『てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡~』岡村隆史&松雪泰子 単独インタビュー
プロポーズのシーンでドキドキしました
取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美
もっときれいな沖縄の海を、家族に見せてあげたいという思いから、世界で初めて養殖サンゴの移植産卵に成功した金城浩二の実話を、映画『デトロイト・メタル・シティ』の李闘士男監督が映画化した『てぃだかんかん』。主人公の健司をナインティナインの岡村隆史が熱演し、健司を支え続ける妻の由莉を松雪泰子が演じている。映画初共演を果たした二人が、沖縄での撮影秘話や、サンゴについて思うことなど、本作にまつわるエピソードをじっくりと語ってくれた。
松雪との共演に岡村がビビリまくり!?
Q:夫婦を演じたお二人が意外なほどお似合いで、とてもほほ笑ましかったです。
岡村:松雪さんとはバラエティーでお会いしたことはあったんですけど、まさか映画で共演するとは思ってもみなかったので、「奥さん役は松雪さんです」とマネージャーに言われたときは、「おいマジかよ!」ってビビリました(笑)。
松雪:それはどういう意味なんでしょう(笑)?
岡村:だって、松雪さんですよ! そんなすごい女優さんと共演するのだから、「これはヘタなことできんぞ!」と思ってしまって……。女優さんをバラエティーのゲストに迎えるときは、ホームに来ていただくような感覚なんですけど、今度は僕がアウェイで勝負するわけですよ。「僕は何にもできませんよ! 松雪さん、お願いします!」という感じでした(笑)。
松雪:でも、岡村さんは沖縄という土地にいらっしゃる雰囲気がすごくナチュラルでしたよ。だから、わたしも何も心配せずに、自然にかわいい夫婦を演じられたらいいと思っていました。
Q:沖縄での撮影ということもあって、かなりリラックスできたのではないですか?
松雪:そうなんです。沖縄のフワっとした空気感も良かったですし、李監督もとてもフレンドリーな方なので、すごく居心地のいい現場でした。撮影の合間も、監督が「パンケーキ屋さんを見つけたから食べに行こう」と誘ってくださってランチをしたり、共演した子どもたちと一緒に絵を描いたりしながら、のんびり過ごしていました。
岡村:ビーチにテントを張ってみんなでくつろいで、すごくいい感じでしたよね。僕は最初のころ、「みなさんに迷惑を掛けたらあかん!」と思って、かなりテンパっていたんですけど、沖縄の空気に助けられました(笑)。
モデルとなった金城夫婦と事前にコミュニケーション
Q:撮影の前に金城さんご夫婦にお会いになったそうですが、演じる上で参考にされた部分はありましたか?
岡村:松雪さんは、金城さんの奥さんといろんなお話をされて、由莉の役づくりに生かしていたと思うんですけど、僕の場合は、金城さんとカブト虫の話しかしていなかったんです。カブト虫の捕り方で、えらい盛り上がってしまいまして(笑)。もちろん、サンゴのお話もさせていただいたんですけど、役づくりというような気持ちではなかったですね。ただ、金城さんはいつもニコニコしている方なんで、健司を演じるときは笑顔でいるようにしました。
松雪:奥様とお話させていただいて、本当にご主人を深い愛情を持って見守っていらっしゃるんだと感じました。でも、お話したことを役に生かしたというよりは、奥様の持つ女性としての強さを表現することに心を配りました。「愛が深いがゆえの強さとは、一体どういうことなのか」ということを常に考えながら演じました。
岡村:金城さんのお子さんにもお会いしましたけど、お父さんとお母さんを尊敬している感じで、すごくいいご家族でした。僕と金城さんが話しているところを子どもたちがずっと見ていて、金城さんは「岡村隆史に会わせてあげられたので、子どもたちから尊敬してもらえる」なんておっしゃっていました(笑)。
あんなロマンチックなプロポーズがしたい!
Q:岬でのプロポーズや結婚式など、ロマンチックなシーンも多く登場しますが、演じていて一番ドキドキしたのはどんな場面ですか?
