~第11回 2009年9月~
INTERVIEW@big apple
注目の若手俳優ヒュー・ダンシーが出演する映画『Adam』(原題)や映画『ハイスクール・ミュージカル』でおなじみのヴァネッサ・アン・ハジェンズが参加した映画『Bandslam』(原題)、そして今や韓国を代表する監督となったパク・チャヌク新作映画『Thirst』(英題)の取材の様子を紹介します!
教師ベス(ローズ・バーン)は引っ越してきたアパートで、玩具会社に務めるアダム(ヒュー・ダンシー)と出会う。どこか陰のあるアダムが、実はアスペルガー症候群(発達障害)であることを知るが……。
ヒュー・ダンシー、ローズ・バーン、マックス・メイヤー監督
フォックス・サーチライト・ピクチャーズのインタビュー・ルームは、日本の大学の教室に似ていて、一つのテーブルに5人くらいが座れるようになっている。だがこのテーブルが原因で、録音に影響を及ぼすことになるとは……。僕らの記者仲間に、ボストン・ヘラルド新聞社の記者スティーヴン・シェーファーという人物がいる。インタビューを聞きながらパソコンに打ち込むという器用な技を持っているのだが、周りの記者にしてみればタイピングの音がうるさくて、結構迷惑。普通ならば長机の端にいてもらって、タイピングの音が録音の妨げにならないよう考慮してもらうのだが、今回のテーブルではそうはいかない。こういった場合は、部屋を代えてもらうこともできたのだが、すでにほかの部屋では取材が始まっており、ここしかないとのこと。
仕方なく、彼に「一つ後ろのテーブルに座ってくれないか?」と言ったら、「残念ながら、あそこでは俳優の声が聞こえないんだよ」と言い返され、結局スティーヴンが僕の目の前に座るはめに。早速インタビューが開始されると、案の定彼のたたき付けるようなタイピング音が部屋中に鳴り響いた。帰って録音したインタビューを再生してみると、タイピング音がうるさく、何度も聞き直さなければいけない状態に。これを何度も聞いて、書き起こさなければならないのかと思うと、とても憂鬱になってしまった。次回会ったときは、わざとパソコンの前でコーヒーでも倒してやろうと考えたのは僕だけじゃないはずだ!
存在感の薄い男子生徒ウィル(ガーレン・コネル)と、転校先の人気女子高生シャーロット(アリソン・ミシェルカ)がバンドを結成し、アマチュア・バンド大会に出場する姿を描く青春ストーリー。
ヴァネッサ・アン・ハジェンズ、ガーレン・コネル、アリソン・ミシェルカ、トッド・グラフ、エレン・ゴールドスミス・トーマス
人気絶頂のヴァネッサ・アン・ハジェンズと人気歌手アリソン・ミシェルカがインタビューに参加となると、相当な数の記者が来ると思われた。しかしラッキーなことに、僕のテーブルには、わずか5人。そしてヴァネッサが登場。紫のドレスを着こなした彼女は、小柄な上に、まるでぬいぐるみのようなかわいらしい顔をしていた。30代の僕は、ヴァネッサの作品を観たのは今回が初めてで、ほとんどの質問は20代の記者たちに取られてしまったが、恋人であるザック・エフロンの話などが飛び出し、インタビュー自体は和やかに進んでいった。
しかし写真撮影時に事件は起こった。インタビューが終わると、大抵の場合は、インタビュー対象者に許可を得て写真を撮るのだが、僕の横の女性記者がカメラを取り出したのを見て、パブリシストが写真不可の合図を出してきた。ほとんどの記者は、あきらめたのだが、若手男性記者は写真の許可をヴァネッサ自身にお願いし始めたのだ。断られるだろうと思った矢先、予想外にもヴァネッサからは「OK!」の返事が。ほかの記者たちもこの返事を聞いた瞬間にカメラを取り出したのだが、パブリシストは「ダメ! ダメ! ダメ! 絶対に撮ってはダメ!」とタレントの意思を無視して、強烈な拒否反応をみせた。
すると、この過剰なまでのパブリシストの行動に業を煮やした記者が、「映画の宣伝のために来ているんだから、写真を撮られるのも仕事だろうが!」とキレ始める始末。当人のヴァネッサは、記者とパブリシストの板ばさみで困り顔。結局、写真は撮ることができなかったものの、キレた記者は怒りが収まらない様子で、配給会社のパブリシストにイチャモンをつけていた。
神父のサンヒョン(ソン・ガンホ)が、自らの修行のために人体実験を受けた際に、謎の血を輸血され、何と吸血鬼になってしまうという異色のバンパイア映画。
取材会場に行ったら、記者待合室のテーブルに、何と献血パックが並べて置いてあるではないか! 「何じゃこりゃ!?」と思って手に取ってみると、献血用パックに入ったフルーツポンチのジュースだった。「フォーカス・フィーチャーズは、映画宣伝のために面白いことやるなぁ~」と笑っていると、早速インタビュー部屋への移動の指示が。取材記者は数人だったのだが、その中に、Hollywood-Elsewhereの問題記者ジェフリー・ウェルズの姿が……。これはきっと何かが起こるだろうと思っていた矢先に、やはり事件は起きたのだ。
インタビュー中にもかかわらず、写真を撮り始めるジェフリー。するとパク・チャヌク監督の横に座っていたクイーン・ラティファにそっくりな黒人女性記者が「シャッターがまぶしい! インタビューが終わってから撮りなさいよね!」とにらみつけて一喝! だが、その忠告を無視してさらに撮影を続けるジェフリー。耐えかねた黒人女性記者はパブリシストにジェフリーを注意するよう訴えたのだが、そのパブリシストの注意も「嫌だね!」の一言で撮影を続行。僕自身に迷惑が掛かっていなかったので、あえて何も言わなかったのだが、その一言にはさすがにムカついた。「おい、おっさん! いい加減にしないと部屋から追い出すぞ!」と語気を強め、さらに横にいた記者に対してもアイコンタクトで助け舟を求めた。この一触即発の雰囲気に、さすがのジェフリーもカメラを降ろさざるを得なくなったようで、平和的にインタビューは続行されたのだった。