『大洗にも星はふるなり』山田孝之、戸田恵梨香 単独インタビュー
相手のふとしたしぐさで、「好きなのかな?」とカン違いすることはある
取材・文:斉藤由紀子 写真:尾藤能暢
バラエティー番組の人気放送作家として知られる福田雄一がメガホンを取り、異色の暴走ムービー『大洗にも星はふるなり』を作り上げた。夏休み中に茨城県・大洗の海の家でバイトしていた男たちが、クリスマス・イブにあこがれのマドンナからの手紙で呼び出され、おバカな恋愛妄想を繰り広げる爆笑群像劇。本作でナルシストのカン違い男・杉本を熱演した山田孝之と、紅一点のマドンナ・江里子をキュートに演じた戸田恵梨香が、撮影中のエピソードや恋愛の妄想についてなど、とっておきの裏話を教えてくれた。
記事には書けない男同士の会話で、現場は大盛り上がり!
Q:まるで舞台劇のような緊張感がある一方、現場の楽しい様子が伝わってくるような作品でした。撮影中の雰囲気はいかがでしたか?
山田:台本を8ページくらい撮り続ける長回しのシーンが多かったので、かなり緊張感がありましたけど、本当に楽しくやらせてもらいました。ほとんど男だけの現場だったということもありますし、ストーリー自体が一人の女性をめぐるバトルなので、やっぱり盛り上がりますよね。
Q:唯一の女性で途中から撮影に参加した戸田さんは、現場にすぐなじめましたか?
戸田:特に戸惑いや緊張はなかったんですけど、楽しそうな現場の中に自分が入ったというよりも、みんなの関係性とか雰囲気を外から見ているような感覚になって……。
山田:それって疎外感ですか(笑)?
戸田:いえいえ(笑)。わたしはみなさんの会話を勝手に聞いて楽しんでいました。
Q:男子校の部活のような空気があったそうですが、どんな風に盛り上がっていたんですか?
山田:ここで話してもいいんですけど、ほとんど下ネタなので記事には書けないですよ(笑)。
戸田:男性同士でかなり盛り上がっていたってことは、スタッフからも聞きました。セットの片隅にもいたずら書きがしてあったそうですね。なんて書いてあったのかは、わたしの口からは言えませんけど(笑)。
山田:「う○こ」とかね(笑)。
監督も思わず萌えた戸田のコスプレ姿
Q:初めはジョニー・デップ風だった杉本が、だんだん壊れていく様子が爆笑でした。山田さんが演出面で提案したアイデアもあったんですか?
山田:セリフや衣装の崩れ具合は最初から決まっていたんですけど、動きでは意見した部分もありましたね。杉本は人の話を静かに聞いていられる精神状態ではなかったので、「立ち位置を決めないでウロウロしていてもいいですか?」とか。
Q:そんな山田さんの熱演を、戸田さんはどうご覧になっていたんですか?
戸田:すごい役者さんだと思いました。わたしとのシーンでは、カツラとボサボサの眉毛をつけた山田さんと海辺で会話する場面が印象に残っています。冬の撮影でとても寒かったので、カメラが回る直前に山田さんが気合いを入れるんですけど、その瞬間だけ顔がガラっと変わるんですよ。あれはちょっと怖かったです(笑)。
Q:戸田さんは男たちの妄想の恋人を演じ分けていましたが、かなりやりがいがあったのでは?
戸田:楽しかったですね。一つの作品の中でいろんなキャラを演じられるなんて、めったにない経験じゃないですか。すごくお得な気分でしたし、やりがいもありました。みんなの妄想の中で、いろんな衣装を着させていただいたんですけど、個人的にはウサギの耳をつけたゴスロリ風の江里子が好きでした。わたしって、映画の中でゴスロリのコスプレをすることが多いんですよね(笑)。
山田:福田監督がゴスロリ好きなんですよ! この間、監督とコメンタリーの収録で一緒に映画を観たんですけど、江里子がウサ耳姿で「ザッパーン、ザッパーン」って言うところがたまらないらしいです。「ちょっと巻き戻して!」って言いながら、「カワイイー!」って興奮していました(笑)。
戸田:あの「ザッパーン」はわたしのアドリブだったんですよ。監督さんが気に入ってくださったみたいですね(笑)。
夢の中でキス! 二人の恋愛妄想体験とは?
