『ハード・リベンジ、ミリー』水野美紀 単独インタビュー
撮影中はデス・メタルやハードロックを聴いて士気を高めていました
取材・文:鴇田崇 写真:高野広美
アジア圏最大の暴力都市と化した“ヨコハマ”を舞台に、家族を惨殺されて復讐(ふくしゅう)に燃えるヒロインがサイボーグとなって悪と死闘を繰り広げる『ハード・リベンジ、ミリー』。体中にいくつも武器を仕込んだ悲劇のヒロインの繰り出す、本格格闘アクションに期待が集まっている。そんな本作の主演は、出演作が続く人気女優の水野美紀。得意のアクションを劇中で存分に発揮した彼女に、映画にまつわるさまざまな話を聞いた。
アングル、血のり、金髪にこだわった
Q:完成した映画をご覧になって、いかがでしたか?
めちゃくちゃ面白かったです! 辻本貴則監督のこだわりと撮りたいものが、すがすがしいまでにはっきりしていて、そして潔く、観ていて気持ちがいい作品になっていました。アクションもすごくて、辻本監督は今の日本で一番アクションをかっこよく撮れる監督なのでは? と思うほどでした(笑)。アクションチームの方々も、アングルに日本一こだわって撮っていたんです。そして日本一大量に使った血のり(笑)。これらの相乗効果でいい映画になったと思います。
Q:血のりをはじめ、撮影もハードだったのではないでしょうか?
はい。大変でした(笑)。みんなで雨がっぱを着ていました。血のりの量は、どの程度使ったのかわかりませんが、多分風呂おけで1杯分ぐらいはあったんじゃないですかね(笑)。
Q:この映画で初の金髪にしたそうですね。相当な気合を入れた決意の現われでしょうか?
『真・女立喰師列伝』の「荒野の弐挺拳銃 バーボンのミキ」編で辻本監督とお仕事をしたのですが、そのバーボンのミキとイメージをかぶらせたくないって辻本監督が言っていました。それと、去年『さそり』っていうアクション映画をわたしが香港で撮ってきているので、それともイメージがかぶらないようにするためには、金髪がいいんじゃないかと思ったんです。それで自分から金髪を提案したんです。
Q:スタントマンは使わなかったそうですね。相当な訓練を積んだのですか?
スタントはなかったですね。辻本監督はスタントを使わないことにすごくこだわっていて、まれにスタントの方に代わりにやってもらいたいカットなどもあったんですけど、全部自分でやらされました(笑)。撮影の2日前に体育館を借りて、朝9時から夕方17時まで練習しました。すごい筋肉痛を引きずったまま撮影初日を迎えたんです(笑)。わたしの持っている力を総動員して撮影に臨みました!
サイボーグになれるとしたら……
Q:主人公のミリーは復讐(ふくしゅう)に燃えるヒロインでした。演じていてどんな気分でしたか?
氷の心を持っているような気分ですね。体温も低くて、喜怒哀楽などの感情自体があまりないような感覚でしたね。まるでテレビの砂嵐のようなイメージでした。
Q:ミリーのように精神的に追い込まれる役の場合、日常生活で引きずったりしますか?
しないですね(笑)。ただ、撮影中はアクションに備えてテンションを上げていないといけないので、体も温めておかないといけないんです。そのために、デス・メタル、ヘビメタ、ハードロックなどを撮影の合間もずっと聴いて士気を高めていました。だいたいアクション映画の撮影中はいつもそうしています。
Q:もし実際にサイボーグになれるとしたらどうしますか?
ちょっとワクワクしますね。どこを改造してもらおうかな(笑)。とりあえず、足にローラースケート的なモノを内蔵してもらおうかな(笑)。バイクのような速さで移動できるみたいな(笑)。武器を入れるとしたら何がいいかな……ビームや刀よりも発砲系ですかね。ミリーは足にショットガンが仕込んでありますけど、ショットガンって毎回ガチャンってやるのが大変なので、胸のあたりに回転式のマシンガンを入れておいて手を振り回したら弾が出る(笑)。最強じゃないですか!
今度は自分から何かを発信したい!
Q:また、『あの空をおぼえてる』から続く母親役ですが、役を通じて思うことや感じることはありますか?
『あの空をおぼえてる』と比べると怒られそうですけど(笑)、母親役にもいろいろあると思いました。『あの空をおぼえてる』はウェルメイドなヒューマンドラマでいろいろな発見がありましたが、今回は主に効果的に見えるアングルだとか、動き方、相手役との息の合わせ方など、そういったテクニカルなことをたくさん学べる現場でしたね。
Q:昨年はアクション一色だったそうですね。もともとアクションへの願望は強かったのですか?
はい。高校1年生のころからアクションを習っていたので、その当時からアクションをやりたいと思っていたんです。だから『ハード・リベンジ、ミリー』の撮影は楽しかったです! また同じチームでいろんなアクション映画をやっていけたらいいって思っています。
Q:また、演劇ユニット「プロペラ犬」の旗揚げと、やりたいことがやれる充実感がありそうですね。
それが同じ仕事を長く続けている醍醐味(だいごみ)なのではないかと思いますね。実はわたし今年で20年目なんですけど、それだけ続けてやってくると、いろんな出会いがあったり、刺激があったりしましたが、今度は自分から何かを作って発信していくこともできるようになってきて、そういう環境も整ってきたんです。演劇ユニットの「プロペラ犬」は、ゼロから作り上げることへのチャレンジだったので楽しいですね。何もないところから企画を考えて立ち上げることが面白いです。
20年前の目標が現実になっている
Q:20年前に現在のご自身のご活躍を想像されていましたか?
していなかったです。20年前はテレビの連続ドラマで主演をやりたいっていうイメージだけ持っていたんです。ゆくゆくは主演をやるぞっていう目標ですよね。それが達成できたときに、また新たな目標がイメージとして浮かんできたんです。そのときにイメージしたことが、今現実になっている感じですね。
Q:最後に『ハード・リベンジ、ミリー』をこれから観るファンへメッセージをお願いします。
40分強の中編映画です。気軽に観られる長さだと思います。日本一アクションをかっこ良く撮る辻本監督と、日本一アングルにこだわるアクション監督と、日本一血のりを使った現場で作ったので、とてもスカッとする気持ちのいいアクション映画になっています。ぜひ劇場でご覧ください!
日本と海外をまたにかけてアクション映画に相次いで出演を果たす一方、個人的なテーマを追求するため、演劇ユニットも立ち上げるなど、女優生活20周年目にして充実した日々を過ごす水野。彼女の表情からは、自分が本当にやりたいことをやれている充足感が伝わってきて、それが『ハード・リベンジ、ミリー』の中にも投影されているような気がした。日本を代表するアクション女優として、この先のさらなる飛躍にも期待したい。
『ハード・リベンジ、ミリー』は8月9日より渋谷Q-AXシネマにて公開