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『ばかもの』内田有紀 単独インタビュー

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『ばかもの』内田有紀 単独インタビュー

ダメな男をひっぱたける、そんな女になりたい

取材・文:シネマトゥデイ 写真:高野広美

年上の女性・額子との衝撃的な別れを機に酒におぼれ、どん底まで落ちていった主人公・秀成(ヒデ)が、10年後、変わり果てた額子と再会することで自分を見つめ直す姿を描いた芥川賞作家・絲山秋子の同名作を、映画『DEATH NOTE デスノート』シリーズの金子修介監督が映画化。大胆な言葉と行動で年下男を翻弄(ほんろう)しながらも、本当は不器用で心に大きな愛を持つヒロイン・額子を演じているのは、映画やドラマで大活躍中の実力派・内田有紀。複雑なキャラクターを見事にスクリーンで昇華させた内田が、役に込めたアツい思いを語った。

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女ってどんなに強がっていても、どこかで守られたいという意識がある

内田有紀

Q:演じた額子という女性について、どんな印象を持ちましたか?

まず原作を読んだ途端に、ぶっきらぼうで素直じゃないってものすごく損なのに、生き方を曲げられない額子がすごくいとおしく思えたんです。一見するとヒデが額子を好きなように思えるけど、本当は額子が彼のことをどうしようもなく好きになっちゃったんだなって感じたんですよね。だから、どうしたらいいかわからなくて、めちゃくちゃな別れ方を選んでしまう。そんな彼女が持つ「痛み」がいとおしくて、額子を救ってあげたいなって思ったんです。

Q:年下男性の前だと強がってしまう額子の気持ちにすごく共感できました!

そういうことってありますよね。友達だとしても、かわいさよりもかっこいい部分を見せたくなっちゃう。でも本当は、かわいいとも思われたくて矛盾が生まれる。額子を演じて思ったのは、年下と付き合うのって意外に疲れるんじゃないかなってこと(笑)。やっぱり年上がいいなって思っちゃう。

Q:不器用な額子がチラッと見せる乙女な表情も印象的でした。

女ってどんなに強がっていても、守られたいっていう意識がどこかにあるんですよね。好きな人の前で100パーセント心を開けたら幸せですよね。

女性の繊細さを感じるセリフがわたしは好きです

内田有紀

Q:セリフ一つ一つが心に響いてきたのですが、内田さんが印象に残っているセリフはありますか?

実は少し過激なくらいのセリフがわたしは好きでしたね。過激さ自体は問題ではなく、人間だから何を言ったっていいと思うんです。劇中に出てくる言葉は女性だからこそ言えるセリフだと思いますし、男性よりも女性の方が繊細な感覚が研ぎ澄まされているんだぞっと、とても感じました。あんなに大胆なセリフを言っちゃえる額子が好きです。

Q:酒におぼれて、アルコール中毒になってしまったヒデに再会した額子が、彼をひっぱたくシーンもまた強烈でした。

額子と別れて、白石美帆ちゃん演じる優しい彼女と付き合うんだけど、ヒデはお酒におぼれていく。ヒデは、あの「バチン!」がずっと欲しかったんだと思う。ダメな自分を思いっきりひっぱたいてくれることが、すごく大事なんですよね。わたし自身、そんな女になりたいですね。

Q:内田さんは、この二人が迎えた結末をどう感じましたか?

恋愛は片方の思いだけじゃできないものだから、この二人はすごく幸せだなって思いました。うらやましく感じましたね。

原作からどんどんイメージが沸いた

内田有紀

Q:先ほど、「女性だからこそ言えるセリフ」と内田さんがおっしゃったように、原作者の絲山秋子さんだからこそ書けるセリフですよね。絲山さんとは何かお話をされましたか?

もう話が尽きなくて! 撮影の合間はずっとお話していました。一言でいうと「気が合う」。絲山さんは初めて会ったときから、ずっと前から知っていた気持ちになれたんですよね。これから先いっぱい会うわけではないかもしれないけど、ふとした瞬間に「元気かな?」って思える人です。

Q:原作からイメージできたことってありましたか?

すごくありましたね。原作を読んだ時点で、額子が片腕になったシーンを演じるために、どんどんイメージが沸いたんです。例えば、片手で髪を束ねるシーンは、自分の中にある額子のイメージでできたシーンでしたね。

Q:金子監督、そして絲山さんとは皆さんでディスカッションされたんですか?

かなり話し合いをしました。やっぱり、金子監督は男性なので、女性の見方とはまたちょっと違うんです。でも、女性だけで作っていたら、この映画はきっと、もっとすごいことになっちゃっていたと思うので(笑)。金子監督がバランスをうまく取ってくれて、「安全で、安心な額子」が出来上がったと思います。でも額子って、本当はもっとびっくりしちゃう女性なので、この映画を観てから、ぜひ原作も読んでいただきたいですね。

30代から役づくりがすごく楽しくなってきた!

内田有紀

Q:ここ数年を振り返って、役へのアプローチはどう変わりましたか?

やっぱり30代に入ってから、役づくりがすごく楽しくなってきたんです。例えば、自分が演じるキャラクターが水を飲むとき、ズルズルと音をたてて飲むのか、口からちょっとこぼしながら話をしたりするのかとか、日常動作を掘り下げることが楽しくなってきました。一見、お客さんにはわかりづらいような細かいところにまで、ニュアンスを付けるようになりました。

Q:亡くなったつかこうへいさんの劇団で演技経験を積まれた内田さんのお芝居は、さらに深みが増した気がします。内田さんの中で印象に残っているつかさんの言葉はありますか?

つかさんに「お芝居の間って、どうやって取るんですか?」って聞いたことがあるんですけど、「おまえ、何難しいこと考えてるんだよ! 年を取って、セリフを忘れれば間ができるんだよ!」と言われたんです。でもそれってつかさんの優しさで、「考えて演じるな」ってことだったんですよね。つかさんには、人間が五官を通して感じるものを大切に芝居するということを教えてもらいました。

Q:本作は、額子とヒデの間に生まれる愛の10年間を描いていますが、内田さんにとって現在までの10年間はいかがでしたか?

やっぱりめちゃくちゃ変わった時期ですね。芝居のことをこんなに好きになるなんて、10代や20代前半の自分にはあり得なかった。今は演じることがとっても大事なので、いろんな役柄をいただけたらと思いますね。

Q:最後に、これから内田さんが女優として目指す目標があれば教えてください。

共感できるキャラクターに惹(ひ)かれるので、「こんな人いるよね」「こんな思いすることあるよね」って観客の方に思っていただくことが、わたしの仕事かなって思います。一人でも多くの皆さんと思いを分かち合えるような女優として、仕事を続けていきたいです。


内田有紀

「とにかくお芝居が大好き」そんなストレートな思いが内田の言葉から伝わってくる。劇中シーンのどれを取り上げても、「そこはこんな気持ちで演じた」と丁寧な答えが返ってくる。どのセリフにも、あふれんばかりの彼女の思いが込められているのだ。役者にこれほど愛される役柄も幸せで、役者冥利(みょうり)に尽きる役に出会えた俳優もきっと幸せ。内田の愛情がたっぷりと注がれた、不器用で強がりだけど真っすぐな額子に、スクリーンで恋してもらいたい。

(C) 2010「ばかもの」製作委員会

映画『ばかもの』は全国公開中

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