『ココ・アヴァン・シャネル』オドレイ・トトゥ 単独インタビュー
シャネルの成功には、恋愛が非常に大きな役割を果たしている
取材・文/古川 祐子
世界的ファッションブランドの創始者ココ・シャネルの伝記映画『ココ・アヴァン・シャネル』が公開される。87年の生涯の中で、孤児院で過ごした幼少時代からファッション界で成功するまでの知られざる軌跡を描く。貧しかったシャネルが強烈な個性と才能でいかにのし上がっていったか、さらに今も愛され続けるシャネルファッションが生まれた背景も知ることができる作品だ。主人公のシャネルを演じたのは、映画『アメリ』でブレイクし、映画『ダ・ヴィンチ・コード』などで今やハリウッドにも進出したフランス女優オドレイ・トトゥ。本作で4度目の来日を果たした彼女にさまざまな話を聞いた。
シャネルは強さの裏に弱さも秘めた女性
Q:世界で最も有名なフランス人女性のひとりを演じることになったいきさつをお聞かせ下さい。
これまでも、シャネル役のオファーはいくつかあったの。でも今回のアンヌ・フォンテーヌ監督の作品へ出演することにオーケーしたのは、彼女がシャネルというキャラクターを描く上で重視する点が、わたしと同じだったからよ。
Q:アンヌ監督とは、具体的にどのようなところが同じだったのでしょう?
まず、シャネルの87年という長い人生をただなぞるのではなく、どこか一部分にスポットを当てて描こうとしていたところね。わたしもそのほうがいい映画になると思っていたの。さらに、シャネルが有名になる前の若い時期を選んだこともね。この頃の彼女には、強さの裏に弱さもある性格のエッセンスがとてもよく表れている。数々の運命的な出会いを通して、そのパーソナリティーが確立されていく、とてもドラマチックで興味深い時期なの。
Q:確かに本作では、有名になる前のシャネルの姿が描かれていますね。オドレイさん自身は、シャネルのどんなところに惹(ひ)かれましたか?
彼女は一度の人生で何人分もの人生を歩むかのように、情熱を持ってその意志を貫いたわ。それでも、恋をしているときは仕事のペースを落としたりするの。そんなところが人間らしくて、とても好きよ。
自立心の旺盛なところはシャネルと同じ
Q:役づくりの際、実在の人物ならではの苦労はありましたか?
ええ。誰もが、この伝説的な人物についてそれぞれイメージを持っているでしょう? それを考えると、確かにプレッシャーを感じたわ。でも、この映画は固定されたイメージがつく前の知られざる時期にいるシャネルを描くものだから、わたしの解釈によって自由に演技できる余地があった。残されたたくさんのシャネルに関する資料を参考にしながら、想像力を膨らませてこんな風だったのでは……と思いながら演じていたわ。と同時に「本当にこれでいいのか?」という不安がつきまとっていたことも事実ね。
Q:シャネルがコネもお金もないゼロの状態からスタートして、自分の努力で成功をつかんでいく様に心を打たれました。
さまざまな出会い、中でも恋愛が彼女の成功に非常に大きな役割を果たしているのよね。その恋愛と自立への努力が彼女に成功をもたらしたところが、人々に大きな感動を与えているのだと思うわ。
Q:シャネルは常に前進し続けますが、内面にさまざまな矛盾を抱えた女性でもあります。オドレイさんご自身、シャネルと共通する部分はありますか?
同じように矛盾を抱えているかどうか……。自分に対しては客観的になれないからわからないわ(笑)。共通している部分は、わたしも彼女のように精神の自由をとても大切にしているし、自立心の旺盛なところかしら。
Q:本作ではダンスも披露されていますね。ダンスはお好きですか?
プライベートでも踊るのは好きよ。でも、恥ずかしがり屋だから、パーティでお酒が入ったときにしか踊らないけどね。
日本の女性は自立していて魅力的!
Q:本作のフランスでの反応はいかがでしたか?
とても良かったわ。シャネルの洋服を好む女性だけでなく、男性にも好評だったの。伝説的なデザイナーの人生から興味深い部分を切り取った物語であると同時に、感動的なラブストーリーにもなっていると評されたわ。
Q:ところで今回で来日は4度目になりますね。
わたしは、日本が大好きよ! 日本の女性はとてもエレガントで魅力的だわ。男性に従うばかりでなく自立もしている。素晴らしい女性たちがいる日本に来ることができてとても幸せよ。でもまだ東京しか知らないのがちょっぴり残念ね。いつかほかの場所も訪れたいと思っているわ。
Q:最後に、この映画を楽しみにしている日本のファンへメッセージをお願いします。
この作品を日本のみなさんに観てもらえることになってとてもうれしいし、気に入ってもらえることを願っています。
部屋に入るなり、自ら手を差し出して握手をしてくれたオドレイ。インタビュー中もキュートな笑顔を絶やさず、終了すると「写真を撮らせて!」と小さなカメラで記者をパチリ。とてもフレンドリーな女性だったが、実在の人物を演じるというプレッシャーの中で、試行錯誤しながら取り組んだと語る姿からは繊細で真面目な一面もうかがえた。オドレイが体当たりで演じた、負けることを拒み挑戦し続けるシャネルをぜひ観てほしい。その生きざまは人生に迷っている人の背中を押し、目標に向けて努力している人を勇気付けてくれるだろう。
映画『ココ・アヴァン・シャネル』は丸の内ピカデリーほかにて全国公開中