『20世紀少年<第2章> 最後の希望』豊川悦司&常盤貴子 単独インタビュー
クライマックスに向けて大切な第2章、祭りの続きを楽しんでほしい
取材・文:内田涼 写真:高野広美
昨年夏に大ヒットした映画『20世紀少年』の続編が早くもスクリーンに登場する。総製作費60億円、全3部作となる同シリーズにおいて、さまざまな謎の手がかりとして見逃し厳禁といえる『20世紀少年<第2章> 最後の希望』に出演した豊川悦司と常盤貴子に、スケールの大きな作品の舞台裏からキャラクターの魅力、そして役作りについて話を聞いた。“血の大みそか”から15年後の世界で、二人が目撃した驚きの真実とは?
出演者も驚きの壮大なスケール感
Q:すでにキャスト陣の撮影に関しては、第3章も含めてすべて終了しているそうですが、率直なお気持ちから聞かせてください。
豊川:本当に大変な撮影だったんで、今は終わったと改めて実感していますね。撮影が始まったのが2008年の1月くらいで、約1年間参加していましたから。
常盤:わたしは、本当に終わったのか? っていう感じもありますけどね。終わったといっても、また数週間後には呼び出されるんじゃないかって疑いは晴れていません(笑)。
Q:非常にスケールの大きな作品ですが、キャストとして舞台裏に驚くこともあったのではないでしょうか?
豊川:やっぱりモブシーン(群衆シーン)の迫力は現場にいても実感しましたね。ネットを使って何千人単位のエキストラの方々に集まっていただいて、確かに大変な撮影なんですけど、その様子はつい客観的に「やっぱりスゴイことなんだ」って思うほどでした。
常盤:それにセットが本当にスゴイですね。どれも本物みたいですし、それが次々と建っていくのでさらにビックリしていました。演じる側もロケ撮影をしている感覚でしたね。
入念なメークと衣装合わせで、人気キャラに大変身
Q:前作から15年後の世界を描いた第2章。お二人もいきなり15歳、年を取ることになったわけですが。
豊川:キャラクターの年齢というのはあまり意識はしなかったですね。もちろん外見を変身させるのは大変で、今回はメークの時間も普段の2、3倍はかかりました。最後の方になって、やっとメークされるのを楽しめるようになりました。
常盤:メークさんも腕を上げてきて、仕上げるのがどんどん早くなっていました(笑)。
豊川:今回はキャスト全員かなり凝ったメークをしているので逆に、一人だけメークしています感はないかもしれないですね。
Q:メークなどの準備が長い分、撮影本番まで気持ちをキープするのが難しくなりませんか?
豊川:いや、逆にその時間があるからこそ、日常の自分から映画の世界へと気持ちを自然にシフトできました。特に今回のような作品の場合は、世界観にどっぷり浸からないとキャラクターに入り込めないので。
Q:常盤さんはカンナ(平愛梨)のおばさん役ということで、映画の中では見事な変身ぶりでした。
常盤:やっぱり衣装にはこだわりましたね。ちょっとした微妙なラインで、ガラっと印象が変わるんですよ。若く見えたり、老けて見えたり。衣装合わせのときはスタイリストさんと一緒に「この服装だとまだ若く見えちゃいますね」「あっ、わたしやっぱり若く見えちゃうー?」みたいなやり取りをしていました(笑)。
完全なビジョンを持つ、迷いのない堤監督の演出
Q:お二人が演じたオッチョ、そしてユキジの魅力を教えてください。
豊川:オッチョは非常に映画的なキャラクターですよね。ある意味、影がある孤高のヒーローだと思うし、そこはやっぱり演じがいがあります。演じる上ではちょっとした間(ま)を大切にするよう心掛けました。
常盤:やっぱりユキジって母性なんですよ。ケンヂたち原っぱメンバーに対してもそうだし、“血の大みそか”以降はケンヂが託したカンナを自分で育て上げなくてはいけない。自分の子どもではないですから、大変だと思うけど、それをやり抜く強さを持っている女性ですね。もちろんユキジもカンナを心のよりどころにしている部分はあると思います。
