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第6回 こはたあつこ「飛行機のセット専門の会社を見学しようの巻」

うわさの現場潜入ルポ

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こはたあつこのうわさの現場潜入ルポ
飛行機のセット専門の会社を見学しようの巻

 
『キル・ビル』『ターミナル』『エリザベスタウン』……。これらの作品に共通することは、何でしょう?答えは“同じ飛行機のセット専門の会社を使って撮影した”です。その会社とは、その名も「エアー・ハリウッド」。映画の撮影で使われる飛行機のセット専門の会社なんだそうですが、一体どんなところなの? そんな疑問を解明すべく、今回は飛行機のセット専門の会社「エアー・ハリウッド」に潜入しました!
第1スタジオに置かれた飛行機の胴体。70年代の『エアポート』の映画に使われた。
機内はいたって普通。今にもスチュワーデスが歩いてきそう……。
エアターミナルのセット。がらんとしていて、なんだか寂しい。手前が社長さん。
同じエアターミナルのセットが映画で使われると、こうも変る!
左から、副社長のロブさん、社長さん、ヌハード君
「ぎょえ! 飛んでる!」……って、これじゃ、まるでB級ホラー映画かコメディーだ(笑)。
『キル・ビル』の撮影時。この映画のタランティーノ監督は、機内椅子がえらく気に入り、「僕の家にも欲しい!」と子どものようにはしゃいだそう。
「コーヒーか紅茶はいかが?」
セキュリティーゲートのセット。思わずパスポートを出したくなる?
プライベートジェットの断面セット
会社の社長、タラット・キャプタンさん。世界中を飛び回っているやり手社長で、今まで乗った飛行機の搭乗券を壁にびっしり! その数およそ5000枚!! ちなみにタラットさんが今注目しているのはドバイだそうです。
小道具などが置いてある、第2スタジオ。第1スタジオも、ここも御覧の通りのどか場所にある。
トム・ハンクス主演映画の撮影真っ最中
「エアー・ハリウッド」は2つのスタジオを持つ会社で、ロスから北に車で30分ほど行ったところにあるサンフェルナンドにあります。所有する飛行機のセットは、777、747,など全部で7機。また、ロビーやセキュリティーゲートなどが設置された、「エアーターミナル」のセットが1つ。そのほか、飛行場で見かけるカートや、航空会社の看板、機内の食事用カートから旅行会社のポスターまで、ありとあらゆるエアポートの小道具がそろっています。
 
さっそく取材の電話をかけてみると、「今、引越しの真っ最中だし、トム・ハンクス主演の映画で使うため、パラマウント社のスタジオに一機貸し出しているんで、お見せできる飛行機がほとんどないんですよ」と言われてしまいました。ちなみに、トム・ハンクス主演の映画とは、アメリカで2007年12月25日公開予定の『チャーリー・ウィルソンの戦争』 (仮題)だそう。共演は双子出産後のカムバックとなるジュリア・ロバーツです。
 
え? トム・ハンクス主演!? 話を聞くだけでも面白いと思ったわたしは、さっそく次の日、彼らのスタジオがあるサンフェルナンドバレーまで車で移動。山に囲まれ、広いのどかな土地に立つ彼らの会社は、白い倉庫のような平べったい建物。まだ30代前半であろう副社長のロブ・シャルーブさんが気さくに出迎えてくれ、スタジオ内を案内してくれました。
 
がらんとした空間に横たわる、古ぼけた飛行機の胴体。飛行機の羽はなく、両脇を木の柱で支えられている。 なんだか、スタジオというより、飛行場のガレージか、大型倉庫みたい。また、エアターミナルのセットはセキュリティーゲートも出発ロビーもあるけれど、人っ子ひとりいないため、お化けでも出そうな不思議な空間。
 
ところが、どっこい、カメラを向けたとたんに「れっきとした飛行場」に見えるのだから不思議! ましてや、ここに、小道具やら、エキストラやらを加え、最後にトム・ハンクスなんかを入れ込んじゃったら、見違えちゃうのでしょう……。そうかー。やっぱり、映画って、カメラの中だけで作り出されるマジックなのね、と改めて思ったのでした。
会社を設立した直後、同時多発テロで……
そんなことろへ、携帯電話を片手に、忙しそうな社長さんが現われる! もともと映画のプロデューサーでもあった彼に、この会社をはじめたきっかけを聞いてみました。
 
