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『地下鉄(メトロ)に乗って』大沢たかお 単独インタビュー

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『地下鉄(メトロ)に乗って』大沢たかお 単独インタビュー

僕自身は不倫という行為は納得ができない

取材・文・写真:シネマトゥデイ

浅田次郎原作の同名小説を映画化した『地下鉄(メトロ)に乗って』が、10月21日より公開される。今年に入ってから大沢たかおの出演作が公開されるのは3作目だ。今後は、『7月24日通りのクリスマス』『眉山』など多くの待機作が控え、日本映画界をリードし続ける大沢たかおが今回選んだ挑戦は、青年時代から老人まで1人の男の人生を演じることだった。夢と希望にあふれた青年、戦争で何もかも失った男、そして残りの人生を生きる老人……。時代、時代の表情を繊細(せんさい)に演じ切った大沢たかおが、俳優として、そして男として作品への思いを語ってくれた。

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1人の男の人生を演じ切った

大沢たかお

Q:完成した映画をご覧になって、いかがでしたか?

意外と静かな映画だと思いました。僕が最初に原作を読んだときに、「こういう感じかな」って浮かんだイメージがあったんですけど、それとはまた違う映画になっていて「そうなんだ」って新鮮に感じました。

Q:1人の男の人生を演じきった感想を教えてください。

特に気負ったところはなかったです。というのも、1人の人間を表現することに変わりはないので、楽しくやれました。大変というよりも楽しかったです。ずっと前からこういう役を演じてみたかったんです! 僕が演じた人物の中に、何かを見つけてもらえるとうれしいです。

Q:一番チャレンジした部分はどこですか?

チャレンジということで言えば、いつでも何かにチャレンジしていたいと思っています。ただ、時間で制限されてしまう部分があって、決められた期間の中で3つの時代を表現しなければいけないので、肉体的にも変化をつけることは難しかったです。だから、逆に物理的な組み立てをしないと大変だったので、そこには時間を掛けました。

時代に翻弄(ほんろう)された人物

大沢たかお

Q:一番演じやすかった時代はいつでしたか?

佐吉の素顔が見えたのは、戦争に行く前ですね。あの辺は、やっぱり演じていてとてもクリアでした。“アムール”と呼ばれていた時代の佐吉を演じていたときは、やけっぱちでした(笑)。正しいも、誤りもない。いい悪いもない。ただ、前に向かって生きているだけ。そんな役柄だったので、僕もまっすぐな気持ちで演じました。

Q:アムールから、父親になっての彼はどうでしょうか?

あれは、複雑でした! だって、愛人がいて……僕には絶対に理解できないですね。想像すらできない。でもそういう矛盾をかかえた時代だったんですよね。時代のせいにするわけではないですが、時代に翻弄(ほんろう)された人だと思います。自分の中でモデルにしようと思っていた人もいたんですが、その人にたどり着くことができなくてあきらめたんです。

親父を演じて感じた自身の父親への想い

大沢たかお

Q:同世代である堤真一さんのお父さん役は、演じていて違和感はなかったですか?

最初は「ん? どうなの?」って思っていたんですけど、撮影に入ってみたら逆に違和感はなくなりました。堤さんがとてもすてきな芝居をしてくれたお陰だと思います。

Q:この映画に参加したことで、父親への思いが変わってきた部分はありますか?

演じたことで父親への思いが変わってはいないんですけど……、記憶にないころの自分を育ててくれていた父親っていうのは、自分よりもずっと若かったわけでしょ? いつのまにか父親のそういう年齢を追い越しちゃってるんだなあって、ふと気が付きました。どういう風に……、どんな顔をして、何を考えながら僕を育ててくれたのかって、ほんとタイムスリップできるなら聞いてみたいですね。若いころから考えれば、関係もずいぶん大人になったと思いますが、それでもそんな話を父親には照れくさくて聞けないですからね。

切符が買えない! ショッキングな出来事

大沢たかお

Q:地下鉄がテーマの本作ですが、普段、地下鉄は利用されますか?

撮影前、リサーチのために13、4年ぶりに地下鉄を使いました。すごく変わっていたので、びっくりしましたね。実は、悲しいことがあって……切符が買えなかったんです(笑)。「え、なんかボタンいっぱいあるよ……」って。行き先までのお金入れてボタン押すだけだったのに、今はカードとかいろいろあるんですね。

Q:タイムスリップして行きたいところはありますか?

今が一番面白いし、一番刺激があるので特に行きたいところはないですね。赤ちゃんの自分は、見たい気もしますが、昔に戻ってやり直したいことはないです。後悔するようなことが何もないってことではなくて……、繰り返したくないだけなんです。

大沢たかお流の不倫論がさく裂

大沢たかお

Q:映画の主人公2人は、不倫という形で結ばれていましたが、あの愛を大沢さんはどうご覧になりましたか?

不倫に関しては本当に分からないですね! あの関係性は女性から見て、どうなんでしょうか? 主人公の女性も苦労しているのでしょうが、自分としては理解するのが難しいですね。昔、不倫する役を1回だけ演じたことがあるんですけど、自分が理解できない世界だったので、演じていてイライラしちゃいました。

Q:愛人の立場、奥さんの立場、いろいろな視点で観られる映画だと思いますが?

怖いですね、それって。この映画は奥さんたちも観るだろうし、不倫をしている女の子たちも観るだろうし……。不倫ってどうなんでしょう? やっぱりテレサ・テンの世界なんですかね? 最後には一緒になりたいと思うのは……無理だと思います。男はそんなこと考えてないですよね。女の人の幸せを本当に願ったら、一緒にいないほうが幸せだってことを分かってない男なんて1人もいないと思います。幸せになれないなら、1日も早くそんな恋から解放してあげて、すてきな男性とのすてきな恋を願ったほうがいい。でも、男はずるいからそれを言わないんですよね。

表現者としてのベストを尽くした自信

大沢たかお

Q:浅田次郎原作ということで、プレッシャーは感じませんでしたか?

もちろん感じました。プレッシャーというか……、本当に責任を感じます。自分の役に対してベストを尽くして頑張ったので、そこは自信を持っています。だから、誰に何を言われようと、気にしないようにしています。

Q:原作のファンからの期待もずいぶん高まってきています。公開までもう少しですが、今の心境をお聞かせください。

心配ですね(笑)。仮病で入院しちゃおうかなあ(笑)。とにかく、いろいろな見方があると思うので、心して公開の日を待っています。自分としては精いっぱいやり切ったという感じがあるので、何を言われてもすべて受け止められます。公開が待ち遠しいです!


「みんなに期待されてるなんて、本当に心配だな! 入院しようかな!」と笑う大沢からは、役者として、自分はやれるだけのことをやった……という自信があふれていた。スクリーンで、“小沼佐吉”という温かく、愛にあふれた男の一生を演じた大沢は、役者としてまた1つ大きな成長を遂げていた。

『地下鉄(メトロ)に乗って』は、10月21日より丸の内ピカデリーにて公開。

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