『体脂肪計タニタの社員食堂』優香 単独インタビュー
自分を変えてみると人生がより明るくなる
取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美
レシピ本が異例のベストセラーとなった健康計測機器メーカー「タニタ」の社員食堂にまつわる実話をベースに、肥満の社員たちがダイエットプロジェクトに挑む様子を描いたハートフルコメディー『体脂肪計タニタの社員食堂』。映画『デトロイト・メタル・シティ』の李闘士男監督がメガホンを取った本作で、社員食堂のヘルシーメニューを考案する栄養士のヒロイン・春野菜々子を、昨年水着写真集を発表し、話題を集めた優香が熱演! バツグンのプロポーションをキープしている彼女が、撮影秘話やプロポーション維持の極意を明かした。
デブ社員に活を入れる男前のヒロイン
Q:ヒロインの菜々子は、優香さんのイメージにピッタリの女性でしたね。
自分に近い部分がたくさんあったので、自然体で演じることができました。菜々子さんは栄養士の資格を取ったのに就職がうまくいかなくて、自分のやりたいことが見つからないという、誰もが共感できそうな女の子。やっと見つけた仕事先でおデブの社員たちのダイエットを応援するんですけど、皆を「頑張れ!」と励ましながら、実は自分自身にも「頑張れ!」と言うような、すごく一生懸命な人です。
Q:感情が高ぶると男っぽくなる菜々子ですが、そこも含めてご自身に近いと思ったんですか?
いや、菜々子さんのようにウワーッと怒鳴ったり叱ったりすることはないです(笑)。そこは自分とは違うので難しかったですね。李監督からもしゃべり方のテンポを上げて声のトーンを低くするように言われていました。ちょっと苦労した部分もありましたけど、映画の中でショートヘアにしていたこともあって、さっぱりとした男前な女性を演じられたような気がします。
Q:学生の頃はポッチャリ体形だった菜々子。過去の再現シーンの特殊メイクは、かなり時間がかかったそうですね?
顔と首と手の特殊メイクで4時間以上かかりました。最初はスタッフさんが気を使ってくださって、メイク中は横になっていていいと言ってくれたんです。朝も早かったから本当に爆睡しちゃったんですけど、寝ているとうまく人工皮膚が付かないんですよね。だから、次からはちゃんと座ってメイクをしてもらいました。4時間あったので、DVDで映画を2本も観ちゃいました(笑)。
Q:あの特殊メイク、結構重かったのではないですか?
すごく重かったです! しかも、下に引っ張られちゃうから顔が上を向いちゃうんです。そうしないとしゃべることができなくなるんですよ。特殊メイクでおデブの役をやっていた役者さんたち(浜野謙太・宮崎吐夢・小林きな子・草野イニ)が、映画の中でなんとなく上を向いているように見えるのは、あの重さのせいだと思います(笑)。
Q:確かに、皆さん上を向いていたような気が……(笑)。そんなデブたちの中心人物で、ダメ男の副社長を演じた浜野さんの演技がインパクト大でした。
ハマケンさんはすごくマジメな方です。シーンごとに監督から表情の指示があって、鏡を見ながら一生懸命練習をしていらっしゃいました。ミュージシャンでダンスもお上手だから、映画のあるシーンでダンスを披露されています。わたしの後ろで踊っていらっしゃったので撮影中は見られなかったんですけど、後で見てさすがだなと思いました。
撮影中に役者がガチでダイエットを実践!
Q:劇中でタニタ食堂のレシピが再現されているのも本作の見どころ。参考になるレシピはありましたか?
チキンのゴマサルサ定食ですね。お肉を調理するときって、おしょうゆなどの調味料をたくさん使っちゃいますけど、そうしなくてもおいしく食べられる調理法の一つなんです。油を使わずにオーブンで焼いたチキンにゴマをまぶすだけで香ばしくなって、何も付けなくてもいいくらいの味になるんですよね。皆さんにもおススメしたいです。
Q:自宅でも作ってみたくなりますよね。
そうですね。実際にタニタ食堂のレシピを考案した栄養士の荻野菜々子さんに聞いたら、「どのレシピも手が込んでいそうだけど、意外と楽ですよ」っておっしゃっていました。だし汁なんかも作り置きしちゃえば何にでも使えますしね。
Q:撮影中にダイエットを実践していた役者さんもいたそうですが……?
