『アバター』サム・ワーシントン&シガーニー・ウィーヴァー 単独インタビュー
この映画で、人々が映画館に戻ってきてほしい
取材・文:シネマトゥデイ 写真:高野広美
映画『タイタニック』のジェームズ・キャメロンが、構想14年、製作4年という歳月を費やして作り上げた話題の映画『アバター』。本作で主人公のジェイクを演じるのは、『ターミネーター4』で注目されたサム・ワーシントン、物語のキーパーソンでもある植物学者のグレースを演じるのは、キャメロン監督と25年にわたる旧知の仲であり、映画『エイリアン』シリーズ以来のタッグを組むシガーニー・ウィーヴァーだ。若手俳優とベテラン女優に世界が注目している大作の魅力を聞いた。
秘密のベールに包まれた謎が解明!アバターとは?
Q:遺伝子操作で作られた分身、アバターとなったご自身をスクリーンで観ていかがでしたか?
サム:めちゃくちゃかっこよかったよ(笑)。背もずいぶん高いし、筋肉もすごいしね。普段の自分よりもずっとハンサムだから、とにかく気に入っているよ。できればアバターの姿のまま暮らしたいものだね。
シガーニー:とても気に入ったわ! とにかく最初にアバターを目にしたときは、息が止まるほど衝撃的だった。自由に動き回ることができるって素晴らしいと思うし、わたしはグレースがアバターになることを心から楽しんでいるところが気に入っているわ。
Q:それぞれが演じられたキャラクターについて、教えていただけますか?
シガーニー:わたしが演じているのはグレース博士。アバタープロジェクトの責任者であり、植物学者なの。サム演じるジェイクの亡くなったお兄さんはとても優秀な科学者で、グレースは彼が来るのをとても心待ちにしていたの。お兄さんさえ来れば、パンドラの星の植物に隠されている謎を解明できて、地球を守るためにいろいろな謎が解けるからね。でもジェイクのお兄さんは亡くなってしまって……。
サム:兄貴の代わりに僕が……。
シガーニー:そう、とんだボンクラが来ちゃったって(笑)。超がっかりよ!
サム:だよね(笑)。だからグレースは、僕に冷たいんだ(笑)。地球での僕は、事故で半身不随になっていて人生を半分あきらめているようなやつなんだ。それが兄の死をきっかけに、パンドラへとやってくる。アバターで両足が動く感覚を取り戻して、めちゃくちゃ喜ぶんだ。でも、パンドラで生活していくうちに、原住民ナヴィの娘ネイティリと恋に落ちる。人間側につくか、それともナヴィと一緒に戦うか……ジェイクは、大きな決断を迫られることになるんだ。
シガーニー:決断を迫られるのは、彼だけじゃないのよ。わたしもそうなの。一方ではパンドラの自然を破壊する地球側の責任者として働いているけれど、やはりわたしが演じるグレースも、ナヴィと知りあうことで、パンドラに残された自然に愛着を持つようになる。わたしが演じるグレースもまた、大きな決断を迫られるのよ。
シガーニーも認めた!映画史上最強のヒロイン誕生
Q:この映画にはたくさんの強いヒロインが出てきますね。ネイティリ役のゾーイ・サルダナには圧倒されました。
シガーニー:みんなに一つだけ教えておきたいの。わたしは、『エイリアン』のときに強い女戦士を演じたけど、ゾーイが演じたネイティリはこれまでのどんなヒロインよりもタフでかっこいいの! あれほどかっこいい女性キャラクターが誕生したのは、何よりもジェームズ・キャメロン監督自身が、女性を心から愛し、尊敬し、崇拝しているから。だからあれほど強くて魅力的な女性キャラクターが出来上がったんだと思うわ。
サム:女性が男性と同じように強いというのはとても素晴らしいことだと思うんだ。実際に、僕ら俳優も女優にリードしてもらったお芝居は山ほどあるしね(笑)。それにジェイクを演じていてもわかるんだけど、彼はネイティリのいちずなでタフなところに惹(ひ)かれたんだと思う。タフな女性は魅力的だよ!
