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映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』織田裕二×柳葉敏郎 単独インタビュー

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映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』織田裕二×柳葉敏郎 単独インタビュー

今、こうして話せるのもファイナルだからこそ

取材・文:永野寿彦 写真:奥山智明

1997年に連続ドラマとしてスタートし、映画版では日本実写映画の興行収入1位の座に君臨してきた人気シリーズ「踊る大捜査線」。その完結編となる『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』が完成し、これまでドラマの核となる青島俊作と室井慎次の男同士の熱き友情と約束を演じ続けてきた二人、織田裕二柳葉敏郎の初のツーショットインタビューが実現。15年間続いた「踊る大捜査線」の思い出と、それぞれの役柄に対する熱き思いを語った。

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15年演じ続けてきた青島と室井の関係

織田裕二×柳葉敏郎

Q:お二人がツーショットでインタビューを受けるのは、今までなかったことです。

織田裕二(以下、織田):これが初めてですよね。

柳葉敏郎(以下、柳葉):初めて。いずれどこかであったら面白いなって、構えて待っていましたけど(笑)。逆に今までなかったのが、役を務める上では良かったかなと思いますね。

織田:柳葉さんもきっとそうだったと思うんですけど、僕と柳葉さんは現場ではずっと役の関係のままでいないといけない気がしていたんですよ。青島と室井は、ドラマの縦軸でしたから。

柳葉:僕も織田くんとして見ていないですからね。少なくともこの作品で一緒にいる時間は、織田くんではなく青島。だからその辺は、お互い口にしなくても、室井が青島を、青島が室井をしっかり感じながら現場は進んでいたと思いますね。

Q:その関係を15年間続けるのは大変ではなかったですか?

織田:柳葉さんが来られる日はスタッフの緊張感が違うんですよ。今は柳葉さんと言いましたけど、それは室井さんの日だからなんです。室井さんがそこにいる。「正しくないことをやったら斬(き)るぞ」みたいな緊張感を「おはようございます」の瞬間から持っていらっしゃる感じで。

柳葉:俺がとんでもないヤツみたいじゃないか(笑)。

織田:とんでもなくないですよ(笑)。僕にとっては当たり前の話だと思っているんです。柳葉さんが現場でいきなり監督に「ここが気になる」という話をする。すると現場に緊張感が走る。いい意味での緊張感。僕自身も青島側だけで考えていたら気付かなかったことに気付かされる。スタッフも想定していたものとは違う準備をしなければならない。それに瞬時に反応する。緊張感も含めて、本気でぶつかっているからこそ素晴らしいシーンが生まれると思っているんです。

柳葉:僕はテレビシリーズが始まったとき、あの湾岸署の、青島を中心としてみんなでにぎやかにやっているのが、もううらやましくて仕方なかったですよ。

織田:わかります(笑)。

柳葉:僕もあの中に入りたいって。でもセリフは「……」でしょ(笑)。

織田:むしろ非情な感じでしたもんね、最初の頃は特に。

柳葉:そう。僕はね、針のむしろの上に置かれているような心境で。でも、できるだけあの中に入らないようにして室井をやっていこうとそのときに思った。それが多少うまくいってくれたのかもしれないですね。

それぞれにとっての青島と室井の存在

織田裕二×柳葉敏郎

Q:お二人にとって長年演じ続けてこられた青島と室井は、どういう存在ですか?

柳葉:役者さんっていろんなパターンがあると思うんです。はっきり仕事は仕事、役柄は役柄と割り切っている人もいると思いますが、僕の場合、室井は人間として存在している。室井の言っている一言一言に耳を貸し、何も言わずに考え込んでいるときは何を思っているんだろうと感じながら、楽しんで演じてきた。だから室井は、僕から離れない親友のような存在なんです。

織田:僕の場合、もう忘れることは絶対にない存在ですね。生年月日を自分と同じにしているキャラクターでもあるし、無理をしないというか、役者自身が持っている個性をクローズアップして役に投入するというようなやり方をしてきたような気がするんですよ。すべての考え方が一致しているわけではないけれど、青島が言っていて、なるほどと思うところには強く気持ちが乗っかるし、納得できていないときは画面に出てしまう。うそをつけないというと変だし、役者としてどうなのかはわからないけど(笑)。でも、それでもいいかって思えるくらい、一人のキャラクターが自分というフィルターを通して具現化していく。

