コダックシアター周辺の道はすべて道路封鎖されていて、セキュリティーの人間があちこちに立っている。わたしがドレスでその前を歩くと「ナイスドレス!」と褒めてくれるセキュリティーの人も。そんな彼らにプレスパスを見せ、裏の入り口から、いよいよレッドカーペットに入る。
「うわー!」
朝早いというのに、スポットライトに照らされたレッドカーペットの上は、すでに報道人や関係者でごった返していた。
いよいよ、世界で一番大きな映画の式典がこれから始まるんだ! という勢いが感じられる。これから、この上を数々のスターが歩くと思うと、2年目のレッドカーペットにも関わらず、やはりドキドキするものがある。
今年は『バベル』のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督など、3人のメキシコ人監督の作品が16部門にノミネートされているだけあって、レッドカーペットを歩いていると、スペイン語が頻繁に聞こえてきた。メキシコからの報道陣だ。彼らに話しを聞いて見ると、やはり、メキシコの人たちは今年はかなり期待しているとのこと。
また、菊地凛子のノミネートや『硫黄島からの手紙』のノミネートもあってか、今年は去年に比べて、日本の報道陣の姿も目立った。
そのほかに、“ブリーチャーシート”と呼ばれる野外観客席がレッドカーペットの周辺に設置されてあり、朝の6時半から観客がすでに座っている。テキサスやフロリダから来た彼らは、抽選でチケットを手に入れたため、早朝からのスタンバイでもうれしそう。係員の指示に従って、スターが来たときの歓声の練習をしている。
「写真撮りますから、手を振ってくださーい!」と声をかけたら、大声で歓声まで上げてくれた。もう、朝からお祭り気分で盛り上がっている。それもそのはずだろう。このチケットは宝くじの当たり券と同じくらい貴重なのだから。
また、なぜか北京原人のようなCMのキャラクターが歩いていて、メディアの注目を集めていた。ある意味では、このレッドカーペットはタレントなどの、格好の宣伝場所となっているのだろう。
わたしの着たドレスも目立ったようで、アメリカのABCや香港、中国、メキシコ、イギリス、韓国などのメディアに逆取材された。自分が日本人で映画コメンテイターだと言うと、「日本は何を期待しているのか」などいろいろ聞かれた。
ドレスについても「デザイナーは誰ですか?」と聞かれたが、「実は近くのモールで買った2万5千円ぐらいの安いドレスでした」、なーんてことは、さすがに言えなかった。それにしても、ドレスは値段ではない、自分に似合うものを買えば、安くてもゴージャスに見えるということを痛感した。
さて、そろそろ11時。本当は、レッドカーペットに残るはずだったのだが、急きょ、菊地凛子さんの取材ができることになり、彼女がいるウェスト・ハリウッドのホテルまで車で移動。さすがにひらひらドレスで行くわけにも行かず、マネージャーの泊まっているホテルでいったん着替える。車に乗ると、普段なら、20分ほどでいけるはずの道が、あちこち封鎖されて渋滞している。さすがにアカデミー賞だけある。これだけ、ロスの街が影響を受けてしまうのだ。
ホテルに着くと、すでに、カメラクルーなどが来ていて、なんだかただならぬ雰囲気。普通の住宅街にあるので、多少のクルーでもすごく目立っていた。
今回の取材は日本の報道陣を集めての囲み取材。ホテルの小さな一室で皆ソファーに座って菊地凛子を待つ。
そして、いよいよ菊地凛子登場! 以前からわたしは彼女が今日何を着てくるかが心配だったが、彼女の姿を見たとたん、大正解だと思わずうなずいた。黒のマーメイド型のスパンコールが入ったシャネルのドレス。彼女がインタビューで言っていたとおり、「エレガントでかつ強い」インパクトが感じらえる。しかもアメリカで受けそうな、大人の色気がある。これは絶対にアメリカのメディアで受けるだろう!