シガーニー:あら、女性からすればなぜネイティリがあなたに惹(ひ)かれたのかがよくわかるわよ。ああやって、いつもちゃかしたり、冗談ばっかり言ったりしている男の人が、突然シリアスなスイッチが入ると魅力的に感じるものよ(笑)。
サム:ありがとう(笑)。少年っぽいジェイクの役づくりは、6歳になるおいっこをモデルにしたんだ。命令されても、反発してやらないあまのじゃくなところや、すぐに飽きて、楽しいことばかり見つけちゃうところとかね(笑)。少年のようなピュアさを持たせたかったんだ。
ハワイの熱帯雨林でパンドラの世界をリハーサル
Q:ファンタジックな世界の中にいるにもかかわらず、ジェイクやグレースには地球人としてのリアリティーがありました。演技の中にどうやって、リアルさを取り入れたのでしょう?
サム:ファンタジックな世界にいるのはまさにそのとおりで、そこにリアルさを出すのはとても難しい。でも二つの方法を取ったんだ。まずは感情を作りこんでいくこと。これは俳優なら誰でもトライするよね。ひたすらキャラクターの気持ちに成り切っていくんだ。二つ目の方法は、ジムが教えてくれたんだけど。例えば大爆発のシーンで、「うわあ!」っていうボディーアクションって一番難しい。そういうときに、ジムは体に、自然なリアクションを取らせるんだ。でっかい棒で僕の尻を引っぱたいたりしてね(笑)。すごくバカみたいに聞こえるかもしれないけど、モニターを見てびっくりしたよ。超リアルな表情が撮れてるんだから!
シガーニー:わたしたちにとってラッキーだったのは、基地という地球的環境のシーンがあったから。そこで人間のお芝居をすることで、リアリティーを作り上げることができたの。一歩外に出れば、パンドラという超自然的な世界が広がっているけど、ベースは人間の基地だったから。でも、人間ではない、パンドラで生きる原住民のナヴィを演じたゾーイは、わたしたちよりもっと大変だったんじゃないかと思うわ。
Q:リアルな感覚を身に着けるために、リハーサルはハワイの熱帯雨林で行われたそうですね?
サム:その森の中にいるとき、耳としっぽを着けさせられて、ちょっと布キレを着けた程度のほぼ素っ裸の状態で、森の中をエイリアンのように走り回っていたんだ。すごく楽しかったんだけど、あるとき、通りかかった男性が僕たちの姿を見て、「君たちはいったい何をしているんだ?」と聞いてきたんだ。「『タイタニック』を作ったジェームズ・キャメロンと映画を作っているんだよ」と答えたんだけど、僕たちは耳としっぽを着けて、ほとんど素っ裸で、ジェームズ・キャメロンはハンディカムを持って走り回っているだけ(笑)。彼はそれを見て、「ずいぶん落ちたもんだね」って言っていたよ(笑)。
シガーニー:ハワイでの経験はとても参考になったわ。映画の中でわたしのキャラクターは植物を採取するんだけど、そういうことをハワイで学んだの。その技術をSFの世界に持ち込んで演技に昇華したから、その経験がすごく役立ったわ。
本作でジェームズ・キャメロン監督が目指すこと
Q:この映画は、あらゆる世代の人たちが一緒に楽しめる映画になりそうですね。
シガーニー:そうね。本当にそう思うわ。人間であることとは、どういうことなのか……というジムの考えがたくさん詰まった映画になっていると思う。彼が費やした努力、そして彼が注ぎ込んだ長い長い時間を、映画から感じてほしいと思うわ。
サム:それって、この映画を作っている間、ずっとジム(キャメロン監督)が僕らに言っていたことなんだ。「この映画で、人々が映画館に戻ってきてほしい」ってね。日本もそうかもしれないけど、アメリカも映画館離れがひどくなってきているんだ。この映画は観るというよりも体験するって感じなんだよ。例えば、大空を飛ぶシーンを観ても、あまりにもリアルだから、飛んでいるのを観るというより、実際に飛んでいる気分になっちゃうんだ。だから、観た後、めちゃくちゃ疲れちゃうはずだよ(笑)。
エキサイティングな撮影を振り返った二人は、インタビュー時間が終わりに近づいても、「もう終わりなの? まだまだ話してあげるよ!」と話し足りない様子。それだけキャストたちも映画『アバター』への思い入れは強いのだろう。構想に14年間を費やし、情熱のすべてを注ぎ込んだジェームズ・キャメロン監督の思いは、苦楽を共にしたサムやシガーニーにもしっかりと受け継がれているようだ。まさにスタッフ・キャスト全員が一丸となって作り上げたハリウッドの超大作3Dを見逃すわけにはいかない!
(C) 2009 Twentieth Century Fox. All rights reserved.
映画『アバター』は12月23日よりTOHOシネマズ日劇ほかにて全国公開