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第7回 こはたあつこ「驚異のSFX技術の“今”を追うの巻」

うわさの現場潜入ルポ

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こはたあつこのうわさの現場潜入ルポ
驚異のSFX技術の“今”を追うの巻

 
スタン・ウィンストン・スタジオといえば、『ターミネーター』シリーズのロボットや『ジュラシック・パーク』シリーズの恐竜を作ったSFX工房として有名。最近では『シャーロットのおくりもの』のブタのウィルバー、日本のCMでは保険会社「アフラック」のしゃべるアヒルも手がけている。そんなスタン・ウィンストン・スタジオの内部に潜入!
今日の案内役をつとめてくれたシェーンさん。気さくでフレンドリーな人だった。スタン・ウィンストンは最近あまり現場には来ないそうなので、彼が、色々なプロジェクトを仕切っている。
『ジュラシック・パーク』シリーズの恐竜。ディスプレイ・ルームの天井にぐわーっと展示。
『ターミネーター』のシュワちゃん。彼の皮がはがれていくと金属のロボットが現われる。このロボットのデザインをジェームス・キャメロン監督と一緒に作り上げたそうだ。
ディスプレイ・ルーム。このスタジオが手がけた等身大の映画のキャラが展示されている。
『シザーハンズ』のジョニー・デップにヘアカットしてもらう。大きなハサミがなんだか恐いよー!
『A.I.』のテディーベア。この作品では、たくさんのロボットを短期間に仕上げなくてはならず、徹夜の連続で大変だったそうだ。
『シャーロットのおくりもの』の子ブタのウィルバーの中身。ピンクの丸いビニールはぼうこうだそうだ。ちゃんとビニールの袋が膨らむように出来ている! これらが、ワイヤーにつながれて、操作されるわけだ。
ゴムでできた皮。あまりにリアルなため、なんだか皮をはいだみたいで、ドキッとする。
このようにカーテンで中身を隠している。いくつかの仕事を受け持つので、このプロジェクト以外の映画やCMのディレクターが盗み見できないようになっている。
徹夜もなんのその。映像処理をコンピューターでおこなうデジタル・チーム。なぜか、コンピューターに強い男性には、日本に興味を持っている人が多い。日本のアニメからくるビデオゲームの影響か。
このスタジオの歴史がつづられている本。数週間前に出たばかり。需要があれば、日本語でも出版されるかも。
フランケンシュタインと。オリジナルのフランケンシュタインを演じた俳優の顔から型を取ってつくったそうだ。ほんと、似ている!
名だたる名作のアイテムがズラリ、あれ? ジョニー・デップ?
核となるメンバーは40人。忙しくなると、それが200人以上に増え、年間4、5本の映画、10本ほどのCMやロックビデオを手がける多忙なスタジオ。さっそく、ロスの東北に30分ほど車で行ったところにある、ヴァンナイズ市のスタン・ウィンストン・スタジオを訪問。
 
案内役はシェーン・メイハンさん。スタジオの創設者スタン・ウィンストン氏の右腕で、このスタジオに20年以上つとめるベテラン。そんな彼が最初に通してくれたのがディスプレイ・ルーム。うわあー、これは、まるで博物館だ! 今まで、このスタジオが手がけた映画のキャラが、ずらりと展示される。あっちにはターミネーター、こっちには『シザーハンズ』のジョニー・デップ。『ジュラシック・パーク』シリーズの恐竜が天井で大きな口をあけているかと思えば、足元で『A.I.』のくまちゃんがちょこんと座る。
 
興奮冷めやらぬまま、ヘアメイク室に移動。小さな部屋に二人の男女がキャラクターの特殊メイクをしたり、動物の体毛や髪の毛を一本一本植えたりしている。一体の髪の毛を植えるだけでも、3、4週間はかかるそう。まるでアデランスだ!
 