取材陣に堂々と答える凛子さんは、ひと回り大きくなったよう気がする。日本人の期待を一身に背負って、それをしっかり受け止めている力強さが感じられた。以前、レオナルド・ディカプリオに『タイタニック』でブレイクする直前にインタビューをしたことがあるが、そのときの彼の雰囲気と似ている。若い女優が世界へ大きく羽ばたく前の、静かな力強さ。映画コメンテイター冥利に尽きる瞬間だ。実は、この取材をしたがために、レッドカーペットのスターたちの取材が出来なくなってしまったのだが、わたしとしては、それを上回る瞬間に立ち会えたと思っている。
そのあと、アカデミー賞会場のプレスルームに直行。
会場には、すでに世界各国から集った記者たちが、ずらりと並ぶ長テーブルに座っていた。それぞれ、フォーマルドレスやタキシード姿でコンピューターに向かってなにやら作業をしている。頭上にはたくさんの大型モニターが設置され、アカデミー賞の受賞式の模様が見られるようになっている。また、ロビーには、お腹を空かせた記者たちのために、シュリンプ・カクテルやパスタなどのビュッフェが用意されてある。
このプレスルームでは、オスカーを手にしたばかりの興奮さめやらぬ受賞者達が、授賞式の合間にやってきて、記者たちの質問に答えてくれるのだ。授賞式のステージでのスピーチは45秒以内と限定されてあるが、この部屋に来ると、たくさんしゃべってくれる。
でも、モニターでアカデミー賞の授賞式を見聞きしながら、同時にプレスルームの記者会見のやり取りを聞くのは聖徳太子なみの耳が必要。去年はその合間に日本からのラジオの生放送が入っていたので、見たり、聞いたり、しゃべったりで、てんてこ舞いだった。さすがに今年は、授賞式後にずらしてもらったが。
>>次のページへ
|
アカデミー賞受賞式の4日前。レッドカーペットや記者会見会場に入れるパスをもらう。誰でももらえるわけではないので、すごくうれしい!
近くのモールのドレスショップで今年のドレスをピックアップ。ここは種類も豊富で値段も安かった。
アカデミー授賞式まであと3日。レッドカーペットが敷かれる。
コダック・シアターの前のオスカーをみんなで「えい!」と立ち上げる。
ABCテレビに逆取材されているわたし。今年のアカデミー賞が国際化されていることについての感想を求められた。
メキシコのテレビ局の人々と。今年は本当にメキシコ人のパワーがすごかった。皆、レッドカーペットに来られてうれしそう。
記者会見のあとに行われた“オスカー像のパレード”。映画を学ぶ学生たちが、それぞれ一体ずつ本物のオスカー像を持って、レッドカーペットの上を行進する。このオスカー像が受賞者達に渡されるので責任重大!
レッドカーペットは汚れないように、まだビニールが敷かれてある。
そのあと、不思議なパフォーマンスがあった。背のすごーーーく高い女性たちがレッドカーペットに登場。最初は普通の背なのに、いきなりぎゅいーんと伸びる。下で男性が支えているようだ。
あれ?
ちょっと安っぽいオスカー像じゃない? それもそのはず、お土産やさんのダミーでした。
コダックシアター周辺のお土産やさんにずらりと並ぶ、フェイクのオスカー像たち。最優秀お父さん、最優勝ガールフレンドなどのオスカー像がある。
メイクアップ部門でノミネートされていた日本人の辻一弘(つじかずひろ)さん。11年前からハリウッドで仕事をしている。職人気質の人で、「アカデミー賞などのパーティーはちょっと苦手です」と照れていた。
辻さんが手がけた『もしも昨日が選べたら』に出演したアダム・サンドラー。“老けメイク”でかなり年をとって見える。
老けメイクに使った顔の表面。
そしていよいよ受賞式当日!
雨は完全にやみました!
ご覧くださいーい!
第79回アカデミー賞のレッドカーペットですよー!
カメラに向かってしゃべるレポーターたち。
コダックシアターにつながる階段で「オーホホホホホホ!
すそが長いので、ときどき踏んづけられたり、つんのめったりで、結構大変なのよ(笑)
ブリーチャーシートで歓声を上げてくれた皆さん。いやあ、朝から盛り上がってます! |