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『天使と悪魔』トム・ハンクス インタビュー

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『天使と悪魔』トム・ハンクス インタビュー

映画の力は偉大だと思うよ。ささいなことをカッコよく見せる映画の力を侮ってはいけない

取材・文・写真:シネマトゥデイ

ロン・ハワード監督、トム・ハンクス主演の大ヒット作、『ダ・ヴィンチ・コード』の続編となる歴史犯罪ミステリー『天使と悪魔』が、5月15日に全世界同時公開される。前作『ダ・ヴィンチ・コード』から物語の主人公ロバート・ラングドン教授を演じているトム・ハンクスが、物語の始まりの地でもあるスイスのセルン(欧州原子核研究機構)にて本作のことなどユーモアたっぷりに語ってくれた。

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ロマンチックな関係は描かれない?

トム・ハンクス

Q:原作であなたのキャラクターは、女性科学者ヴィットリアとロマンチックな関係をにおわせますが、映画で二人はどの程度親密になるのか教えてください。

枢機卿が殺されるのを未然に防ぎたいという願望の裏にロマンスが隠れているとしても、教皇が選出される前に二人のロマンスを(映画の中で)描くのは時間的にも難しかった。これはダン・ブラウンの(シリーズ)最初の小説で、ロバート・ラングドンは『天使と悪魔』の中で最初に創造された人物なんだ。だから、どんな人物なのかを原作では描く余裕があった。そんなわけで、『ダ・ヴィンチ・コード』のときには、彼の人物像はすでに出来上がっていて、捜査に挑み続ける彼の姿が描写されている。でも、この映画は原作と違って(このシリーズの)2作目で、ラングドンのストーリーの2作目ともなる。健康的で屈強なロバート・ラングドンと健康的で魅力的なヴィットリア・ヴェトラの間に、どんなロマンスが展開していくかを描くには十分な時間がなかったんだ。僕自身としては映画の最後に、ローマのスペイン階段の上にあるハスラー・ローマ・ホテルとか、もっとこじんまりとした場所でもいいかもしれないが……エスプレッソかワインを二人で一緒に飲むシーンを想定したいんだけどね。でも、君たちにはそういうシーンをお見せできないかも……。

Q:あなたが最初にセルン(欧州原子核研究機構)に抱いていたイメージと実物には、どんな違いがありましたか?

最初にセルンへ車で近づいたときには、銀行もあってガスの配管も通っているところという感じがしたんだ。でも、君たちも加速器を見に降りて行っただろう? あれは、これまで僕が見たものの中で最も見事な物体だったね。ケープ・カナベラルのケネディ宇宙センターやNASA(アメリカ航空宇宙局)に行くのと似ているかもしれない。味気ないオフィスみたいな建物や雑草が目に付くけれど、中に入ると人工衛星や宇宙船があって、それがブースターにつながっていて打ち上げ準備が完了している。人間の作ったそういう建造物は、畏敬の念を抱かせるよ。僕らが粒子加速器を見に降りて行ったときは、そのスケールの大きさに圧倒された。絶え間なく音を出し続ける機械や排気装置に、ケーブルやワイヤ、そして銅管の長さなどに僕は驚いた。粒子加速器がどれほど複雑であるべきなのか、僕にはわからない。でも、普通の人が考えるよりずっと複雑なことは間違いない。それに加え、ビルの3階建てに匹敵する高さがある。これは、地下40メートルから100メートルとかの深さだ。人間は力強くて、驚くべき存在だと思わずにはいられないよ。こういうことを思い付き、それを作ってしまうんだから。再始動のときには、もう一度ここに来てボタンを押し、何が起こるか見てみたいね(現在は休止中)。そういえば、作動しているときに下に降りて見ることができるのかって聞いたら「だめです! だめです!  発生する放射能で黒焦げになります」って言われたよ。核廃棄物の放射能のようにいつまでも残留するようなタイプではなく、太陽のように大きな爆発だそうだ。しまいには太陽の光のように発散するらしい。そんなことがとても興味深くて、とても面白かったね。まるで、独自の教会や礼拝堂のような雰囲気だった。

『天使と悪魔』の次回作

トム・ハンクス

Q:今作は、前作に比べてアクションシーンが多そうですが苦労はされましたか?