「1998年に『乱気流/グランド・コントロール』という映画を製作していたんだが、撮影許可が下りたはずのロスアンゼルス空港から、前日、いきなりキャンセルの電話が入ってね。エアポートのミスを描いた脚本が気に入らないと言うんだよ。でも、こっちは俳優(キーファー・サザーランド)もスタッフも、すべてスケジュールを抑えてあったので、すごい損失だよ。エアポートは、許可を取るのが本当に大変でね。こんな目に遭うくらいなら、自分たちで飛行場のセットを作ろうと決心したのさ。」と明るく答えてくれる。
 
そして2001年の5月に、自己資金で会社設立。ところが、4か月後の9月に同時多発テロが勃発。飛行機が世界貿易センターに突っ込むという悲劇から、それ以降、ハリウッドでは飛行機を扱った作品が一切姿を消し、仕事の依頼がぴたりとなくなってしまったそうだ。
 
その後、ちゃんと仕事が入ってくるまで、なんと6か月もかかったという。「そのときは、一体どうなるんだろうと、とても不安だった」と副社長のロブさん。もちろん、今では毎年年収が右肩上がりで増えているそうだ。「今は、誰も飛行場で映画を撮る人はいない」と言うから、ビジネスも好調なのだろう。
なぜ巨大なセットをわざわざ送るのか?
でも、いくらトム・ハンクス主演の映画とはいえ、同じロスにあるパラマウント社のスタジオに、なぜわざわざ巨大な飛行機のセットを送るのだろう? 機体を解体し、梱包し、パーツパーツを郵送し、しかもそのあと、それを組み立てる作業がある。スタッフや俳優さんたちにエアー・ハリウッドのスタジオに来てもらったほうが、安いし簡単なのでは?
 
「その逆なんです。スターやスタッフの旅費、ホテル代など、全てを考慮すると、飛行機のセットを送ったほうが安くつくんですよ。バンクーバーに空輸したときも20万ドルぐらい(約2350万円)でしたが、皆さんに来てもらっていたら、50万ドル(約5874万円)はかかっていたでしょう。トム・ハンクスが出るような大作の場合は、相手がどこにいようと、機体を送ることが多いですね」と、ロブさん。
アラブ系という理由でFBIの取り調べを受ける
ところで、この会社、全部で9人の社員のなかで、社長のタラットさん、ロブさん、そして、社長の甥のヌハード君はレバノン系のアメリカ人。英語にアクセントがまったくないので、最初はわからなかっが、レバノンといえばアラブ系。9・11以降、アラブ系で“飛行機”を扱っている会社ということで、怪しまれなかったのだろうか?
 
「FBIが取り調べに来ましたね」とロブさん。「もちろん悪いことは何もしていないので、すぐに信頼してもらえました。そのあとは、なんと、警察の空港訓練のためにターミナルのセットを貸し出すことに。「麻薬保有者のにおいをかぎ分ける犬を使っての訓練ですね。でも、さすがに本物の銃を撃っていいかと聞かれたときには、断りました。セットに穴が開いたら大変なので(笑)」
 
そんなこともあったが、2003年には、競争相手だった老舗の会社も買収し、もうすぐハリウッドのサンセット・ガウアー・スタジオの敷地内にもサウンドステージを開くという。さらに、映像貸し出し部門もスタートしたばかりで、担当のヌハードくんが21歳という若さでがんばっている。各都市の空撮シーンや、大自然の美しい映像など、さまざまなストックがあるそうです。そんなエアー・ハリウッドのみんなを見ていたら、この会社はこれからももっと伸びていくだろうと思ったのでした。
 
普段何気なく見ている飛行機のシーン。その背景には、本当にいろいろな人たちが関わっているんですね……。バックミラーに写る、平べったい建物を後にしながら、「ハリウッドには、まだまだ知らないことがたくさんある」と思った1日でした。
Air Hollywood エアー・ハリウッド
http://www.airhollywood.com
 
映像ストック部門
http://www.apexstock.com/
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