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『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』ジョニー・デップ インタビュー

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『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』ジョニー・デップ インタビュー

愛する人のためにだったら何だってやるよ

取材・文:今祥枝

ブロードウェイの巨星スティーヴン・ソンドハイムの舞台ミュージカルを映画化した映画『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』。プロのシンガーでも難しいと言われるオペラ調の高度な楽曲でつづる、異色のホラーミュージカルでタイトルロール(作品の題名になっている役柄)を務めるジョニー・デップ。初のミュージカルに挑戦した心境や歌のレッスン、本作で6度目のコラボレーションとなるティム・バートン監督との撮影エピソードなどを語ってくれた。

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ティム・バートン監督のオファーは絶対

ジョニー・デップ

Q:たくさんあるオファーの中からこの作品を選んだ一番の理由は何ですか? ミュージカルは初挑戦ですが、バンドの経験があるとはいえ全編歌い通しのキャラクターを演じるのは、勇気がいることだったのでは?

もちろん、もっと簡単に演じられる役はたくさんあっただろうね。僕はギターを弾くけれど、人前で1曲全部歌うという経験は今回が初めてだったわけだし。でも、今回のスウィーニー・トッドの役はティムからの話だった。とにかくティムから頼まれれば、僕は何だってやるんだよ。バレエだってやってみると思うね(笑)。

Q:オリジナルの舞台、またはリバイバル上演されたジョン・ドイル版を観たことはありましたか?

アンジェラ・ランズベリー出演の舞台(1979年の初演版のこと。オリジナルキャストのランズベリーはミセス・ラベット役)のビデオは観たし、もっと最近のものも観たよ。サウンドトラックで楽曲もかなり聴き込んだ。でも、ここにきてこれまでとは違った新しいスウィーニーをやってもいいんじゃないかなと思ったんだ。もっとコンテンポラリーな、パンク・ロックのスウィーニーをね。

役柄に込めた思いと素晴らしい共演者

ジョニー・デップ

Q:劇中では見事な歌声を披露していますが、レッスンは大変でしたか?

当初はボーカルコーチをつけて習おうと思っていたんだけど、楽曲を聴き込み、だんだんと理解するようになると、そういうやり方は僕にとってはある意味非生産的だと思うようになった。僕がジョニーとして歌を勉強するのではなく、この役について学び、キャラクターを通して歌を学ぶことが重要だと考えるようになったんだ。「即興でやった」と言ってしまうと語弊があるし、実際にいろいろと大変なことはあったけど、自分が本当にソンドハイムの楽曲を歌いこなせるかどうかを知るためには、とにかく回り道などしないで実際にやってみるしかないという結論に至ったんだ。だから、僕はただやってみたのさ(笑)。友だちのスタジオに行ってマイクの前に立って、歌ったよ。その結果がどうだったとしてもね(笑)。そしてその友人と一緒にデモテープを作ってティムに送ったんだ。そうしたら「OK」という返事が来たので、ホッとしたよ(笑)。最も、ティムは最初から僕のことを信じていてくれてたんだけどね。

Q:映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのジャック・スパロウはキース・リチャーズをイメージしたように、本作のスウィーニー役でモデルとなった人物やキャラクターはいるのでしょうか?

この役のルックスについてはティムともいろいろ話したよ。もともと僕たち2人がずっと大ファンだった映画、昔の怪奇映画やホラー映画の俳優たち、ロン・チェイニーの素晴らしいパフォーマンスやボリス・カーロフ、ピーター・ローレなどについて考えた。ちなみに髪の白いメッシュは、精神的外傷を意味しているんだ。

Q:歌はもちろんですが、アップを多用した本作で終始みけんにシワを寄せて、怒りと悲しみ、絶望を体現したあなたの演技は圧倒的でした。完成した映画を観た感想はいかがですか?

自分のパフォーマンスを評価するのは難しいけれど、例えばヘレナ(・ボナム=カーター)が演じたミセス・ラベットは、すべてのキャラクターの中で間違いなく最も難しい役だった。一番歌いにくいメロディーだったし、すべての面で大変な役だったわけだけど、彼女は見事にそれをやってのけたね。もちろん、彼女は素晴らしい女優だから当然なんだけど。また、トビー役の子役のエド(ワード・サンダース)も、歌の経験がまったくないにもかかわらず素晴らしかった。彼が歌うのを見て、僕はあぜんとしたよ。サシャ(・バロン・コーエン)も良かったよね。それから、アラン・リックマンもさまざまな要素を彼の役にもたらしたと思う。彼の歌は信じられないほど見事だった。決して完ぺきに調律されたわけではないかもしれないし、至らなかったところもあるかもしれないけれど、観客は彼の歌声に人間味を感じることができるはずだ。

Q:スウィーニーは残酷な殺人を繰り返しますが、ただ恐ろしい殺人鬼というだけでなく、とても悲しい部分を持つ複雑なキャラクターですね。

そうだね。彼は最後には不幸なことになってしまったし、あるラインは越してしまったけれど、もともとは犠牲者だと思う。

愛する者を守るために戦う

ジョニー・デップ

Q:2人の子どもの父親であるあなた自身も、妻子を奪われてしまったスウィーニーと同じ状況に陥ったら復讐(しゅう)すると思いますか?

親であれば誰でも、復讐(しゅう)するに至るという可能性を秘めていると思う。人間は皆、本質的には野蛮なものだからね(笑)。われわれは皆、動物だよ。理由付け、知性、理性などがなければ動物として行動する。特に親というのは親としての本能が働くので、自分が愛する人のためにだったら何だってやるだろうね。これは僕自身、過去に言ったことがあるのだけれど、愛する人を守るため、もしくは救うためにはどんなことだってするよ。行動に移す前に躊躇(ちゅうちょ)したり心配したりせず、そうすることによってどんな波紋を投げ掛けるかということさえ、一切考えないでね。


ジョニー・デップ

昨年11月末にロンドンで行われた取材場所のホテルに、前日に風邪を引いたという理由でかなり遅れて姿を現したデップ。コートをしっかりと着こみ、少しやせて青白い顔は元気がないように見えたが、本作の試写を観た世界各国の記者たちの評判も上々で気を良くしたのか、話しはじめると次第に活気を取り戻し、映画について楽しそうに話してくれた。そのリラックスした様子からは、本作に対する自信のほどがうかがえた。

Vera Anderson / wireimage.com
(C) 2007 Warner Bros. Entertainment Inc. and DreamWorks LLC. All Rights Reserved.

映画『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』は1月19日より全国公開

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