今回はたくさん走るよ。火もたくさん出てくるしね。別にこぶしを使った格闘シーンがあるわけじゃない。ラングドンがマシンガンを握るわけでもない。でも銃は発砲するな。窓ガラスを割るために発砲するだけだけどね(笑)。そして、この映画のストーリーには制限時間があるんだ。いつ爆発するかもしれない反物質や爆弾だけでなく、教皇の選出の準備も同時に行われているからね。彼は、教皇が選出される前にイルミナティによる殺人を止めなければならないんだ。でなければ、教皇選出が乗っ取られたことになる。そして、まさに悪に乗っ取られるか善の手に委ねられるかの闘いとなっていく。それは現状がどうなるかで、永遠にすべてが変わってしまうことを意味するんだ。

Q:ダン・ブラウンがラングドン・シリーズの新作を書き上げたそうで、タイトルは「ソロモン・キー」だとか……。(その後、この「ソロモン・キー」のタイトルは、「ザ・ロスト・シンボル」に変更された。日本での正式タイトルは、まだ決まっていない)

え? サーモン・キー(直訳すると、鮭の鍵)? サーモンって……泳ぐ鮭のことかい?

Q:いえ、ソロモンです。

ああ……なるほど「ソロモン・キー」か! ソロモン王のソロモンだね。「サーモン・キー」とは大きな違いだね(周囲は爆笑)。僕は「サーモン・キー」なんていう映画には出演しないぞ! でも「ソロモン・キー」だったら出演するかもね。

Q:では次回作には出演するのですね。

それはまったくわからないよ。まだ3作目は読んでもいないし。『ダ・ヴィンチ・コード』を撮り終えたときは、その続編を作るかどうかはわかっていなかった。この作品を映画の2作目にすることの可能性や、映画化するのにふさわしいテーマかどうかは、話し合っていたけれどね。結果的には映画化することになったけれど、(3作目は)読んでもいないからわからない。でもダン・ブラウンは先見の明のある人だ。僕も読んでみるよ。読み出したらやめられない小説だろうし。まずは筋が通っているかどうかを確かめてみるよ。それでだめなら「サーモン・キー」に出演することにしよう(笑)。

映画の力は偉大

トム・ハンクス

Q:今は科学の学力の低下が問題になっていますが、『天使と悪魔』のような作品によって、少しでも子どもたちが科学に興味を持つようになると思いますか?

(ネタばれしますのでご注意を)「イエス」と答えたいところだけれど、ダン・ブラウンの描く科学は反物質を使ってローマの上空で大爆発を起こし、人々に衝撃を与えるっていうところがまずいね。でも現実は……セルンにはものものしい警備はないよね。それは、何も盗むものがないからだ。盗むべき秘密もない。たとえ誰かがセルンの秘密を持って逃げたとしても、光の速度で機能する粒子衝突器を建設するのに4,500億ドル(約45兆円)が必要なわけだ。でも、この映画を作ることによってセルンの活動を広め、何かいいことが起こるきっかけになるとしたら、映画の力は偉大だと思うよ。ささいなことを映画がカッコよく見せる力を侮ってはいけない。粒子とは一体何かを理解できる子どもたちもいるだろう。この映画を観た後、化学や物理の時間に「『天使と悪魔』に出てきた大型ハドロン衝突型加速器みたいなのはここにないの?」って聞く子が、必ずいるよ。先生は目を白黒させて「はいはい、粒子加速器みたいなものならありますよ」って答えるかもしれない。素晴らしいことだよ。素粒子物理学なんて、理解できる人は誰もいないよね(笑)。僕らはみんなこれに惑わされる。いったいここで何が行われているのかを説明するために、それに似た物やメタファーを探すのに苦心しているんだ。


トム・ハンクス

身振り手振り、そして時折コメディー映画で見せるようなユーモラスな表情を見せながら話をしてくれたトム・ハンクス。彼のサービス精神のおかげで、笑いの絶えない取材となった。単なる聞き間違えでさえも笑いの場に変えてしまうトムからは、頭の回転の良さが伝わってきた。知的でユーモアセンスも兼ね備えたトムは、まさにラングドン教授そのもの。前作『ダ・ヴィンチ・コード』よりもさらにアクティブに動き回り、そして推理し続けるラングドン教授の活躍に注目だ。

『天使と悪魔』は5月15日より全世界同時公開

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