『ダーリンは外国人』井上真央&ジョナサン・シェア 単独インタビュー
お互いを尊敬し合って、成長し合えるような関係が理想です
取材・文:鴇田崇 写真:尾藤能暢
マンガ家を夢見るイラストレーターのさおりと日本語オタクのアメリカ人トニーが運命的な出会いを果たし、やがて国際結婚という壁を乗り越え、結ばれていく姿を描く映画『ダーリンは外国人』。異文化で育った恋人同士ならではの衝突や擦れ違いが笑いと涙を誘う本作で、井上真央とジョナサン・シェアが、主人公のカップルを好演! 結婚観や撮影中に起こった異文化ギャップ、理想の結婚スタイルに至るまで、さまざまなテーマを赤裸々に語ってくれた。
結婚は努力と忍耐、最後はアクション!?
Q:本作は語り口こそコミカルですが、結婚に至るまでの道のりがしっかりと描かれているドラマです。ご出演の前後で、それまでの結婚観に変化はありましたか?
井上:わたしは、結婚について考えたことがあまりなくて、どちらかといえば恋愛について考えることが多かったんです。この作品をきっかけに結婚観について聞かれる機会が増えたので、考えるようになりましたね。まだざっくりとした感じですが、この作品と出会って結婚っていいな! って思いました(笑)。
ジョナサン:僕は結婚しているので、結婚とは何か? ということを考え直す機会になりました。口に出さないからわからないままのことだってあるし、反対に言い過ぎたことに対しては思いやっていかないといけない。そういうことが、この映画の中には描かれていると思います。
井上:それに、今すぐ結婚したい! というよりは、一緒に人生を楽しむことができて、悲しいときには、すっと支えてくれるパートナーがいる。そういうことが、すてきだと思いました。
Q:劇中のさおりとトニーが繰り広げる会話やエピソードの数々は、共感を呼びそうです。
ジョナサン:僕が映画を観て思ったことは、お互いにうまくいくためには努力が必要だということです。トニーのように、さりげなく努力をすることが必要だと思いました。
井上:既婚者の方は、努力とか忍耐ってよく言われますよね(笑)。
ジョナサン:(笑)。結婚生活に忍耐は必要だと思うけど、我慢だけじゃなくて、よりうまくいくためには行動を起こさないといけない。
井上:さおりを温かく見守っていたトニーが彼女の部屋に入ってきて、「言ってほしかった……」というシーンには、心動かされました。わたしも、さおりが洗い残しのあるコップを見て、トニーに言い出せなかった気持ちは何となく理解できるんですが、価値観が違うからこそ、それを埋め合うためにもちゃんと話し合いをしないといけないですよね。その大切さに気付かされた感じがします。
ジョナサン:僕も洗濯をしようとしてうまくいかないことはよくありました(笑)。マークを見て、ネットの中に入れて洗わなくてはいけないのに、セーターをダメにしたことがあります。
井上:トニーと同じ(笑)! でも、わたしも洗濯は苦手。品質表示とか……。
ジョナサン:最近ようやく何とかできるようになったけどね(笑)。
異文化のギャップも "ノー壁"でノー・プロブレム!!
Q:劇中のさおりとトニーのナチュラルな演技から、現場でのお二人の相性の良さを感じさせました。
ジョナサン:真央ちゃんから学ぶことが多かったので、毎日勉強させていただきました。今回のこの共演に感謝しています。
井上:ジョナサンは本当にまじめなんです。初めての現場の中で、わたしだったら緊張してどうしていいのかわからなくなると思うのに、ジョナサンはわからないことはわからないとちゃんと言うし、みんなをハッピーにさせようとするところがすごい。原作者の小栗(左多里)先生も、トニーに似ていると言われていましたけど、柔軟性があるところがすてきでした。
ジョナサン:実は、僕が考えていたトニーと、演じてくれと言われたトニーは違っていて、自分がつくり上げたキャラクターを全部捨てないといけなかったんです。その場でトニーという役を考えていかなくてはならなかったので、一生懸命になっていたんだと思います。
Q:ちなみに、どんなトニー像を考えていたのですか?
