『恋極星』戸田恵梨香 単独インタビュー
愛と恋との違いや、愛の重さに気付かされた
取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美
若手実力派女優の戸田恵梨香が、本格的なラブストーリーに初チャレンジ。白銀の北海道を舞台に繰り広げられる『恋極星』は、『私の頭の中の消しゴム』の原案者が企画・プロデュースを務めた感動の純愛ストーリーだ。重い運命を背負った恋人をいちずに愛するヒロインの菜月を熱演した戸田が、作品についての思いや撮影現場でのエピソードを語ってくれた。
とても迷ったけど、やりがいも感じた
Q:本格的な恋愛映画の主演は初めてということですが、演じてみていかがでしたか?
今までもいろいろドラマや映画で、誰かに恋する女の子を演じてきたので、ラブストーリーの主演は初めてだということを人から言われて、初めて気付いたんです。でも、実際に演じてみて、愛と恋は違うものだと思いました。愛の重さというか、大切さに気付かされました。すごく勉強になった作品でした。
Q:完成した作品をご覧になってどう感じましたか?
撮影が終わってからちゃんと菜月を表現できていたか心配でした。主演ってこともあったし、責任感みたいなものがこみ上げてきちゃったんですね。試写のときは心配しながら観てしまったので、次は一人で劇場に行って、余計なことを考えないで観たいと思っています(笑)。
Q:初めは菜月のキャラクターをつかむのに苦労したそうですね?
菜月はすごく人見知りで引っ込み思案なところがあるんですけど、恋をしてどんどんカワイくキレイになっていくんです。最初に自分の中で役のイメージを作ってから撮影に挑んだんですけど、撮影していくうちにいろんなものが変わっていって、迷いがでてしまったときもあったんです。苦労しましたけど、とてもやりがいを感じた役でした。
お弁当も凍る極寒の北海道ロケ
Q:北海道の美しい雪景色が印象に残る作品ですね。
はい! やっぱり、北海道の大地はすごいって思いましたね。
Q:真冬の撮影だけに苦労も多かったのでは?
そうですね。確かに寒かったんですけど、気持ち良く撮影できました。北海道にはすごく縁があって、毎年仕事で行ってるんです。最高に寒かったのがマイナス20度のときで、しゃべるのも呼吸するのもつらくて、「死んじゃうかも……」っていうくらいの寒さを経験しているので、『恋極星』の撮影のときは「あー、この寒さこそ北海道!」みたいな感じで、逆に楽しかったですね(笑)。
Q:ロケ中にお弁当が凍ってしまったこともあったそうですが?
スタッフの方が外でお弁当を食べていたら、お米がどんどんシャリシャリっていうかガリガリになってきて、途中から食べられなくなってしまったんですって。そんなことあるんですねー! って、みんなで大騒ぎしていました(笑)。
ドキドキしてリアルになったラブシーン
Q:菜月と幼なじみの颯太との初々しいラブシーンも印象的でしたが、撮影は緊張しました?
わたし自身はラブシーンの経験があったので、緊張はしませんでした。監督さんに、こんな感じでいいですか? って実際にやってみせたら、「エリカちゃんが積極的になっちゃダメ!」って注意されたりして(笑)。(颯太役の)加藤和樹さんが緊張されていたようだったので、それがわたしにも伝わってドキドキしてきて、菜月と颯太との心情がとてもリアルになりました。
Q:戸田さんは、ちょっとオトボケな妹キャラや、しっかり者のお姉さんキャラなどさまざまな作品でまったく違った表情を見せてくれますが、自分自身ではどちらに近いと思いますか?
どちらもあると思います。大勢集まると無邪気にはしゃいでしまいますけど、友だちと二人きりになると真剣に語ったり、相手をリードしていくタイプなんですよ。男気があるというか、意外と男っぽいところもあるので。多分、どちらも自分の中にあるものだと思います。
Q:同僚のOLたちが星占いに夢中になるシーンがありますが、戸田さんも占いの結果は気になりますか?
インターネットで調べたり携帯でチェックしたりはしないですけど、何となくテレビをつけて占いをやっていると見たりします! 今日のしし座は? 今日のAB型はどうだろう? とか(笑)。結構、占い好きですね。
Q:今回演じた菜月は、占いを信じないタイプでしたよね。
そうですね。興味ないっていうか、そんなことには惑わされないという……自分を信じている女の子でしたね。
Q:では、戸田さんが菜月と似ているところはありますか?
どちらかというと、菜月とは違うと思います。そんなに引っ込み思案じゃないですし、逆に人が大好きで積極的に話しかけたりしますし。占いにも興味ありますから(笑)。ただ、どんなにつらくても泣きながらでも、誰かに自分の思いをハッキリと伝える菜月とわたしは似ていると思います。
観る人に伝えたい大切なテーマ
Q:女性がとても共感できる作品だと思うのですが、特に何を感じてほしいですか?
わたしは、「どんなにつらくても、少しでも長く誰かのために生きていてほしい」と恋人に強く訴えた菜月の気持ちにとても共感しました。もし自分が颯太だったら、変えられない運命もあるんだと思い込んで、いろんなことをあきらめてしまうかもしれない……。でも、「人は一人じゃないのだから無責任に自分を捨ててはいけない」って菜月から教えられました。それは映画の大切なテーマでもありますし、皆さんにも伝えられたらいいと思います。
Q:颯太を支えることで、運命は変えられないと思っていた菜月の気持ちも変化していきますが、戸田さんは運命を変えられると思いますか?
この作品をやらせていただいて、そのことをすごく考えました。運命って何だろうって。わたしは、何かをあきらめてしまうことも、運が良かったって喜ぶことも、結局自分次第なのかと思ったりします。でも、突然の出来事に巻き込まれてしまうこともありますし……。正直、よくわからないですね(笑)。
Q:それでは、映画を観る方にメッセージをお願いします。
『恋極星』は、運命を受け入れる強さだったり、人生の楽しさだったり、大切なことを教えてくれる映画です。きっと皆さんに共感していただけると思っていますので、ぜひ劇場に足を運んでください。
撮影現場ではまったく緊張しなかったと笑顔で語る戸田には、天才肌という言葉がよく似合う。インタビューのときも常にリラックスしている様子で、自分を飾ることなく、素直な思いを明かしてくれた。時には悩み、迷いながらも、最後まで全力でヒロインを演じ切った彼女の情熱は、スクリーンからもしっかりと伝わってくる。生まれ持った才能だけでなく、並々ならぬ努力があるからこそ、人の心を打つ演技ができるのだろう。『恋極星』では、恋をしてどんどんキュートになり、愛を知って大人になっていく菜月の見事な表情の変化に注目してほしい。
(C) 2008ミツヤオミ / 講談社・「恋極星」製作委員
『恋極星』はシネ・リーブル池袋、新宿武蔵野館ほかにて全国公開中