猿の人形が置いてあったので、何のキャラか聞いてみると、なんと、これから制作される日本の映画のキャラだそう。手のないお猿さん“大五郎”と言うのだそうだ。製作中の映画なので、写真は撮れなかったが、なかなかかわいい。日本の映画というから、半年後ぐらいにチェックしてみよう。
 
次に案内されたのが、型を作るスタジオ。広い工房のようなところに、5、6人ほどの男性が、粘土のような粉にまみれて仕事をしている。
開発中の極秘プロジェクトに迫る!
数か所、白いカーテンで覆われているところがあった。理由を聞いてみたら、「映画やCMの新キャラを手がけるときは、極秘なので、外部から来た人たちに見られないようにするため」なのだそう。
 
ちなみに現在“極秘プロジェクト880”と呼んでいる大作映画のキャラも開発中だそう。「監督は誰ですか?」とシェーンに聞いても、もちろん極秘なので「ひ・み・つ」としか答えてくれない。どんな映画だろう、ワクワクするなあ。
 
『シャーロットのおくりもの』の子ブタを発見!
 
……と、前方に『シャーロットのおくりもの』に登場したブタのウィルバーを発見! 小さい子ブタと、大人になったブタが2匹。ワイヤーが何本かつながっていて、それを操るハンドルが2本。動かしてみると、子ブタのほうの頭や、表情が微妙に動く。「わー、ロボット操り人形だー!」これが、アニマトロニクスと言われる技術だそうだ。
 
「本物のブタは演技をしたり、しゃべったり出来ないからね。また、1、2週間ですぐ大きくなってしまうんで、本物のブタで撮影するのは無理」とシェーンさん。ウィンストン・スタジオのメンバーたちは、アニマトロニクス人形を作るだけでなく、実際に撮影現場に行って、人形の操作もするそう。
 
でも、今回は、ちょっとしたハプニングがあったそうな。「スタジオに送られてきたアメリカ産のブタをモデルにアニマトロニクスを作ったら、ロケ先のオーストラリアのブタと形が全然違っていて、もう1度作り直さなければならなかった」そうだ。
 
それでも、締め切りは変らない。ロケ中は何もしなくても1日およそ100,000ドルが経費として出て行くそうで、主役のブタの人形が届かなくては、待っているだけで予算が吹っ飛んでいく。どんなことがあっても、早急に別のものを作って送るしかない。
 
『シャーロットのおくりもの』はガチョウ、ブタ、ねずみなど、たくさんの動物が登場するため、ウィンストン・スタジオでは60人あまりのスタッフが、かかりっきりで製作し続けたそうだ。
徹夜上等! 仕事への情熱で勝負!!
締め切りに追われるチャレンジは、次に見せてくれたデジタル・ルームでも同じこと。モニターが35台ほどある部屋で、コンピューターに向かって映像のデジタル処理をしている男性たちが口をそろえて言う。  
「徹夜は当たり前。『ファンタスティック・フォー』のときも23時間連続労働だったよね」
「そうそう。3日寝ないことがあった。」
「僕もここでよく寝泊りしますよ」
 
でも、そんなことを言いながらも、どこか楽しそうだ。
 
そう。ここで働く人たちは、皆、楽しそうなのだ。好きなことを仕事にしているからだろうか。少年のような目をした男性が多い。
 
でも、マニュアルがあるわけではないこの仕事は、新しい注文を受けるたびに、試行錯誤の連続だそうだ。「どうやったら、本物のねずみの毛並みに近づけるのだろう」「どうやったら、ブタの動きがもっと滑らかになるのだろう」
 
そのような課題にどんどんチャレンジしているうちに、あっという間に20年が経ってしまったというシェーン。彼らの試行錯誤が、数々の映画を生み出してきたかと思うと、ちょっと感動。
 
最後に、このスタジオの生みの親、スタン・ウィンストン氏について聞いてみた。皆が“おやじ”のように慕っている印象を受けたけど、仕事の質に対しては、かなり厳しいとか?
 
「その通り。みんなスタンのOKをもらうために、がんばっているんだ。彼がOKを出したら、それは一流の作品ってことだからね。でも、これが、なかなかOKしてくれないんだなあ……。」
そう、笑いながら答えたシェーンの言葉に、スタンの元で働くことを誇りに思っている感じがにじみ出ていた。
 
SFX工房の第一人者、スタン・ウィンストン・スタジオ。これからもどんどん新キャラをつくって、みんなを、あっと驚かせてほしい。“極秘プロジェクト880”がどんな映画になるのか、今から楽しみだ。
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