『シュガー&スパイス 風味絶佳』柳楽優弥 単独インタビュー
追いつめられて、自分の限界を超えました
取材・文・写真:シネマトゥデイ
『誰も知らない』でカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞してから2年、16歳になった柳楽優弥が恋愛映画『シュガー&スパイス 風味絶佳』で初めてのキスシーンに挑戦した。スクリーンに映った柳楽は、まだ少年っぽさが残っていた『星になった少年 Shining Boy & Little Randy』より、一段と男らしい青年へと成長していた。初めての恋を覚えて、大人への階段を登っていく主人公の志郎を等身大の演技でさわやかに演じた柳楽に、撮影現場での様子をはじめ、演技のこと、恋の話、そして初めてのキスシーンのことまでたっぷりと語ってもらった。
限界を超えて自分が変わる
Q:この作品は柳楽さんにとって初めての恋愛映画でしたが、いかがでしたか?
難しかったです。どこが難しいと聞かれると困ってしまうんですけど、最初、志郎の気持ちになれるかどうか、すごく不安でした。でも乃里子と、初めて心が通じ合う雨のシーンの撮影をきっかけに変われた気がします。冬だったからすっごい寒いじゃないですか? 沢尻さんもびしょびしょに濡れているのに、「もう一回」って言われる原因はすべておれなんですよ。すごい追いつめられて、自分の限界を超えました(笑)。
Q:そのとき主人公の気持ちをつかめたんでしょうか?
はい。そこから……。撮影しながらもうだめだって思ったんですけど、それを耐えたことで「おれはここまで耐えられる!」って思えるようになりました。それまではやり方がつかめてなかったんです。志郎はこういうときどうすんだろうとか、考えてばかりだったんですけど、そのシーンの後からは、「ああ、こういうときはこうするな」って分かるようになりました。
Q:すごいですね!
いや……、そんな感心されるほどは、できていないです(笑)。
Q:その雨のシーンは何テイクぐらい撮ったんですか?
めちゃめちゃやりました! ほんと、かなり泣きそうでした。でも逃げ出すわけにはいかなかったので、がんばりました。
Q:逆に楽しかったことはありました?
共演の木村了さんや濱田さん、みんな年が近かったので現場は楽しかったです。
“かっこいい”沢尻さんとのキスシーン
Q:沢尻エリカさんの印象はいかがでしたか?
最初は、ぜんぜんしゃべれなくて……。マジックのシーンで、すごくしゃべれたんですけど、いや、そんなにしゃべってないか……(笑)。「かっこいいなあっ」って思っていました。
Q:かっこいい? かわいいとか、きれいじゃなくてですか?
かわいいのもあるんですけど……大人っぽくてかっこいいです。
Q:沢尻さんは高校生の間でもすごく人気だと思いますが、共演が決まって、周りの反応はいかがでしたか?
周りの男友だちに、めちゃめちゃ言われました。「いいなあ」って(笑)。
Q:ご自身では、沢尻さんとキスシーンがあると聞いてどう思われましたか?
「おれ、キスシーンやっちゃうんだあ」って(笑)。
Q:キスシーンの撮影はいかがでしたか?
緊張しまくりでした。
Q:一度、志郎は彼女にキスを拒まれますよね。あのシーンは、男としてかなりつらいと思うのですが……。
すっげーショックですよ、あんなこと。
夏木マリさんの一言に大ショック!
Q:グランマ役の夏木マリさんとは撮影中何か話をされましたか?
「いま、彼女いるの~?」って聞かれました(笑)。「い、いません」って……(笑)。
Q:演技の面で、何かアドバイスはありましたか?
ガソリンスタンドのシーンで「セリフに感情がこもってなくて、気持ちが伝わってこないよ」って言われて、泣きそうになりました。でも、もっと気合いを入れてがんばらないとダメなんだと思い知らされました。
Q:もし志郎と同じ立場で彼女がほかの男と会っているのを見たら……。志郎は見ないふりをしていましたが、柳楽さんだったらどうしていました?
おれも見ないふりするかな……。分からない。かなりショックですよね。「誰あいつ!?」ってなっちゃうかも。あ、やっぱり言うと思います(笑)。
Q:彼女の心が決まるまで待ったりはしないんですか?
おれできないです、たぶん。
Q:実生活でも、女の子は映画のように分からない部分ってあります?
分かんないことだらけです。
Q:じゃあ、恋に関しては疎いほうですか?
かなり! 友だちの恋愛相談とか、全然分からない。ほんと無理ですね。この映画とは、遠い世界ですね。志郎みたいに、本当の恋がしたいです。
私生活ではロックが大好き!
Q:本作にはOASISが楽曲を提供していますね。ロックは好きですか?
この映画をやる前は知らなかったんですけど、この映画をやってからOASISを聞くようになりました。ロックは好きです。ロックのジャンルってどんなものがあるんでしょう。
Q:パンク、ヘビメタ、グランジ……
もっとリンキン・パーク系のジャンルは?
Q:ミクスチャーですか?
あ!! それそれ! そういうのを聞いてます。
Q:ガソリンスタンドで働いている志郎ですが、何かやってみたいアルバイトはありますか?
あ、あのフィルムを現像するところあるじゃないですか、そこでアルバイトしてみたいです。おれ、写真の現像したいんですよ。で、1回マジで考えたことがあります。
Q:なぜ写真屋さんなのですか?
現像したいなあ……って。いま、カメラに興味があるんですよ。友だちの写真を撮ったりしています。家で現像する機械を買おうと思ったら高くて……「無理だぁ」ってなっちゃいました。
年上の女性との恋愛には憧れる
Q:この恋みたいに、年上の女性はどうですか?
年上の女性はいいですね。かわいい人がタイプです。
Q:年上って何歳まで?
19歳かハタチまで。
Q:いま、年下ブームらしいですよ。
あ、そうなんですか!? スゲエ! 年下ブーム……。え、それブームで終わっちゃうんですか?
Q:大丈夫なはずです……では、映画の中の志郎みたいに早く本当の恋をしてくださいね!
はい、したいですね。でも失恋は、できることなら一生したくないです(笑)。
現場のことを聞くと、「本当に大変だったんですよ!」と饒舌(じょうぜつ)に話すのに、女の子の話になると急に静かになってしまう柳楽は、スクリーンでの志郎とはまた違った印象を受けた。「おれ、女子に嫌われているから!」という思春期まっさかりな発言はまさに16歳! この映画のような年上の女性との恋愛は「おれには、まだまだ遠い話」と語る柳楽が、真っ白な気持ちで演じた初めての恋愛映画『シュガー&スパイス 風味絶佳』。少年から青年へ……、そして役者としても大きな変身を遂げた柳楽のこれからの成長に期待していきたい。
『シュガー&スパイス 風味絶佳』は9月16日より全国東宝系にて公開。