小林きな子ちゃんと草野イニさんは、役づくりのために本当に太って、そこからタニタの食事とジムでのトレーニングで体重を落としていったんです。二人とも1か月で12キロ以上痩せたので、撮影しながら体形が変わってきたことがわかりました。
Q:ドキュメンタリー要素もある作品なんですね!
本当にそうです! 二人もすごくマジメなタイプだから、周りが「ちゃんと痩せてきているよ」と言っても「まだ足りない」と思ってしまうみたいで、なかなか成果が出ないと悩んでいる時期があったみたいですね。運動量もすごかったんですよ! ほとんど家に帰らずに、撮影所とジムを行ったり来たりしていたそうで、本当に大変だったと思います。その頑張った姿を、ぜひ映画で観ていただきたいです。
優香が明かすプロポーション維持の極意とは?
Q:昨年、写真集とボディーブックを発表し話題を集めた優香さん。そのときの経験は本作で役立ちましたか?
役に立ったということよりも、自分の実践した方法が間違っていなかったことを実感しました。食事は3食取らないとダメだとか、炭水化物より野菜から食べた方がいいとか……。わたしも食事を抜かずにきちんと食べて運動することを実践していたので、それで良かったんだと改めて確認できました。
Q:ダイエットを通じて、心境的に変わったこともあったのでは?
自分のことが好きになれる経験でした。写真集の撮影日までに「これだけやる」という目標があったんですけど、それをやり遂げて宝物だと思える写真集ができたときに、すごく自信が付いたんです。体形でコンプレックスを感じていた部分も、体を絞っていくうちに好きになれました。自信が付くというのは自分を好きになることだから、仕事や日常生活にもプラスになりましたね。
Q:菜々子のダイエットの極意は、「さぼって自分をキライにならないこと」でしたが、優香さんの場合は?
わたしの場合は「楽しむこと」ですね。運動の仕方も食事の内容も自分で決めてやったので、あまりストレスを感じることがなかったし、ちょっと痩せだすと楽しくなるんですよ。逆に、他人に言われたままにやるのはしんどいと思います。わたしは運動が好きじゃなかったんですけど、それは運動の効果がわからずにやっていたから。その運動がどこの筋肉に効くのか、ちゃんと把握してやると楽しくなるんです。要は、自分で決めて楽しくやらないと何も続かないんですよね。
Q:では、ダイエットに興味がある方に簡単なアドバイスをお願いします。
とにかく腹筋に力を入れることと、肩甲骨を柔らかくするということが一番ですね。これを言うと、皆が肩を回しだすんです(笑)。それだけ、普段は肩に力が入っているんですよ。
Q:そんな優香さんは、タニタのレシピ本が映画になるほど注目された理由をどう考えますか?
まずは、レシピ本を自由に映画化させてくださったくらい、タニタという会社が柔軟で面白いということがあると思います。あと、世の中の人は自分の何かを変えたいんですよ。一番身近で変わりやすいのが体形だったりするから、ダイエットに関心を持つんじゃないかな。この映画も「太っていることは悪ではない」と描いていて、「必死にダイエットしましょう」というより、「人生をより明るくするための手段として、自分を変えてみるのはどうですか?」という感じなんです。映画を観て、新しいことに踏み出してみようかなと思ってもらえたらうれしいです。
まるで全身からポジティブパワーがあふれているかのようにチャーミングな優香。屈託のない笑顔を見ていると、こちらも元気になったような気がしてくる。そんな彼女ふんする菜々子が必死で考えるヘルシーメニューは、栄養バランスもシズル感も申し分のないものばかりで、一見の価値があるはず。社会現象にもなったタニタ食堂のレシピ本を、大胆な発想で映画化した本作。優香のセクシーなダンスシーンもお見逃しなく!
ヘアメイク:菊地美香子(トロンマネージメント)
スタイリスト:宇賀愛
映画『体脂肪計タニタの社員食堂』は5月25日より全国公開