『ルパン三世vs名探偵コナン』内野聖陽、夏菜、モンキー・パンチ、青山剛昌 単独インタビュー
原作者も影響されるアニメの力
取材・文:永野寿彦 撮影:奥山智明
2009年、アニメーション史上に名を残す二大キャラクターの競演を実現させたテレビスペシャル「ルパン三世vs名探偵コナン」。“今夜限り”と銘打たれていた夢の対決が、両雄の決着をつけるべく映画となってスケールアップ。「ルパン三世」の原作者であるモンキー・パンチと「名探偵コナン」の原作者である青山剛昌、そしてゲスト声優を務めた内野聖陽と夏菜が作品への思いとその魅力を語った。
世代を超えて愛されるキャラクター
Q:再びルパンとコナンの夢の競演が実現しましたね。
モンキー・パンチ:オープニングから前作以上にやったなって感じでしたね。ストーリーも素晴らしくて最後まで楽しみました。
青山剛昌:監督やスタッフには申し訳ないなとは思いつつ、かなり口を出させていただきました(笑)。特にルパンをカッコよく見せたかったので。ルパンのファンですから。
内野聖陽:そんな作品に参加させていただいて光栄です。テレビで「ルパン」を楽しんでいた少年が、まさか大人になってからルパンと共演できるとは。
夏菜:ホント、夢みたいですよね。小さい頃から観ていた作品ですから、うれしくてニヤニヤが止まらなかった。コナンくんや蘭ちゃんとしゃべったなんて、今でも信じられません(笑)。
内野聖陽:こんなチャンスは逃せないですよ。ルパンは永遠に若いままですが、わたしは年を取ってしまいますから。
青山剛昌:確かにそうですよね。原作者だけ年を取っていく……(笑)。ファンレターでも「小学生のときから観ていて今は1児の母です」とかあります。
夏菜:アニメはわたしが小学1年生の頃から始まっていますからね。毎週欠かさず観ていて、「コナン」が放送された翌日には友達と犯人当てゲームとかしていましたよ。そんなコナンくんは今でも小学生(笑)。
青山剛昌:永遠の小学生ですから(笑)。
内野聖陽:ちなみにルパンは何歳なんですか?
モンキー・パンチ:よく聞かれるんですけど、年齢や生活環境は一切決めていないんですよ。決めちゃうとキャラクターの幅が狭くなってしまう気がして。観る人に想像してもらえばいい。そういう作り方をしているんです。
悪党の魅力VS上質なミステリー
Q:本作には両作の魅力がバランス良く詰め込まれていますよね。
モンキー・パンチ:本当にうまく組み合わせているなと思います。
青山剛昌:脚本からチェックさせていただきましたね。「ルパン」のこともファンとしてよく知っているし、「コナン」は原作者ですから(笑)。
モンキー・パンチ:ところで前から思っていたんだけど、あれだけ毎回トリックを考えるのは大変じゃない?
夏菜:そうですよね。どれだけ出てくるんですかという感じで。頭の中をのぞいてみたいくらいです。
青山剛昌:ミステリー小説を読んだりするのはもちろんなんですが、テレビドラマにも刺激を受けていますね。内野さんの「臨場」とかも、僕が考えるものとは違うなあとか言いながら観ていますよ。
内野聖陽:ドラマにも影響を受けたりするんですか?
青山剛昌:あくまでも参考ですけど。そこから受けた刺激をヒントにして、ひねりまくって作っていますよ。大変です(笑)。
モンキー・パンチ:アイデア豊富だよね。僕もミステリー小説は好きで結構読むんですけど、それを漫画にするというのはなかなか難しいです。
夏菜:登場人物も魅力的ですよね。女の子が好きそうな理想の男の子がいっぱいいる。
青山剛昌:「臨場」で内野さんが演じた倉石をイメージしたキャラクターも描いたことあるんですよ。1回しか出てきていないですけど、72巻に検視官役で。
内野聖陽:それはぜひ探したいですね。誰にも言わないでこっそり教えてください(笑)。
青山剛昌:こうして実際に会うと、倉石よりも若く見えますね。
内野聖陽:あれは演技で年食っているんですよ。ああいう役は男ウケがいい。捜査員に反発する感じがちょっとワルっぽくて。ルパンもそうですよね。悪党なのに憎めないし、カッコいい。
モンキー・パンチ:ピカレスクロマンですね。現実にはできないですから、あんな悪いこと。
青山剛昌:ルパンといえば泥棒の代名詞。僕も怪盗キッドというキャラクターを描いていますけど、ルパンがお手本ですよ。
モンキー・パンチ:漫画ならいくらでもできますから、悪党ならではの魅力は絶えず意識して描いていましたね。
声優の演技に影響される原作
Q:内野さんと夏菜さんは実際に演じられてみていかがでした?
内野聖陽:アテレコに慣れてないわたしには大変でしたね。何度もリテイクさせていただきましたよ(笑)。謎めいたアラン・スミシーという男を演じたんですが、監督からなるべく抑揚や色を付けないでほしいと言われて。何を考えているのかわからないキャラクターを意識してやりましたね。
夏菜:わたしが演じたクラウディアは26歳の設定だったんですけど、24歳のわたしから見るとどう考えても35歳ぐらいの精神年齢で。すごく大人で、母性を含んだ愛情や冷静に判断できる能力も持っている。その上で、何か大きな物を背負っている。そんな哀愁漂う女性を演じるのは、なかなか難しかったですね。
青山剛昌:お二人とも素晴らしかったですよ。
モンキー・パンチ:意外と声の影響って大きいんですよ。声優さんのクセとかが漫画にも出てくるんです。
夏菜:そうなんですか!?
青山剛昌:キャラクターがその口調になっちゃうんですよ。
モンキー・パンチ:初代ルパンを演じた山田康雄さんはアドリブでギャグを言うんですよ。「あらららららら」とか。もともと原作にはないんですが、それに影響されて入れてしまう(笑)。今はクリカン(栗田貫一)さんの声が頭の中で聞こえています。
青山剛昌:僕の方もコナンが「あれれ」って言うじゃないですか。アニメで観たとき、そのセリフを言う(コナン役の)高山みなみさんの声がすごくかわいかったので、それから多用しちゃっていますね。
夏菜:そういう形で逆にもらうこともあるんですね。
青山剛昌:実はコナンの服もそう。最初は赤いジャケットや緑のジャケットを着ていたんですけど、アニメで青のジャケットに赤い蝶ネクタイと決まったので、それからそれに合わせるようになりました。その方が楽だなと思って。
全員:(笑)。
モンキー・パンチ:ルパンも当時は印刷の関係で2色しか使えなくて、着せるものは黒か赤にするしかなかった。それなら目立つ方ということで赤になったんです。
内野聖陽:当時の技術的な制約の中から生まれたんですね。
青山剛昌:アニメの力は大きいですよ。
インタビューが始まると、もはやインタビュアーは必要ではないくらいに、モンキー・パンチ、青山剛昌に質問を浴びせる内野聖陽と夏菜の二人。小さい頃からファンとして観てきた作品の生みの親である二人と話すのが楽しくて仕方ないといった感じだった。それもこれも「ルパン三世」と「名探偵コナン」という、共に長く愛され続けてきたキャラクターの、まさに奇跡の競演が実現した作品だからこそ。そんな楽しさをぜひ劇場で味わってほしい。
映画『ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE』は12月7日より全国公開