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『禅 ZEN』内田有紀 単独インタビュー

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『禅 ZEN』内田有紀 単独インタビュー

外に出たり人と会ったりして、刺激を受ける努力するようになりました

取材・文:鴇田崇 写真:高野広美

鎌倉時代に大宋国での修行を経て、権力者や困窮する庶民など出会う人々に禅の教えを広めようと努めた、道元禅師の生涯を描く歴史ロマン『禅 ZEN』。曹洞宗を開いて禅の教えを説いた歴史上の僧、道元禅師を歌舞伎俳優の中村勘太郎が演じるのも話題だが、道元禅師の教えに導かれるヒロインのおりんを内田有紀が好演した。近年精力的に演技に向き合う彼女に、『禅 ZEN』と出会った感想や、女優業の魅力などを聞いた。

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気持ちが浄化される効果あり!?

内田有紀

Q:映画をご覧になっていかがでしたか?

今までに観たことがないような映画でした。自分が出演している映画とも、今まで自分が観たことがある映画とも、違う印象を受けました。『禅 ZEN』は観終わった後に気持ちが浄化されるような映画で、心身共にリラックスしました。

Q:出演を経て道元禅師に対してどのような印象を持たれましたか?

道元禅師に関しては今回の映画で初めて知りましたが、すごい人だってまず思いました。それが率直な感想ですが、道元禅師から影響を受けたというよりは、この映画自体が面白いものになったと思います。今までに観たことがないような映画というのは、どこにも属さない映画なので、新しい映画ができたのではないかと思いました。また、道元禅師を通じて高橋伴明監督の素晴らしくて、すてきな部分がいっぱい出ている映画になったとも思います。

Q:道元禅師を演じられた中村勘太郎さんとの共演はいかがでしたか?

歌舞伎に対して堅いイメージがありましたが、普通の好青年という感じです(笑)。とてもすがすがしい方でした。勘太郎さんは歌舞伎をやっているせいか、ミリ単位で体を動かせるらしいですよ(笑)。

Q:高橋伴明監督との仕事はいかがでしたか?

ほかの監督と比べることはできないですけど、伴明さんはいい意味で肩の力が抜けた、すてきな方です。こうでなければならない、こうしなくてはいけないという気負いがないので、すごくまっすぐに作品に携わっている現場の人っていう感じがしました。そこが、かっこいいと思いました。カメラが回る前に、一言、耳元でボソっと言われるだけで多くを語らないし、こちらが質問すればたくさん返してくれるみたいですが、わたしを演出してくださるシーンでは、本当に一言二言をカメラが回る直前に言ってくださるような感じで、演じやすかったです。

撮影をきっかけに坐禅に目覚めた

内田有紀

Q:坐禅がモチーフとなっていますが、興味はわきましたか?

はい。興味がわきました。テレビで観るようなお寺で坐禅を経験してみたいと思いました。もちろん、撮影現場で先生たちについて坐禅の修行をしたんですが、私生活でも継続をしたいですね。わたしは体が柔らかいせいか、意外とすぐにできてしまったんです。座るとすぐに眠くなってしまうので、それとの戦いでした。寝ちゃうとたたかれてしまうのですが、それぐらいがちょうどいいそうなんです。邪念がない状態だからだそうです。

Q:ヒロインのおりんを演じてみていかがでしたか?

今回の撮影に入る前に、おりんの存在について深く把握しようとしました。禅ということでどうしても堅くとらえられてしまったり、とっつきにくい内容になってしまったりするのは良くないと思っていました。業の深い女性、人間そのものが出ているような女性としておりんを演じました。

Q:おりんを演じる上で、相当なリサーチをされたそうですね。

尼僧さんにお会いしました。ただ、業の深い女性を自分ができるか心配でした。わたしは尼さんになったことはないけれど、生きている人間だし、わたしそのものの強欲さを集結させて出していこうと思いましたね(笑)。それ以後の、出家する段階の意識とか、わたしからすると「なぜ出家しなければならないのか?」とか、聞きたかったことをいっぱい聞いて、撮影に臨みました。あまり聞き過ぎると、遊女をしていたときのおりんがまっすぐになってしまって、魂が清らかになってしまったら人間の闇の部分が出せなくなると思ったので、そこは気をつけて演じました。

Q:心の変遷を表現するために、かなり工夫をされたようですね。

遊女から改心するという段階があったんです。彼女は「なぜ自分は幸せに近づけないのか?」ということを人のせいにしてしまう。業が深いので、そうなると思います。「なぜ?」って思いから、道元禅師の一言一言や喝を入れられることで変わっていくんです。人って怒られて気付くことってあるじゃないですか。大人になってから怒られることってほとんどないので、そうやって怒られたり正されたりすることを経て、自然と変わっていくんだと思います。

内田有紀を面白がってもらいたい

内田有紀

Q:今回の出演を経て女優として勉強になったことはありますか?

常に喜怒哀楽、いろんな物ごとを感じて生きていくこと。楽しいことばかりではなく、つらいこと苦しいこと、嫌なこと、怒りを感じないと、演じることってできないのかと改めて思いました。あと、引き出しを増やしておくことは、日々の生活の中で成り立っていくことだと改めて思いましたね。ちょっと引きこもり気味なので(笑)、あえて外に出たり人と会ったりして、刺激を受ける努力をするようになりました。

Q:どんな役柄に興味がありますか?

映画ができてしまったら、観る方の判断になると思いますし、作品を選ぶという偉そうなことではないですが、わたしは人間の裏側を出せる役が好きなんだと思うんです。例えば、コメディーは楽しいですけど、笑いがあったら涙もある。多面体の人間を演じることに今は興味があります。以前はさっそうとしていたり、元気な女の子だったり、責任感があったりする役が多かったんです。そういう意味での強い女の子を演じていたのですが、そうじゃない人間の醜い部分、汚い部分を出せるわたしを求めてくれることが最近は増えているんです。わたしもそういう役をやってみたかったので、よかったと思っています。内田有紀を面白がってもらいたいですね。こういう役はどうかな?  ではなく、こんな役をぶつけてみたら内田有紀ってどうなんだろう? って思われたいです。

Q:演じてみたい具体的なキャラクターはありますか?

10代のころから『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』のような映画が好きでした。また、『突然炎のごとく』というジャンヌ・モローが出ている映画があるんですけど、日本の美学ではないのですが、フランス映画によくある愛に対して情熱的な感じの映画で、愛し過ぎたゆえに狂ってしまう。そんな女性像を演じてみたいですね。

Q:最後にこの映画を楽しみにされている方々にメッセージをお願いします。

『禅 ZEN』はきっと皆さんが今まで観たことがないような映画になったと思います。わたしが演じたおりんという女性は比較的感情移入しやすい女性で、高橋監督が描いてくれた女性を演じています。きっと男性はもちろん、女性の方にも、いろんな年齢層の方、いろいろな経験をされた方が観ると何か染みるものがある映画だと思います。


内田有紀

『禅 ZEN』では遊女として過酷な人生を送る難しいキャラクターをこなしながら、やがて道元禅師と出会い、その教えに導かれていく過程を、ヒロインの精神的な移り変わりを表情に出しながら丁寧に演じ切った内田。映画復帰作となった『クワイエットルームにようこそ』以来、深みのある演技力で観客を魅了している彼女が『禅 ZEN』で女優としてのさらなる新境地を開拓した。本作を経て決意を新たにした彼女の今後にも注目したい。

『禅 ZEN』は2009年1月10日より全国公開

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