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『オーシャンズ』宮沢りえ 単独インタビュー

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『オーシャンズ』宮沢りえ 単独インタビュー

親になって挑戦したい気持ちが強くなった

取材・文:鴇田崇

ネイチャー・ドキュメンタリーの名匠ジャック・ペランが、世界中の海を取材して映画としてまとめ上げた『オーシャンズ』。すでに予告編などで声を聞くことができるが、日本語吹き替え版のナレーションを務めた宮沢りえが、環境ドキュメンタリーや環境問題に対する価値観の変化や母親として新たに受け止めたメッセージなど、さまざまなことを語ってくれた。

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今までのドキュメンタリーとは正反対の表現方法

宮沢りえ

Q:映画を拝見して、改めて、宮沢さんの声はナレーションに向いていると思いました。

ありがとうございます。でも、ナレーションは得意じゃないです(笑)。実は意外に四苦八苦しながら、やっているんです。これまでに何度もナレーションをやっていますが、タイミングのキューを毎回もらわないと上手くできないですし、とてもエネルギーを使うので難しいですね(笑)。

Q:あえてご自身の個性を消す努力をなさっているような気がしましたが、いかがですか?

そう聞こえているのは、うれしいですね。特に今回はそのことを意識していましたし、ジャック・ペラン監督がナレーションをしている字幕版を観て、渋くて厚みのある声にとても感動したので、最初はとてもプレッシャーでしたね。映画を観ているときはナレーションが心に響いていたとしても、観終わったときには強く映像を印象に残したい作品なので、映像が第一に残ればいいと思いながら、できるだけわたしが表に出ないようにナレーションをしていました(笑)。

Q:そもそも、『オーシャンズ』のナレーションをやってみようと思った理由は何ですか?

今回のジャック・ペラン監督が作った作品は、美しい映像が環境問題を投げ掛けているところが、新しいドキュメンタリーだと思いました。今までわたしが観てきたドキュメンタリーは、壊れていく自然を一番にピックアップして、「さあ、どうしますか?」という投げ掛けが当たり前でした。そうじゃない、反対の方法論がとても新鮮でした。こういうメッセージの届け方もあるというのが、やりたいと思った一番の理由ですね。

Q:オイルまみれの鳥を映し出して、同情を誘う手法ではない、ということですね。

そうですね。この作品では、ひとたまりもないような波の激しさ、動物たちの生きるという闘いを映し出しつつ、こんなにも美しい海が、わたしたちが住んでいる星にあったということがわかって、その感動が大きかったです。美しさを知らなかったら、壊れていくことへの恐怖もないのかもしれないですよね。その意味で、今残っている環境がなくなってしまうことへの恐怖を感じました。

紳士で心の広いジャック・ペランの一言に感動!

宮沢りえ

Q: ジャック・ペラン監督ならではの着眼点ですよね。監督についてはご存じでしたか?

『WATARIDORI』などのジャック・ペラン監督の作品を観ていて、もともと好きだったということもありましたが、今回の作品を観て、本当にジャック・ペラン監督の奥底にあるメッセージがにじみ出ているなあと思いました。今まで映像にできなかった世界への挑戦という躍動感にもあふれていますし、単純な興味からだけではなく、誰も知らない世界を探求する監督のエネルギーは、同じものづくりをする人間としてとても尊敬するに値します。実際にすごくすてきな人でした。

Q:そういえば、東京国際映画祭で来日したときにジャック・ペラン監督に会われていましたね。

一緒に取材を受けていたので、あまり長くは会話ができませんでしたが、一言、一言がとても紳士的ですてきでした。監督はわたしの受け答えを聞いていて、日本版のナレーションには、映画を観た印象をそのまま伝えてほしいとおっしゃって、任された感じがすごくうれしかったです。ナレーションをする際はどう表現するかということが重要なのではなく、どういう心を持ってやるかというところにあると感じました。すごくいい出会いをさせていただきました。

地球の美しさを知って、エコ活動の意識が高まった

宮沢りえ

Q:もともと、環境問題に対して関心はありましたか?

何か具体的な運動をしているプロフェッショナルではないですが、2年間やってきたドキュメンタリー番組を通じて感じたことや、普段の生活の中で自分ができること程度ですけど、関心はあります。もっと、いろいろとやらなければと思いながらも、『オーシャンズ』のような作品に出会うと、日ごろ、実践できていない思いを消化している感じですね。

Q:日常、具体的にしている身近なエコ活動はありますか?

意外と忘れがちですが、買い物バッグを持っていくようにしていますし、例えば、海に行くと、落ちているごみが見逃せなくなっています。なぜここにごみを捨てるの? という、いたたまれない思いになります。無理すると続かないですが、もうちょっと具体的に行動したいと思っています。今回自分が住んでいる星の美しさを改めて知ることができたので、その意識は高まりました。

Q:こういう作品を観ると、地球を星や惑星などという単位を大きくして考え直しますよね。

そうですね。今は指一本でどんな情報でも手に入れることができる時代なので、まるですべてを知っている気になってしまいますよね。今回、この映画を観て、わたしたちが行けない場所があるということを知って、すごくわくわくしました。海はミステリアスなので、人間が全部を把握しきれていないところに、しめしめと思いました(笑)。

出産を経て、より変化を求めるようになった

宮沢りえ

Q:アザラシやセイウチの親子のシーンに感動されたとうかがいました。

はい。親子の慈愛に満ちあふれていますし、もし、人間が彼らのような慈愛を持ち合わせていたら、もっと違う星になるだろうと思います。もちろん、自分を含めてですが、まだまだ努力が足りない、慈悲の心を育てないと、と思いました。

Q:最後に、2010年の抱負も含めて、今後の活動についてお聞かせください。

まず2009年は子どもを生んだことが大きかったですし、その前に妊娠しながら舞台をやったことなど、後にも先にもできない大きな経験をした一年でした。出産をしたことで、今まで気が付かなかった自分や、成長しきれなかった自分が稼動し始めて、いろいろなことが始まった気がします。俳優としてではなく、一人の人間としてスタートの一年でした。それを踏まえた2010年は、親になったからこそ挑戦したい気持ちが強くなったので、現状にとどまりたくない一年にしたいです。より変化していくために、より大きな壁に出会いたいです。母親は安定を求めるのかと思っていましたが、意外と逆でした。(笑)。『オーシャンズ』をご覧になる方々には、前進していく力をもらってほしいです。そういう作品こそ作られる意味があると思いますし、そういう作品にわたしも積極的に参加していきたいです。


これから生まれてくる未来の子どもたちのために、美しい環境を残していかなくてはならないという言葉が、母親になったことで説得力を帯びていた宮沢。それを実践するために、具体的な行動を起こそうとしている彼女が、『オーシャンズ』と出会って感じたように、観た人それぞれが母なる地球を守るために、アクションを起こそうと思うに違いない。人類は環境破壊を繰り返してきたが、本作の美しい映像を観て、環境に対する認識を改める機会にしてみてはいかがだろうか。

(C) 2009 Galatee Films - Pathe - France 2 Cinema - France 3 Cinema - Notro Films - JMH-TSR

映画『オーシャンズ』は2010年1月22日よりTOHOシネマズ 日劇ほかにて全国公開

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