岡村:僕はやっぱり、プロポーズのシーンですね。朝焼けの限られた時間で撮影したので、失敗できないという意味でもドキドキしました。前日に監督と松雪さんと、「こういう言い回しの方がいいんじゃないか」とか、じっくり話をした後での撮影だったので、余計に緊張しましたね。
松雪:わたしもプロポーズのシーンでドキドキしました。目の前に朝焼けの海が広がっていて、とても美しい場所でしたし、あんなにかわいらしいプロポーズは今まで演じたことがなかったので、すごく印象に残っています。
Q:岡村さんは、実際にプロポーズするときも、あんなふうにロマンチックな演出をしたいと思いますか?
岡村:そうですね。自分がプロポーズするときは、あの場所でしようと思います! でも、こんなこと言うと、あそこに連れていった時点で、お付き合いしている人にバレちゃいますね(笑)。ちゃんとプロポーズできるのかな、という気もしますけど(笑)。
松雪:うまくいくといいですね(笑)。
Q:本作で岡村さんは、原田美枝子さんや國村隼さんなど、いろんな方に殴られていましたが、一番強烈だったのは、やはり松雪さんのヘチマでの一撃だったのでしょうか?
岡村:松雪さんのヘチマと、掌底(しょうてい)気味に入ってきたパンチです(笑)。原田さんの場合は、本当にあてるのではなくて、押すような感じだったんですけど、松雪さんはガッツリいきましたよね(笑)。
松雪:ドーンといきました(笑)。
岡村:特にヘチマで殴られるシーンは、それまで優しく見守ってくれていた由莉が、初めてブチ切れるところだったので、リハーサルのときからマジで怖かったです(笑)。
松雪:リハーサルで手加減しないでやってみたら、思いのほかヒットしてしまいまして(笑)。ヘチマが四方に飛び散って、自分でもびっくりするくらい手応えを感じたんです。それでスイッチが入ってしまったんですよね。「カーン!」と一気にテンションが上がりました(笑)。
沖縄の白いサンゴに大ショック!
Q:本作で描かれたサンゴの白化現象は、大変ショッキングでしたね。
岡村:僕は沖縄で何度もダイビングをしているんですけど、白いサンゴが死んでいるなんて知らなくて、すごくショックでしたね。「イルカなどはかわいいから無条件で保護しようと思うけど、サンゴだって同じ生き物なのに、それが伝わりにくい」と金城さんがおっしゃっていたんですけど、本当にその通りですよね。この作品に出演してから、ダイビング中にサンゴを傷つけないように、ものすごく注意するようになりました。
松雪:わたしも、改めて海の状況を知った今は、環境を良くするためにできることなら、どんな小さなことでもいいからするべきだと痛感しましたね。普段から「できることからやろう」と思っていても、実際はなかなかできなかったりしますよね。でも、この映画に参加して考えを改めました。子どもたちにも、そういったことを教えてあげられたらいいと思いました。
Q:最後に、どんな困難にあっても夢をあきらめない金城さんご夫婦の生き方から、学んだことがあれば教えてください。
岡村:金城さんの情熱や努力もスゴイけど、だんなさんに「どうぞ好きなことをやってください」と言える奥さんも本当にスゴイですよね! ああいう奥さんをもらったら、いい家庭が作れるでしょうね。きっと金城さんは、奥さんの支えがなければ、あんな偉業を成し遂げることができなかったのではないかと思うんです。とにかく、奥さんの器のでかさを感じました。
松雪:本当にそうですよね。わたしも、金城さんご夫婦のようなステキな生き方ができるといいなと思います。これから映画をご覧になる方にも、お二人の温かさや愛の強さを体感していただきたいです。
岡村:家族のことや海のことなど、いろんなことを感じてもらえる作品だと思います。何かをしたいのに踏み出せない人がいたら、ぜひ観てほしいですね。この映画が新しい一歩を踏み出すきっかけになってくれたらうれしいです。
穏やかなたたずまいの中に強さを感じさせる岡村と松雪は、どんな困難にも負けずに奇跡を起こした金城夫婦とイメージがぴったりで、李監督のキャスティング・センスに拍手を送りたい。太陽さんさんという、幸せの象徴を意味する沖縄の方言をタイトルにした『てぃだかんかん』は、岡村の言うとおり、何かに悩んでいたり、迷っていたりする人にこそ観てほしい作品だ。きっと観終わった後に、心の雲間から一筋の光が差し込むのを感じるはずだ。
スタイリスト/ Die-co★
衣装協力/ athe Vanessa Bruno、EMMA CASSI
映画『てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡~』は4月24日より新宿バルト9ほかにて全国公開