『おっぱいバレー』綾瀬はるか 単独インタビュー
合言葉は“お疲れおっぱい”です!
取材・文:南樹里 写真:秋山泰彦
放送作家や脚本家として活躍する、水野宗徳による実話を基にした同名の青春小説を映画『海猿』シリーズの羽住英一郎監督が映画化した『おっぱいバレー』。中学校の弱小男子バレーボール部の部員たちが、顧問の女性教師・寺嶋美香子から「試合に勝ったら、おっぱいを見せる」という約束をとりつけ、勝利を目指して奮闘する姿を描く青春映画。ヒロインの美香子を演じた綾瀬はるかに、現場でのおっぱい話や自身の中学生時代について話を聞いた。
撮影現場はおっぱい天国!?
Q:『おっぱいバレー』というタイトルはインパクトがありますね。
そうですよね。タイトルに、おっぱいって(笑)。バレーボール未経験の男子中学生が、「試合で一勝したら、先生のおっぱいを見せる」という約束をバネに奮闘するという実話を基にしています。ちょっと動機は不純かもしれないですけど。彼らは本当に頑張っていて、本当に泣いたり、悔しがったりする。そうやって成長していく姿が描かれるんです。
Q:観ている間に、おっぱいという単語に対するヘンな抵抗がなくなりました。現場では、どうされていたんですか?
本当ですか? そう思ってもらえるとうれしいです! わたしも原作を読んだ時点ではおっぱいに「う~ん」って思っていて、現場でおっぱいって言いづらい空気だったら、役的にも非常に気まずいなって思っていたんですけど……。現場に入ると監督が「あいさつはおっぱいだから」って。本当に現場では、お互いに「おっぱい」「おっぱい」ってあいさつし合う感じでした。例えば「お疲れおっぱい」とか「おっぱいッス」って感じで、次第にかわいらしい合言葉になっていました。それから段々わたしもおっぱいに対する抵抗がなくなり、「お疲れおっぱい」って言えるようになったんです。慣れは怖いと思いました(笑)。
Q:演じられた美香子先生とはどういう人ですか。
最近サイボーグとか、女座頭市とか作り込む役柄が続いていたんですけど、今回は自分と同じ23歳という年齢で等身大という、とても自分に近い役でした。台本を読んで、あーこういうことって悩むよなあ、とか人物像がイメージしやすかったです。動機はともかく、目標を見つけて頑張ることの大切さを伝えたい、そういう気持ちで美香子先生を演じました。
Q:演技のプランは練りましたか?
特定の誰かをモデルにしたとか、何かしらの美香子像を作って演じたわけではないんです。社会に出て働き出すと、何かしら悩んだり、壁にぶつかったりするじゃないですか。自分自身がちょうどそういう時期で、他人事に思えなかったんです。なので美香子の悩みは、自分の悩みのように共有した感じ。成長していく美香子を演じることで、自分自身も成長したって思えます。
Q:撮影中に、やっぱり男性はおっぱい好きって思うことがありましたか?
監督から「いくつになっても男子はこのまんま。男子は、みんなこういうものなんだ」って言われて。なるほど! って。最初は、ちょっと一歩引いていたんですけど、この子たちも中学生のまんま大人になるんだな~って思うと、かわいいと思いましたね。
自身の中学時代と中学生男子のリアルな会話
Q:生徒役の子たちとは、どうコミュニケーションを取ったんですか?
ずっと北九州で泊まり込みの撮影だったんです。みんな同じホテルだったので、共同生活を体験しました。ロケバスで一緒になったときなどは、生徒役のみんなの中学校生活を聞いていました。その話の内容っていうのも本当に役柄の通りで、誰ちゃんがかわいいとか話していて、中学生の男子らしい会話でしたね(笑)。
Q:撮影秘話を教えてもらえますか?
マル秘話だと、子どもたちに関してが多いですね。でも、全然マル秘じゃないんですけど(笑)。ロケバスで、ある生徒役の子が「女子から告白された!」って話をしていたんです。(同僚教師役の)青木(崇高)くんも一緒だったんですけど、みんなで「ウソつけ」ってツッコんで(笑)。彼は「本当です!」って言い返すんですけど。今、改めて考えても「うっそだあ」って感じ。そういう話を聞くのが楽しくて、ロケバスに乗っていました。
Q:それは、どなたですか?
そこはマル秘です(笑)。
Q:生徒役の子から、劇中のような無理なリクエストは?
ないです、ないです(笑)。もし、言われても「無理」って言います。
Q:ところで、中学生時代の綾瀬さんは?
学生時代は、バスケットボール部だったんです。男子の先輩で、かっこ良くて人気のある人がいて、練習をしていても、その先輩がシュートを決める姿をチラ見していました。この作品でそういう気持ちを思い出しました。
頑張ることの大切さを体現
Q:綾瀬さんはあまりグチをおっしゃらないようですが、撮影中の苦労をあえてあげるなら?
撮影は夏に行ったんですけど、連日40度以上。温度計が43度を超える日もあって、みんな汗をダラダラ垂らしていました。美香子は長そで長ズボンのジャージ姿のまま、自転車で伴走するんですけど、暑かったですね。
Q:今でも撮影中に緊張しますか?
バレー部の生徒たちに初めて会って「そんな約束、できるわけないじゃない」っていう、掛け合いのシーンを最初に撮影したんですけど、そのときは緊張しました。
Q:一番好きなシーンは?
自分は出ていないシーンなんですけど。バレー部員のみんなで、中井先輩に立ち向かっていくシーンが好きです。泣けるんだけど、笑える! って感じがすごく良くて。しかも、朝まで撮影していたって聞いたので余計に。
Q:出演を経て、何か考え方に変化はありましたか?
美香子は「おっぱいを見るために、頑張る」って約束はしてはいけない、って頭では理解しているんだけど。でも言えなくて、後に引けない感じになっていて。自分自身も美香子と同じで、そういう約束ってアリなのかと疑問に感じていたんです。でも仲村トオルさんの演じられた、生徒のお父さんと話をして「あんな約束をしてすみませんでした」って謝ったときに、「動機は何であれ、頑張ることを知ったことが大事だ」って意味のセリフに感動しましたし、本当にそうだと思うようになりました。
Q:最後に映画を見る方にメッセージをお願いします。
観終わった後に、何だかすがすがしい気持ちになりました! ただ笑えるだけじゃなくて、泣けたりもして、最後には中学生のみんなが、かっこいいなあ~って感じると思います。いろいろな世代の人に楽しんでもらえる映画なので、ぜひ劇場で楽しんでください!
白いワンピース姿の綾瀬は、まるで天女のようにフワリと現れた。それでいて、春の陽だまりのような笑顔と、鈴の音のような声で回りを魅了する。それは本作のプロデューサーが「美香子役は、おっぱいを見たくなるほど健康的で、女性からも好かれるヒロイン」と表現した通りだった。綾瀬が発するとおっぱいという響きが、何か別のものに思えてくるから不思議だ。綾瀬の笑顔だけで十分「頑張る!」という気分になれる青春映画の傑作だ。
『おっぱいバレー』は4月18日より全国公開