ジョナサン:実際に本物のトニー・ラズロさんにもお会いしまたが、まじめで深く物事を考えているような印象を受けました。まるで哲学者のような。そういう路線で(撮影に)入ろうとしましたが、もっと気軽に、力を抜いてと言われました(笑)。確かに僕は力を入れ過ぎていたので、気楽になりましたけどね。
井上:待ち時間にいろいろな話をしていたことも良かったと思います。いつもなら、共演者の方とコミュニケーションを取らないといけないと意識してしまうのですが、ジョナサンとはそういうことを考えず、すっと入っていけました。オープンな感じだったんです。
ジョナサン:僕は壁を作らないタイプですね。
井上:ノー壁です。ノー壁の平和主義者です(笑)。
ジョナサン:真央ちゃんもノー壁で付き合ってくれたので、うれしかったです(笑)。
Q:劇中さながらに、異文化のギャップに驚いたエピソードは?
井上:日本の撮影現場はスケジュールがタイトなので、大丈夫かな? って、心配でした。時間がないと短縮メシとか、休憩時間が数10分なのは当たり前だし、ささっと食べて着替えてGO! の世界ですけど、海外は、休むときはゆっくり休むという感覚なので、絶対にそんなことはないですから。なので、ニューヨークでのロケはうれしかったですね(笑)。
ジョナサン:大変じゃなかったと言えばウソですけど、いい意味でのつらさが多くて、作品に大きく成長させられた気がしています。それは大げさなことじゃなくて、追い込まれて立ち向かった方が、気持ちがいいんです。貴重な時間を過ごさせていただきました。
尊敬し合って大きなビジョンを持てば、結婚はうまくいく!?
Q:後半、さおりとトニーは相手のためを思って仕事に家事に頑張りますが、すべてが裏目に出てしまいますよね。こういう経験は、世の中のカップルにも多そうな気がします。
ジョナサン:ありますよね。それこそ洗濯機でセーターをダメにしたケースを言いましたが、そういうことは人生でよくありますよ。
井上:人生(笑)! でも、あると思います。もちろん、努力することも大切だけど、相手のためとはいえ、できないことを無理にしちゃうと、自分らしくない結果になることがあるじゃないですか。わたしこんなに頑張ったのに~! って思っているだけじゃなくて、できないことはできないと言うべきだし、相手が気付かせてくれることもあるから、相手の意見を素直に受け入れる必要もあると思いました。
ジョナサン:なかなかね、難しいことです。
井上:わたしは、友達や好きな人との関係では、争いごとになるとスッと逃げちゃうタイプだったんですが、この映画で話し合うことの大切さを学んだので直していこうと思います(笑)。ついつい、面倒になってしまいがちですが、逃げないように頑張ります。
Q:最後にお聞きしますが、この映画に出演されて、理想の結婚スタイルは見つかりましたか?
ジョナサン:結婚して家族になって、例えば子どもが生まれると、どうしても目の前のことに追われてしまい、いろいろなことをこなすには必死にならなくてはいけない。だから、もっと大きな目標やビジョンを持って、すてきな将来を共に歩いて行きたいと思いました。
井上:お互いを尊敬し合って、共に成長できる関係が理想です。仕事はしなくていいから家にいて! みたいな人はちょっと厳しいですけどね(笑)。応援してあげたいし、してほしいから、応援したい者人同士だったらいいですよね!
まるで映画から抜け出てきたままのような仲の良さで話す二人。さまざまな壁を乗り越え、きずなを深め合ったさおりとトニーを演じたことで、結婚という枠組みを越えた人間同士の信頼関係について改めて考えたと口をそろえる姿が印象的だった。物語は国際結婚というドラマチックで映画的要素が含まれているものの、描かれるのはわかり合おうと努力することの大切さだ。現在進行形のカップルにもダーリンはこれからという人にも、おすすめの人間ドラマに期待してほしい。
映画『ダーリンは外国人』は4月10日より全国公開