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『アマルフィ 女神の報酬』天海祐希 単独インタビュー

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『アマルフィ 女神の報酬』天海祐希 単独インタビュー

初めから強い女性なんていない! いろいろあって強くなるんです

取材・文:鴇田崇 写真:尾藤能暢

イタリアの名所アマルフィ海岸をはじめ、美しい世界遺産を背景に、手に汗握るサスペンスと、エモーショナルな人間ドラマが交差していく映画『アマルフィ 女神の報酬』に出演した天海祐希。フジテレビ開局50周年記念作品の超大作に参加したことや、シングルマザーの矢上紗江子を演じた感想、俳優業に対する姿勢など、さまざまなテーマについて語ってくれた。

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鑑賞後の涙の理由とは?

天海祐希

Q:鑑賞後に涙を流されたそうですね?

しっかりと客観的に観ることができたので、とても良かったと思いました。普段、自分が出演している作品を観るときは、撮影現場での大変だったことや、みんなで頑張った思いがよみがえるものなので、なかなか客観的に観ることができないんです。『アマルフィ 女神の報酬』は、一つの作品として純粋に楽しめました。

Q:織田さんは、いろいろなキャラクターに感情移入できるところがいいと言われていました。

わたしも同感です。例えば、映画などを観ていて、ある人の感情には共感できるけど、そのほかの人の感情には共感できないことって、どうしてもあるじゃないですか。でも、『アマルフィ 女神の報酬』は、登場人物の誰かに肩入れしていても、別の人物の思いも理解できちゃう。そこが切なくてつらい(笑)! いろいろな人たちの思いが次々と押し寄せてきたから、わたしは映画を観ながら泣いてしまったのだと思いますね。

演じる役への意見は企業秘密

天海祐希

Q:矢上紗江子という女性を、どのような人として受け止められたのでしょうか?

彼女がどういう性格か? それは……教えられるわけないじゃないですか(笑)。だって、紗江子を演じたわたしが、紗江子はこんな人って言ってしまった瞬間に、そういう人ってみんなが思い込んでしまいますよね。わたしはそれが一番嫌なんですよ。映画っていろいろな見方ができるものなのに、わたしが自分の意見を言ってしまうと、それが答えになってしまう。それってとても残念なことだと思うんです。いろいろな人がいろいろな観点で楽しめるのが、映画の良さ! だから、紗江子に対するわたしの意見は、企業秘密です(笑)。

Q:本作のヒロインを演じる上で、何か演技プランを立てましたか?

特別には立てていないです。もちろん仕事慣れしているということではなくて、演じることが仕事なのでやるのが当たり前だと思うんです。作品で考えるのではなく、いつも同じスタンス。毎回真っ白な状態で役に取り組みたいと思っているので、出演させていただく作品によって、特別な区別をするということはしたことがないんです。

人前で泣ける女性は強くて美しい

天海祐希

Q:タフで行動力のある紗江子は、天海さんのイメージと重なるような気がします。

それは、みなさんが自由に抱かれているイメージの話なので、わたしにはよくわからないですけど(笑)、とてもありがたく思っています。ただ紗江子って、最初からタフな女性ではなかったと思います。だって、タフにならざるを得ない状況があったから。タフな女性って、だいたいそうならざるを得ない理由があると思うんです。初めから強い女性なんて、いやしません! みんないろいろあって強くなるんです!

Q:そういう意味でいうと、主人公の黒田にも、同じことが言えそうですよね。

ええ。そうだと思います。自分で自分のことをタフだ! って言い聞かせている部分が絶対にあると思うし、男性でも、もとから強い人なんていないと思います。この映画に出てくる人たちは、やせ我慢というか、みんな自分の弱さを隠しながら生きていて、それを見せないようにしている。隠していることが強いのか弱いのかは別として、自分に言い聞かせながら生きている姿がとても切なかったです。そこは共感してもらえると思います。

Q:それでは、天海さんが考えるタフな人、強い人ってどういう人でしょうか?

人前で泣ける人は強いと思います。だって、泣けるんですよ、人前で(笑)。誰でも泣くことができますが、それをあえて人前でする。そこまでやってしまうことって、美しいと思いませんか? でも、女性の涙に男の人はだまされるんですよね(笑)。

仕事へのモチベーションは悔しいこと

天海祐希

Q:ところで、天海さんの仕事に対するモチベーションは何でしょうか?

悔しいこと。自分が納得のいく仕事ができなかったから、次のお仕事をすると思うんです。もし、できたと思ってしまったら、わたし最高! 完ぺき! って思ってしまったなら、多分その次の仕事をしないと思います。ただ、何をしたって後悔はするし、何をやったって悔しい思いをすると思うんですよ。1年後に観たら、別の方法もあったとか、時間が経てば経つほど必ず感じると思う。それは成長しているということで、人は悔しいから成長するんです。精一杯やったつもりなのに、去年よりも成長している自分が去年の自分を観たら悔しいですよね。次、そんな悔しい思いをしないように頑張るけれど、また悔しい思いをする。その繰り返しだから辞められないのだと思います。

Q:その考え方というのはデビューのころからずっと変わらず同じままですか?

そうですね。わたしが宝塚にいたころからです。入った当初はもちろん周りはみな上級生で、演技がうまい人ばっかりでした。わたしは何でこんなにできないのかなって毎日思っていて、それが悔しくて、悔しくて……。でも、人と比べてということじゃなくて、自分自身に悔しいということです。何でこんな簡単なこともできないんだろう、次はもっと頑張ろうと、いろいろな人のお芝居を直接見て、毎日勉強しましたね。

Q:そんな一生懸命さが観ている人にメッセージとして届いていると思います。

いやいや、そんな大それたことを思ったことはないです(笑)。ただ、わたしの作品を観てくださっている人が、観る前よりも少しでも元気になってくれたらいいと思います。わたしたちが直接皆さんのお仕事を代わったり、サポートしたりすることはできないわけで、でも、たくさんの人が観てくれている可能性のある場所にいる。元気になって明日も頑張ろう! と思ってもらえることって、わたしたちにとって一番うれしいことだと思います。だって、人の役に立っているじゃないですか。映画やテレビ、こうして取材していただいている記事などで、やる気を探す手伝いができれば、これほどうれしいことはないです。


思っていることを歯に衣着せぬ物言いでズバッ! という天海は、ドラマや映画でみせる強くてカッコイイ女性のイメージ通り! 特に『アマルフィ 女神の報酬』で天海が演じた紗江子は、誘拐された娘を守るためなら、どんなことでもやってのける覚悟があるタフな母親なので、困難に立ち向かっていく彼女の姿に女性ならきっと元気や勇気をもらえるはずだ。イタリアの街を疾走する天海の熱演を、ぜひ大スクリーンで見届けてほしい。

(C) 2009 フジテレビジョン

『アマルフィ 女神の報酬』は全国公開中

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