味ぶりは、沿道の人どころか、取材陣でさえも、目の前にいる地味な女が中谷と気付くまで時間がかかるほど……。
さらに撮影に入れば、小百合が驚きの声を上げるシーンでは「ひぇあっ!」という奇声を発し、男にもてない度200%の小百合を熱演する中谷に、取材陣からも驚きの声が上がっていた。
大沢たかお、ゆかりの地、長崎にカムバック!
中谷の恋のお相手役である大沢たかおは、『解夏』以来の長崎ロケに、終始うれしそうな笑顔を見せていた。中華街に、路面電車、日本と欧米が混在するこの町が、大沢は大のお気に入りだという。「あら、大沢たかおだー。この間の『解夏』でもロケに来てたよねー」と覚えている地元の人びとにも大人気。ロケを見守る沿道の人の数はだんだんと増えていき、長時間の撮影にもかかわらず、最後まで帰らず見学していく人がほとんどだった。
季節設定が冬のため、大沢はなんと皮ジャン姿。梅雨明けが遅れているとはいえ、長崎の7月はもはや夏! あまりに暑そうな姿に、見守る人びとからも「かわいそう~」と同情の声がもれていた。普通の人は、「あちい~!」のひとことや、ふたこと、絶対に出してしまうような状況。それでも大沢の集中は途切れることなく、1人でのカットも淡々と進め、見事にシーンを撮りきった。「まちがいなく暑い!」という状況のなかで文句ひとつ言わずに、笑顔で撮影をこなしていく大沢たかおに、見学していた女性たちはメロメロになっていた。
佐藤隆太は、みんなの人気者!?
この日の撮影には、小百合の幼なじみ、森山を演じる佐藤隆太も参加。『木更津キャッツアイ』シリーズなどの出演で、若者に大人気の彼は、現場でもっとも追っかけられていた人ナンバーワンではないだろうか。佐藤自身も、現場に来ていたワンちゃんとたわむれたり、隣にいるスタッフと気軽に話をしたりと、とにかく社交的!
撮影現場のめがね橋は、修学旅行などで学生たちがよく訪れる観光地でもあって、現場には女子高生がいっぱい。「どこ!? 佐藤隆太どこ!?」と目を血走らせながら佐藤を探す女子の姿も見られるほど。佐藤が現われると、周囲はまるでアイドル出現状態。キャーキャー言いながら握手を求める女子に、笑顔で握手する佐藤。子どもが「アイス食べる?」と自分のアイスを差し出すと、「おっ!」と言って、一口食べて返す……。ナチュラルな彼の行動ひとつひとつが、ファンを大喜びさせていたが、撮影が始まると、そんな気さくな顔も一変。小百合にひそかに思いを寄せながらも、小百合と聡史を複雑に見守っている森山を切なく演じていた。
もうひとりの主役、撮影スタッフたちの努力!
集中力を保ちつづけている中谷、大沢、佐藤がベストの演技を見せられるようにと、現場のスタッフも必死にがんばっていた。天候のほかに彼らを悩ませていたもの。それは、屋外ロケ特有の“音”だった。音声担当のスタッフは、マイクが雑音を拾っていないか、常に集中している。
スタジオで撮影していれば悩まされることもないはずだが、観光地、長崎でのロケということもあり、なんでもない“音”のひとつひとつが邪魔者になってしまう。 車の音、バイクの音、人の話し声、路面電車……。1人のスタッフが車を止め、1人のスタッフが、見物人たちに指示を出す。それでも音はどこからかやってくる。「向こうのほうで、工事してないかな。ドリルの音がかすかに聞こえる……」
音を完全に消し去るため、スタッフはレシーバーを持ってとにかく走る。本番中は、これらすべての音を消さなければならない……。ベストなコンディションになるまで根気よく待ちながら、撮影を進めていくスタッフたち。彼らのアツイ夏は、まだまだ終わらない!
汗だくで、走り回っているスタッフたちも、まちがいなくこの映画の主役のひとり。大沢たかお、中谷美紀をはじめとした役者魂の固まりのようなキャスト、スタッフ陣が一丸となって作品を作っている『7月24日通りのクリスマス』はそんなたくさんの人の思いがつまった、すてきなラブストーリーになりそうだ。
~こぼれ話「記者は見た! あっくん(仮名)のすてきな夏休み」~
母親と一緒にロケを観に来ていたひとりの男の子あっくん(仮名)。まだ、7歳で小学校に通っているという彼は、「大沢たかおかっこいい!」となかなか渋い好みの少年。ロケを見ながら始終大はしゃぎのあっくんは、どうしても、大沢に握手をしてほしくて仕方がないようで、常に大沢が近くに来るチャンスをうかがっていた……。
様子をうかがい続けること、なんと2時間……。撮影はなかなか終わらないし、大沢の周りにはオトナがいっぱい。なかなか声を掛けられずに、泣き出しそうなあっくんに、最後のチャンスがやって来た! 大沢がゆっくりあっくんのいるほうに、歩いて来た!
ダッシュで、大沢たかおに突進していくあっくん。でも、彼を追い越していくのは、100倍は強そうな女子高生のねーちゃんたち……。
負けるなあっくん! がんばれあっくん! あっくん、なんと声を掛けるのも忘れて、思わず大沢の手をつかんじゃった……。「あのバカ……」隣で、おかんがつぶやく。
それでも、そんなあっくんに気付いた大沢は、とても優しい笑顔で握手。「ありがとうね」と、くしゃくしゃっと頭をなでてくれたのだ!
満面の笑顔で戻ってきたあっくん! お母さんはさっそく頭をなでて、大沢たかおとの間接なでに成功していた。あこがれの役者さんに握手してもらったあっくんは、目を輝かせてお母さんと仲良く帰っていきましたとさ。
『7月24日通りのクリスマス』は、11月3日より日劇PLEXほかにて公開。