Q:第2章に関しては、オッチョの役割が非常に大きく、豊川さん自身もアクションシーンがかなり多いですね。
豊川:アクションが得意とはいわないですけど、嫌いじゃないですね。日常では絶対に経験できないことだから芝居とはいえ楽しいんですよ。あっ、でも楽しいのは体が元気なうちだけかな。撮影が深夜2時、3時になると楽しいものも楽しくなくなりますよ(笑)。
Q:お二人とも堤幸彦監督と初めてお仕事されたわけですが、ズバリどんな監督さんでしょうか。
豊川:すごくクレバーな印象がありましたね。すべてを計算し尽くした上で、現場ではアドリブ的な要素も盛り込んでくる。それも計算あってのことなんでしょうけど。それに俳優陣をすごく気遣ってくれる監督さんですね。とにかく「20世紀少年」の映像化は堤監督でなければ成立しなかったと思います。
常盤:完全なビジョンがある方なので、現場で迷っている姿を見たことないんですよ。スタッフさんにも監督の考えがしっかり伝わっているので、撮影中に何かが滞るってこともほとんどありませんでした。
豊川:確かに監督に迷いがないんで、演じやすい現場でしたね。
常盤:それにすっごく面白いんですよ、堤監督は。笑いのセンスがあるというか。そんなことを監督は褒めてほしくないかもしれないですけどね(笑)。
パリの熱狂ぶりにビックリ!!
Q:常盤さんは2008年8月、パリで行われた『20世紀少年』のワールドプレミアに参加されましたが、現地はどんな雰囲気でしたか?
常盤:フランス人はオタクが多いって聞いていたんですが、実際そうでしたね。パリの街を歩いていても、わたしが日本人だっていうだけでたくさんの人に声をかけられました。「セーラームーンのうさぎちゃん知ってる?」って尋ねられたり、アニメのキャラクターを手にして「これ僕が描いたんだよ!」って自慢してきたりする方もいましたよ。もちろん「20世紀少年」に対する関心もすごく高くて、盛り上がっていました。本当に熱狂的に迎えていただき、うれしかったです。
Q:お二人にとって、浦沢直樹さんの原作「20世紀少年」の魅力はどんなところにありますか?
豊川:伏線の張り方がすごいし、謎解きのタイミングも絶妙ですよね。本当に面白い。やっぱり浦沢さんは「20世紀少年」に限らず、才能あふれるストーリーテラーだと思いますね。
常盤:読み始めると、ほかのことが考えられなくなるくらいその世界観で頭がいっぱいになっちゃうんですよね。「20世紀少年」もそうだし、わたしは「MONSTER」にもハマりました。とにかく早く次を読ませてくださいって感じです!
豊川:そうそう、一気読みしちゃうよね!
Q:それでは最後に『20世紀少年<第2章> 最後の希望』の公開を楽しみにしているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
豊川:前作を観た人はもちろん、今回も観たくなっているはずだと思いますが、まだ「20世紀少年」を知らない方がいれば原作や第1章のDVDを入口にして、ぜひこの一大イベントに参加してほしいですね。絶対に楽しんでもらえると思います。
常盤:この「20世紀少年」祭りの続きをぜひ楽しんでほしいです。クライマックスに向けてすっごく大切な第2章なので、Don't miss it!! ということで(笑)。よろしくお願いします。
人気漫画の映画化とあって、自分が演じるキャラクターがファンに受け入れられるのかがプレッシャーだったという豊川と常盤の二人だが、今は苦労も多かった撮影を終えホッと一安心している様子だった。もちろん2009年秋に公開される最終章まで気を抜くことはできない。実際、出演者であるはずの二人が、誰よりもどんな結末を迎えるのか気になって仕方ない様子だった。出演者さえファン目線にしてしまうのが「20世紀少年」の魅力なのだろう。怒とうのクライマックスに向けた橋渡しとなる『20世紀少年<第2章> 最後の希望』に大いに期待したい。
『20世紀少年<第2章> 最後の希望』は1月31日より全国公開