『トリック劇場版 ラストステージ』仲間由紀恵&阿部寛 単独インタビュー
本当にラストにふさわしい作品
取材・文:大小田真 撮影:高野広美
2000年7月にテレビドラマとして産声を上げた『トリック』が約14年間続いたシリーズの幕を閉じる。自称天才美人マジシャン・山田奈緒子と天才物理学者・上田次郎が、さまざまな事件の裏側に隠されたトリックの謎を解き明かす同シリーズ。二人は他に類を見ない独特のコンビネーションでファンを魅了し続けてきた。『ラストステージ』と銘打たれた最新作を撮り終えた今、仲間由紀恵と阿部寛がシリーズを振り返る。
あっという間に過ぎた14年間
Q:いよいよ“ラスト”ですが、今の率直な心境は?
阿部寛(以下、阿部):やはり感慨深いですよ。もちろん、この14年間は『トリック』以外にも多くの作品に参加させていただきましたが、これだけ続くシリーズはなかなかありませんからね。思いはひとしおです。
仲間由紀恵(以下、仲間):こんなに長く続くなんて、誰も想像していなかったでしょうね。謎解きというシンプルな物語でありながら、一つ一つの作品にいろいろな要素が詰まっている点が、長く愛していただけた理由なんじゃないかな。そういう意味では今回の『ラストステージ』は本当にラストにふさわしい形になっています。小ネタが多い作品ですけど、それがギュギュッと凝縮されています。
阿部:仲間さんはいつも実にうまく説明をしてくださるので助かります(笑)。何年かごとにテレビや映画の『トリック』でご一緒してきましたが、その間にいろいろな作品に出られていましたよね。陰ながら応援させていただいていましたが、着実にステキな女優さんになられているなという思いで拝見していました。
仲間:とんでもないです! ありがとうございます。阿部さんとこの作品で一番初めにご一緒させていただいたとき、わたしは本当に“ど新人”でした。ですから、先輩からいろいろ学ばせていただこうという気持ちで現場入りしたことを覚えています。
仲間&阿部が選ぶベストエピソード
Q:お二人にとって特に印象に残っているエピソードはどれでしょうか?
仲間:ドラマシリーズ第3弾の「絶対死なない老人ホーム」は忘れられません。たくさんのお年寄りが死なない、死んでもよみがえるという設定はテーマとして深かったですし、そのトリックも衝撃的でした。老人ホームやそこに集うお年寄りの方々はものすごく平和な雰囲気でしたが、その実態はかなり怖いという展開で……。ゲスト出演された高嶋政伸さんが、本気で怖い人を演じてくださいました(笑)。それから、この回は撮影時間がかなり長かったです。そういう意味でも忘れられないエピソードです。
阿部:確かにあのときの撮影は長かった(笑)。スタッフのこだわりがすごかったんですよ。僕の中で最も印象に残っているエピソードは、テレビシリーズ第1弾のラストを飾った「黒門島」です。クライマックスということもありましたし、もう終わっちゃうんだなという思いもあって感慨に浸っていました。そして何より、堤(幸彦)さんの演出に驚きましたね。ラストは山田と上田の二人が、一定時間だけ海上に現れる小さな島に取り残されるんです。二人のお決まりのやり取りをバックにエンディングロールが流れるんですけど、そこに主題歌を担当する鬼束ちひろさんが現れて歌いだすという映像でした。いかにも最終回というスペシャル感のある演出で、これを実写でやっちゃうのがすごいなと思いました。
仲間:そうでしたね。「黒門島」の回は、奈緒子の出生の秘密に関わるストーリーということもあって、わたしも深く印象に残っています。みんなで宮古島に行って撮影したのもいい思い出です。
山田奈緒子&上田次郎からラストメッセージ!?
Q:マレーシアでの撮影で何かハプニングはありましたか?
仲間:一番感じたのは、日本との気候の違いですね。本当に暑かったです。寒いよりはいいですけど(笑)。
阿部:同感です。あと、川にワニが出たという事件がありましたね。
仲間:そうなんですよ! 残念ながら、見ることはできませんでしたが。
阿部:僕も見られなかったんです。ワニを見たスタッフの話では、川面にスッと浮かび上がって、スッと消えたんだとか……。
仲間:そんなスペシャルな場面を見逃したわたしたちにとっては、やはり暑かったというのがマレーシアロケでの一番の思い出です。念願の海外ロケだというのに……。基本的に『トリック』はシリーズを通して山奥や洞窟、森、崖でのロケばかりでしたから、そういう意味では今回も同じでしたよ(笑)。
阿部:でも、山田としてはその洞窟で大きな見せ場がありますよね。ネタバレになっちゃうからあまり詳しくは言えませんが、かなりカッコいいでしょ。
仲間:確かにそうですね。その場面も含めて、山田奈緒子なら今回の活躍についてこう言うんじゃないかな。「結局、またわたしが全部の謎を解き明かしてやった。わたしの雄姿を見ろ!」って(笑)。
阿部:天才上田なら「まあ、それもこれも全部、わたしの手柄によるものなんですがね。詳しくは新作著書に書きますので、ぜひご購読ください」と返すでしょうね(笑)。
落ち着いた雰囲気の中で、時折ちゃめっけを見せながら取材に応じた仲間&阿部。そのコンビネーションが見られなくなるのは残念だが、感慨深げにこれまでの歩みを振り返る二人の姿からは、「やり残したことはない」という思いが伝わってきた。「もし本当にこれが最後だとしても、それにふさわしい一本です」と二人が声をそろえる今作をしっかりと見届け、きっと何かやってくれるであろう堤幸彦監督の遊び心に期待したい。
(C) 2014「トリック劇場版 ラストステージ」製作委員会
映画『トリック劇場版 ラストステージ』は1月11日より全国公開