Q:今回の共演で、お互いにどんな印象を持ちましたか?
戸田:ドラマで共演したときはあんまりしゃべらない方というイメージだったんですけど、本当はすごくしゃべる方なんだと思いました。
山田:僕だってしゃべるときはしゃべりますよ! ただ、戸田さんが撮影に参加する前に、男同士で江里子に対する妄想の芝居を繰り広げていたじゃないですか。だから、いざ戸田さんと会ったらなんだか緊張しちゃって、自分からはなかなか話しかけられなかったんですよね。
戸田:緊張していたんですか? わからなかったです(笑)。
Q:お二人は、杉本のように恋愛で妄想したり、勝手に暴走したりした経験はありますか?
山田:暴走までする度胸はないんですけど、カン違いすることは結構ありますよ。相手のふとしたしぐさで、「これはもしかしたら、おれのこと好きなんじゃないかな?」と思ったりします(笑)。
戸田:妄想じゃないんですけど、最近、わたしの夢に山田さんが出てきたんですよ!
山田:僕が夢に出ちゃった?……まさか変なことしていないよね!?
戸田:山田さんが事故で倒れていて、わたしが「大丈夫!?」とか言いながら、キスして抱き起こすんです。かなり暴走した夢ですよね!
山田:ええっ(大興奮)! それ、正夢になるかもしれないじゃないですか! そんなこと言われたら、わざと事故を起こしちゃうかもよ(笑)。
Q:そんな夢を見ると、相手を意識してしまいませんか(笑)?
山田:男は意識しちゃいますよ! 例えば、面識はないんだけどテレビでよく見かける女性とデートしている夢を見て、起きたときに「あれ? 彼女も自分に好意があるんじゃ……」って思うんです。実際は何にもないんですけど(笑)。
戸田:そういうことってありますよね(笑)。
この映画で恋人たちをギクシャクさせたい
Q:コメディーの演技は泣かせる演技よりも難しいと思うのですが、お二人はどう感じましたか?
山田:もともとコメディーは好きですし、やったことのないものはなんでもやりたいタイプなんですよね。今回演じた杉本は、笑わせるというよりもヤバイくらい壊れているのが面白いという感じだったので、とにかくテンションマックスでやらせてもらいました。
戸田:コメディーは一番難しいって聞きますし、実際そうだと思うんですけど、あんまり笑わせようと狙い過ぎちゃうと逆に空回りしてしまって、内輪だけのお遊びになってしまうことってあると思うんです。だから、今回もコメディーだからといって意識しないで、受身になって頑張りました。
Q:最後に、これから映画を観る方に本作の見どころを教えてください。
戸田:どんなにつらいときでも、この作品を観ればイヤな気持ちが吹き飛んでしまうと思います。映画館で気軽に笑ってください!
山田:この映画を観た女性は男性の本性を知ると思うので、それについて彼氏と真剣に話し合ってほしいんです。「本当にあんな風に妄想しているの?」とか、「浮気のスリルを味わいたいの?」とか。もちろん彼氏にはちゃんと本音で答えてもらって、二人にギクシャクしていただきたいですね(笑)。
第22回東京国際映画祭のグリーンカーペット直後にインタビューに応じてくれた山田と戸田。華やかな空気を身にまとったまま、楽しそうに話す姿が印象的だった。特に戸田が夢の話をしたときは、山田もスタッフも大興奮! 山田は本当にうれしかったようで、インタビュー後も「また僕の夢を見てくれないかな……」と笑顔を浮かべていた。二人が共演した『大洗にも星はふるなり』は、俳優たちのテンポの合った会話劇と、意表を突くストーリー展開が秀逸な作品。とにかく思いっきり笑いたい人におすすめしたい。
(C) 2009「大洗にも星はふるなり」製作委員会
映画『大洗にも星はふるなり』は11月7日よりシネセゾン渋谷、シネリーブル池袋、テアトル新宿ほかにて全国公開