柳葉:わかるなあ。室井は、テレビシリーズの最後のところで、青島を中心とした湾岸署の人たちの影響を受けて、警視庁の大階段で笑みを浮かべるじゃないですか。あの気持ちは自分にもよくわかる。あの笑顔と共に生まれた正義感……それまでキャリアの管理官としてしか仕事をしてこなかった室井に、青島に協調する部分とか、新しいことを成し遂げようとする責任感が生まれた。あのシーンは、その後室井をやっていくことができた大きな礎となっています。

織田:僕も柳葉さんが演じられる室井さんだったからこそ、今の青島でいられたと思います。違う人がやってきたらもっと薄い関係になっていたかもしれないですね。

顔を合わせていることで改めて実感するファイナル

織田裕二×柳葉敏郎

Q:15年間を振り返って、お二人にとって思い出深いシーンはありますか?

柳葉:僕はもう基本的に二人の関係の象徴で、おそらく誰もが記憶に残っているところだと思うんですけど、やっぱり最終話の「あんたは上にいろ!」と青島が室井に言うシーンですね。そこには、「現場の人間が正しいと思えることができるように環境を作ってくれ」という思いがあった。普通、あれは言わないですよね? 上の人に向かって。でも、青島があれを言ったことで、室井のその後が明らかに変わった。僕が室井を好きなのは、成り上がりだからなんですよ。実際にはあり得ない東北大からのキャリア組で、成り上がりでここまで来て、とりあえずこのままいけるものならっていうときに、青島という男に出会って、この言葉を言われる。室井も本来同じ思いで出てきているはずだと僕はどこかで思っていて、その気持ちを思い出させてくれたとんでもないヤツなんですよ、青島って。

織田:東北大じゃなかったら聞いてくれなかったんですかね?

柳葉:そうかもしれません、本当に。二人の絡みのシーンの中で一番思い出深いのは、このシーンですね。

織田:僕はいっぱいあります。最初、青島と室井さんは、柏木雪乃を通しての出会いで。被害者家族がテーマになっていて。刑事として必要以上にプライベートまて突っ込んでいこうとする青島と、もっと事務的に対応しろ、そんなことしていたら身がもたないと主張する室井さん。でも、どこかで同じ気持ちを持っている室井さんがいる。あと、第4話。青島が警察手帳をたたきつけているんですよね? そんな警察だったらいらないって。でも、室井さんはその場では黙っていて、後から湾岸署に警察手帳をこっそり届けてくれる。青島が勢いで振り上げた拳をうまく収めてくれるんですよ。それから最終話。それまでは和久さんとバディーを組んでいたんですけど、この回で室井さんとバディーとなる。そのときの室井さんがいろんな表情を見せてくれて。困った顔でうその芝居をするんですよ。一人芝居なんですけど、この表情が好きで。この人はこの人で本庁の中で必死に戦っているんだなって。立場は違うけど、本庁の中の青島なんですよ、室井さんは。

柳葉:よく覚えてんなあ。昨日全部観てきただろ?(笑)

織田:実は(笑)。

柳葉:(笑)。こんなふうに二人で思い出話をする日が来るとは思わなかったですね。「踊る」がファイナルだからこそって気がします。


織田裕二×柳葉敏郎

織田と柳葉がツーショットで顔を合わせた現場には、インタビュー中にも語られたような“いい意味での緊張感”が漂っていた。それは、役に対して真剣に向き合ってきた二人だからこその緊張感だった。短い時間では話し足りなかったようで、写真撮影の間にくだけた会話もしていた二人。ポーズを注文するカメラマンに対して柳葉が「これきっついな(笑)」と口にすると、織田が「あぶデカ(「あぶない刑事」の略)みたいっすね(笑)」とツッコむ絶妙さ。そこには言葉を超えた青島と室井の関係が垣間見えた。

映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』は9月7日より全国公開

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