『トゥルー・グリット』特集 『トゥルー・グリット』的ビフォー&アフター~匠の解説付き~
第83回アカデミー賞において10部門にノミネートされた『トゥルー・グリット』。監督のコーエン兄弟にとって新機軸となる作品。一見、シブイ作品に見えますが、実は製作総指揮はあのスティーヴン・スピルバーグ。そして監督・脚本はオスカー常連のコーエン兄弟! という映画を知り尽くした匠の腕前で、素晴らしい必見作品に仕上がっているのです。『トゥルー・グリッド』に散りばめられた「匠の技」をご紹介いたしましょう。
- 兄弟で制作・脚本・監督をこなす「匠」ユニット。独自のブラック・ユーモアとシャープな映像センスを兼ね備え、数々の傑作を生み出してきた。その卓越した腕前は広く認められ、アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞など数多くの賞に輝いている。本作の製作総指揮スティーヴン・スピルバーグとは初めての作品となる。
- ネット上のニュースなどで題名とコーエン兄弟の新作ということは知っていました。何となく地味な印象で「観に行こう!」とは思っていませんでした……。
- ジェフ・ブリッジスがとても良かったです。コーエン兄弟の控えめなキャラクターの演出に嫌味がなくて、素直に感動できました。地味だけど普通にカッコイイ愛すべき人たちの映画です。(女性・会社員・27歳)
- コーエン兄弟が好きなので作品は、ほぼ観ています。全体を通して、力強さの中に面白スパイスがある作品が大好きです。一番最近観たのは『ソーシャル・ネットワーク』。大変テンポが良く好きです。
- 味のある登場人物が本当にステキでした。復讐(ふくしゅう)映画と思いきや、おじさんと女の子の旅の話。『レオン』の2人みたいな関係で親子的な感じがほっこりしました。男性や、ちょっと年配の人にオススメたいです。(女性・美容師・34歳)
- もっと昔っぽい西部劇だと思っていました。普段はドラマの映画版やアクション映画を観るので、コーエン兄弟のことは知りませんでした。
- イメージしていた西部劇と違って、すっと映画に入り込めました。観やすくて、夜空のシーンが印象的でした。最後の方のジェフ・ブリッジスがかっこ良かったです。コーエン兄弟ファンじゃない人でも楽しめると思いました。(女性・デザイナー・24歳)
- 西部劇を観たことがないので、正直少し抵抗感がありました。男性向けの映画で、銃撃戦も多いのかもと。でも、女の子が主人公なので気になりました。コーエン兄弟の名前は知りませんでした。
- まさか最後に泣かされるなんて思っていなかったのでビックリ! 久しぶりに洋画もいいな~って感じました。主人公の女の子のキャラクターが魅力的。ストーリーもわかりやすくて、単なる復讐(ふくしゅう)劇ではなく、全体的に優しい、温かさに満ちた映画でした。(女性・会社員・31歳)
- 作品の根幹を担う少女マティにふんしたのは、これが映画デビューとなるヘイリー・スタインフェルド。テレビドラマやCMしか経験のない当時13歳の新人女優が、「匠」の演出力によって、たぐいまれなる存在感を放っています。アカデミー賞俳優ジェフ・ブリッジスやマット・デイモンを相手に、一歩も引かない堂々たる演技を見せているではありませんか。今年度アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたのも納得です。
- 一見すると「西部劇」にも見える本作ですが、「匠」の技によって実に深い「人間ドラマ」に仕上がっています。主演は連邦保安官ルースター・コグバーンを演じるジェフ・ブリッジスですが、物語の語り手にはあえて少女マティを据えたのです。これにより女性も容易に感情移入ができ、物語の中に入っていくことができます。「少女の復讐(ふくしゅう)」というシンプルかつ骨太なストーリー、彼女の成長は、すべての世代の観客の心を揺さぶります。
- リアリティーある舞台は、作品の世界観を表現するのに欠かせません。マティの父を殺した犯人チェイニー(ジョシュ・ブローリン)が逃げ込んだのは、アメリカ先住民の土地。この広大な大地を表現するために「匠」は、ニューメキシコ州とテキサス州で困難な野外撮影を敢行。開拓時代のアメリカ荒野が見事に再現されているではありませんか。荒野に吹く風や、満点の星空など、圧倒的な映像美で観客を別世界にいざなうのです。