『ピアノの森』上戸彩 単独インタビュー
少年っぽい女の子は好きだし、あこがれです
取材・文:内田涼 写真:田中紀子
長編アニメーション『ピアノの森』は、売り上げ累計350万部を突破した同名コミックの映画化。ピアニストを目指す小学5年生“一ノ瀬海(カイ)”の成長と友情をドラマチックに描いた同作は、映画ファンだけでなく、原作の読者や音楽愛好家からも熱い注目を浴びている。そんな話題作で、主人公の声を演じるのが、歌に演技にと幅広い活躍で知られる人気女優、上戸彩。初めての男の子役に挑んだ、アフレコでの様子や作品の見どころ、さらに今、夢中になっていることについて話を聞いた。
海(カイ)くんみたいな性格にあこがれる
Q:脚本を読んだ感想を教えてください。
すごくすてきなストーリーだと思いました。ピアノを嫌いになりそうな少年と、心からピアノを愛し、楽しんでいる少年が出会って、友情を深めていく。そんなストーリーが、色や映像、音といったものがすべてマッチした形で映像化されていたことに感動しました。
Q:上戸さんから見て、主人公の海君はどんな少年ですか?
すごく勝ち気で、元気で、ヤンチャ。それに素直でまっすぐですね。それと、親友の雨宮くんに自分の寂しい気持ちを伝えるシーンは、普段とのギャップもあって、ジーンとしちゃいました。お母さんのことを、名前で“怜ちゃん”って呼ぶところも好きですね。
Q:そんな海君と上戸さん自身を比べてみると、いかがですか?
自分の感情を人にぶつけることができないタイプなので、海君のようなストレートで「当たって砕けろ」的な男の子は、うらやましいと思います。
Q:海君のルックスって、少しだけ、上戸さんに似ていると思ったのですが。
うれしいですね、少年っぽい女の子は好きだし、あこがれなので。
声変わりした神木君にドキッ
Q:男の子の声を演じることに対して、難しさや抵抗はありましたか?
今回のお話をいただいたとき、最初に「ありのままの声でいいんですよ」ということだったので、あまり抵抗はありませんでした。小学5年生の役で、まだ声変わりもしていない設定だったので。でも、実際にアフレコをしてみると、意識したわけじゃないんですが、自分の太い声が出ていましたね。海君の顔を見ながらしゃべったので、自然と、普段とは違う新しい声になったんだと思います。
Q:アフレコするにあたって、どんな準備をしたのですか?
今まで何度かアフレコのお仕事をさせていただいているんですが、毎回、反省点ばかりが残って、悔しい思いをしていたんです。今回は、そんな悔いが残らないように、映像や台本を何度も何度もチェックしました。それと、自宅やドラマの楽屋などでいろいろ勉強したので、本番では、さらっと海(カイ)君になることができたと思います。大変だったということもあまりなく、楽しんでアフレコすることができました。
Q:親友役を演じる神木隆之介君とは久しぶりの共演ですね。
今回のアフレコは、リュウ(神木君のこと)が先に録音していて、わたしはヘッドホンを通して声を聞きました。声変わりしていたので、なんか、ドキっとしましたね。でも、実際に会ってみると、今も変わらず、わたしのことを“桃”(ドラマで共演したときの役名)と呼んでくれるので、すごくうれしかったです。
パワーの源は、自家製の野菜ジュース?
Q:上戸さんは、小学5年生のとき、どんな女の子だったんですか?
おてんばでしたね。ずっと、外で遊んでいました。ケガをしても懲りずに、男の子と一緒に、校庭でサッカーやドッジボールをしていました。そのころの夢ですか? 子どもが大好きだったので、保育士さんを目指していました。
Q:海君は、ピアノを弾くことに夢中ですが、上戸さん自身が今、夢中になっていることは何ですか?
夏に全国ツアーを控えているので、体力をつけなくちゃと思って、朝からジムに通っています。正直、ハードですけど「今やらなくて、いつやる」って感じでがんばっていますね。もっと甘いものが食べたいなと思うこともありますけど(笑)。最近は、自分で野菜ジュースも作ってます。牛乳やハチミツも入れているので、結構カロリーは高いと思いますが……。
Q:最後に、これから映画をご覧になる方にメッセージをお願いします。
わたし自身、小さいころ夏休みに家族と観に行った映画はとても印象が強くて今も覚えています。この作品も、皆さんの記憶に残るようなすごくすてきな作品だと思います。それと、今、クラシック音楽がすごく流行っているので、この作品を通して、クラシック音楽の素晴らしさにも触れてほしいですね。ぜひ、この夏休みに観ていただきたいなと思っています。
デビュー直後から、常に「テレビで観ない日はない」というほど売れっ子の彼女だが、その人気の秘密は、やはり、仕事に対する真っすぐな姿勢だと改めて感じさせられた。今回のアフレコも、コアなファンを持つ原作の映画化とあって、相当なプレッシャーがあったはずだが、それに押し潰されるのではなく、自分自身のパワーにしてしまう天性の才能によって、“一ノ瀬海”という少年像にイキイキとした生命力を与えている。一方、「最近は、家族と過ごす時間も増えてうれしい」と語る姿は、ごく普通の21歳の女性に見える。そんなバランス感覚も、幅広い世代から支持される理由ではないだろうか。
『ピアノの森』は、7月21日より丸の内プラゼールほかにて公開。