第19回 祝!! 『アリス・イン・ワンダーランド』大ヒット! 知られざるティム・バートン!?
LA発! ハリウッド・コンフィデンシャル
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『アリス・イン・ワンダーランド』大ヒット記念! 知られざるティム・バートン!?
映画ファンの皆さんお元気ですか? アカデミー賞の嵐も去り、落ち着きを取り戻したハリウッドと共に、わたしも再びハリコンへ戻ってくることができました!
いよいよ春到来! 2010年一発目のハリコンは、『アリス・イン・ワンダーランド』が公開されて以来、盛り上がりまくっているハリウッドの鬼才ティム・バートン監督にスポットを当てたいと思います。
ちょっとクラくて不気味なんだけど、何だかかわいくて最後にはジ~ンとしてしまう映画を作らせたら右に出るものはいないと言っても過言ではない、貴重な存在のバートン監督。今回は、モジャモジャ頭でもおなじみ、そんなバートン監督の生い立ちから苦労話、今のティム・バートンへの軌跡など、ハリコンならではの視点でお届けしましょう!
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バートン監督はハリウッドから車で15分ほど行ったところにある、ロサンゼルス市郊外のバーバンクという街で生まれ育ちました。本名はティモシー・ウィリアム・バートン。恥ずかしがり屋のティム少年は、学校の人気者! といったタイプではなく、どちらかというと日の当たるところを日陰から見ているタイプだったようです。成績もさして良い方ではなかったようで、スポーツもずば抜けているわけでなく……。高校時代に入っていた運動部もアメリカ少年たちがこぞって始めるアメフト部や野球部などではなくて、ウォーターポロ部というかなりのシブどころでした。
しかし、そのころからすでに芸術面で頭角を現していたティム少年は、絵を描くことや映画鑑賞が大好き! 中でも彼がご執心だったのは、映画『ゴジラ』やレイ・ハリーハウゼン製作の『タイタンの戦い』のようなモンスター系映画、そして『フランケンシュタイン』のような恐怖映画でした。そして、ストップモーション(コマ撮り撮影)の映画に興味を持ち始めたティム少年は、自宅の裏庭で8ミリを使って自ら短編映画を作ることに夢中になっていたのです。
地元のバーバンク高校を卒業した彼は、ロスの中心部から車で約1時間ほど行ったバレンシアにあるカリフォルニア芸術大学(=カリフォルニア・インスティチュート・オブ・ザ・アーツ:通称カルアーツ)という視覚美術では屈指の大学へ入学し、キャラクター・アニメーションを勉強することにしました。
このカルアーツは、かのウォルト・ディズニー氏が1960年代初頭に創立した学校で、アニメや映画業界を目指す若者たちにとっては、USC(南カリフォルニア大学)やNYU(ニューヨーク大学)と並ぶあこがれの学校。それだけに卒業者リストを見るとたくさんの芸術家たちが名を連ねています。ちなみにピクサー・アニメーションスタジオの製作責任者ジョン・ラセター氏は、バートン監督の同級生なのだとか。
さて、カルアーツを卒業したティム青年、意気揚々とディズニーのアニメーション・スタジオに入社しました。早速、『きつねと猟犬』や『コルドロン』などの作品でコンセプト・アートを担当させてもらったのですが、昔からどちらかというと陰なアートを好む彼の感性と、片や明るさが看板のディズニーは、芸術面でことごとく角を付き合わせることになってしまったのです。
中でも、今でこそカルト的な存在となっている短編映画『フランケンウィニー』を作ったときには、製作のディズニーからケチョンケチョンにけなされた揚げ句、「わが社はこんなものに費やす金はない!」とまで言われ、ティム青年がブチ切れたという逸話が残っています。これをキッカケに、彼はより一層、独自の作品を製作したいと望み始めたのでした。
そこまで言われてしまった短編映画『フランケンウィニー』ですが、気になるその内容はというと、交通事故で死んでしまった愛犬と、その愛犬をフランケンシュタインならぬフランケン・ドッグにしてよみがえらせる少年との不気味にも切ないファンタジー。異様ではありますが、何だかホロリと泣けてしまうお話です。
しかし、この感性、わかってくれる人はわかってくれるもの! この作品を観て、いたく気に入ってしまった当時の人気俳優がいたのです。彼の名はポール・ルーベンス。ピーウィー・ハーマンという強烈なキャラクターで、一気にスターダムにのし上がった彼は、自分の主演する風変わりな映画『ピーウィーの大冒険』の監督をティム青年にぜひやってほしい! と持ち掛けてきたのです。
有名俳優との長編映画という大仕事を武器に、当時ティムが大ファンで、ぜひとも一緒に仕事をしたいと思っていたロックバンド、オインゴ・ボインゴの一員ダニー・エルフマンに、『ピーウィーの大冒険』のサントラを担当してほしいと頼みに行きました。ダニー・エルフマンといえば、今となってはバートン映画には欠かせない作曲家です。まったく人生何がどうなるかわかったものではありません。ディズニーにはけなされた『フランケンウィニー』ですが、その短編のおかげでバートン監督は長編映画を監督するチャンスをつかみ、生涯の友に出会ったわけです。
結果的に、『ピーウィーの大冒険』は製作費に対して約5倍の興行収入という大成功を収め、ティム青年は映画界の最前線で活躍するティム・バートン監督という、夢のチケットを手に入れたわけです。
続いてバートン監督は、大ヒットの後にアニメにもなった『ビートルジュース』を手掛けることになります。この映画で出会ったのがウィノナ・ライダー。意気投合した二人は、次のバートン作品『シザーハンズ』へとつながり、主役のエドワードにはウィノナと当時仲良しだったジョニー・デップが参加することになります。
これをキッカケにジョニーとバートン監督の友情がはぐくまれていくわけですが、こうして順を追って見て行くと、良い映画作りは良い人間関係にありと言っても過言ではないような気がします。ジョニーとバートン監督は現在大ヒット中の『アリス・イン・ワンダーランド』でもコンビを組んでおり、実に7本目のコラボ作品に。また、ジョニーは、2003年にバートン監督と女優ヘレナ・ボナム=カーターの間にできた男の子(ビリー・レイくん)の名付け親にもなっています。
『アリス・イン・ワンダーランド』が世界的な大ヒットを収めて、まさに脂が乗りまくっている感のあるバートン監督ですが、当初彼の作風に異論を唱えていたディズニーはゲンキンなもので、2011年をめどにいわくつきの短編『フランケンウィニー』を再製作すると発表しました。もちろん演出はバートン監督。そして2014年には『アダムス・ファミリー』のリメイクを監督するというウワサもあり、まさに大忙しです。
ハリウッドを代表する人気監督の一人でもあるティム・バートンですが、幼いころには周りからなかなか認められなかったり、たたかれながらも頑張ってここまできたわけです。皆さんも4月に入って、新学期、新入社を迎えて困難にぶち当たることもあるかと思います。そんなときはバートン監督を思い出し、『フランケンウィニー』を観て、ネバーギブアップ精神で頑張ってくださいね! ではまた次回~!!
(取材・文 神津明美 / Addie・Akemi・Kohzu)
高校留学以来ロサンゼルスに在住し、CMやハリウッド映画の製作助手を経て現在に至る。アカデミー賞のレポートや全米ボックスオフィス考など、Yahoo! Japan、シネマトゥデイなどの媒体で執筆中。全米映画協会(MPAA)公認のフォト・ジャーナリスト。
いやぁ~、ついに結婚しちゃいました(*^^*)! だんなさんはクリスっていいます。通称クリちゃんです(笑)。毎日楽しくやってま~す(^^)v