純度100%のカップルが紡ぐ10代の刹那に胸キュン!わたし、俺たちの『ホットロード』
紡木たくの名作青春漫画を、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」でブレイクした能年玲奈と、三代目J Soul Brothersのボーカル、登坂広臣をキャストに迎え満を持して実写映画化! 恋人のいる母親との確執に苦悩する14歳の少女・和希と、不良チームのリーダー候補の少年・春山のピュアな恋、成長をつづった本作の出来栄えはいかに……? 原作フリークの編集者から「ホットロード」初体験のライターまで、さまざまな角度から魅力を語る座談会を実施しました!
座談会メンバー
司会:シネマトゥデイ編集部
原作フリークの30代女性編集者・M
元ヤン30代映画関係者・D
「ホットロード」初体験40代男性ライター・H
美女・イケメン好き40代女性ライター・0
司会:ヒロイン、和希役の能年さんの演技はいかがでしたか。「あまちゃん」からのイメチェンぶりは?
O:髪型から線の細さから、フワフワっとしていて今にも消えちゃいそうなところとか、わたしは和希にピッタリだと思った。春山が「アイツ、中身がすげーきれいなんだもん」って言っていますけど、能年さんにはまさにそんな雰囲気があって。でも、ヤンキーというよりは、不良を好きになっちゃった純情な少女という感じが近いかも。
M:能年ちゃんって、目がすごくきれいですよね。和希のいいところって、相手が誰であっても臆したりこびを売ったりすることがなくて、春山にも「うるせーんだよ!」って向かっていける、真っすぐな部分。ホントはビビッていても、強く見せようとするところがかっこいいんですよね。そういうところに、よく合っていると思いました。あと、『陽だまりの彼女』のときもそうだったんですけど、三木孝浩監督は光をうまく使って女優さんをきれいに撮る方ですよね。
司会:春山にふんした登坂くんはいかがでしたか。彼は三代目J Soul Brothersのボーカルで、若い子の間で人気沸騰ですよね。
O:春山の乱闘シーンとか、バイクに乗るシーンを観て思ったんですけど、登坂さんは身体能力が高いですよね。
M:原作ファンからすると春山のイメージは高校1年生ぐらいで、精いっぱいツッパッているっていう感じだったので登坂くんだとお兄ちゃん過ぎるかなという感はあったんですけど、かっこいいし、男っぽいし、同年代の子は憧れるんじゃないですかね。「雄度100%」って感じで! 特攻服もよく似合っていました。
司会:そもそも『クローズZERO』や『ROOKIES -卒業-』など、不良映画がヒットすることが多々ありますが、その人気はどういったことによるものなのでしょうか?
M:怖いモノ見たさというか、不良が面白い人たちに見えるのかな。
D:あと、見た目おっかなそうなのに友達思いだったりアツいところがイイんじゃないですか?
M:最近の若い子からしてみれば、周りが草食系男子ばかりだから春山みたいな獣っぽい男の子はかっこいいって思うんじゃないですかね。鉄パイプ持ってケンカに行ったりだとか、「俺の女になれよ」って強引にアプローチしたりする、いかにも男っぽいキャラクターは希少価値に感じるのかなと。特に、春山が敵の武闘派グループの漠統に単身乗り込んでいくところ。木刀を持った手を包帯でぐるぐる巻きにして、死んでも木刀を離さないという死をも辞さない覚悟! あのシーンだけ切り取ってもかっこいいと思うんじゃないかな。
D:あそこは登坂くんファンが萌えるところでしょうね。
M:大体、最近の若い子はケンカなんてしないでしょ。集団とタイマンでケンカするような感覚は理解できない気がする。ヒーローものを見るような感覚になるのかな。
O:今「マイルドヤンキー」の時代っていわれていますけど、またちょっとブームが来ている感がありますよね。
M:ただ、例えば『クローズ~』に出てくる人たちって、ウォレットチェーンを付けていたり全体的にオシャレなんですよね。
O:映画に登場するヤンキーは、ヤンキーのかっこいい部分だけを強調、抽出している感じなのかな?
D:わたしたち世代の不良は、どちらかというと漠統の人たちの方がイメージに近いですよね。映画だけでなく原作もそうですが、(春山が属する)Nightsは不良というよりは走り屋に近いかもしれない。ただバイクが好きで、みんなで走っているだけという。一方、漠統の場合はケンカ一本でのし上がってきたという感じなので。
H:一番ガツンときたのは和希の母親(木村佳乃)の恋人(小澤征悦)が言う「10代には止められない瞬間がある」というセリフ。映画ではそこを一番重視しているんじゃないかと思った。恋愛にハマる、暴走にハマるとか、昔は中二病っていう言葉はありませんでしたけど、いわば熱病みたいなものですよね。もやしっ子でもワルでも、何かに夢中になる時期があるっていうのはわかりますよね。その10代ならではの刹那がこの映画のテーマなのかなと思うし、そのあたりを原作からきちんとすくい取っている。
D:そう、原作だと14歳から16歳にかけての、長いのか短いのかわからないけど、その時期に人のことを考えて、愛して成長していく過程を描きたかったんだと思うんですよね。
M:だから冒頭の「あの頃のあなたたちに会いたい」っていう言葉が、映画を見終えてみると響いてきますよね。わたしは原作の中でも大好きだったんですけど、和希が春山に薬を口移しで飲ませるシーン! ファーストキスって、まさにこんな感じみたいな。女好きの春山が、和希には手を出せなくて、キスまでのディスタンスが超長いの。その感じがうらやましい。
O:わたしは原作で春山が和希のママに「こいつのこと嫌いなら俺がもらってっちゃうよ」って言うシーンが好きで、映画ではどうなっているんだろうと楽しみだったからちゃんと盛り込まれていてうれしかったです。そのシーンを観たことに対する達成感があったというか。
M:思春期に性を自覚し始めるときって、親の性に対しても神経質になるじゃないですか。和希はお父さんがいなくて母親が自分に無関心、春山は母親が継母で微妙な距離があったり、そういう二人の根底にあるコンプレックスというか悲しみみたいなものが、きちんと描かれていると思いました。
D:わたしは春山が和希のほっぺたをむにゅっとつかむところなんか好きですね。今だったら「気持ち悪いからやめてよっ」ってなると思うけど、当時はこういうふうにじゃれ合っていたなと思って。
M:じゃれ合いといえば、一つの焼きそばを二人で分け合うところも良かったですね~。「ちょっと食べ過ぎだよ~」とかいって、本当にザッツ10代な感じ(笑)。あと、春山が仲間のバイクの後ろに乗って夜空を見上げてほほ笑んでいるシーンで泣きそうになりました。こういう瞬間って二度と来ないんだろうなっていうはかない感じ。ケンカからも親からも、全ての呪縛から解き放たれているというか。自分にも10代のときにこういう瞬間があったなと思うと切なくなって。文化祭で川辺でみんなでしゃべったこととか、夏の空気の匂いだったり、そういうのっていくつになっても絶対忘れないものですよね。
O:テールランプが消えていく切なさみたいな、ちょっとした刹那的な描写がうまかったと思う。
H:ラストで「OH MY LITTLE GIRL」が流れたときはグッとくるものがありましたね。正直、尾崎豊って最初ピンとこなかったけど、なんてステキな歌なんだろうと(笑)。これは本当に説明がつかないんですけど。劇中に流れるんじゃなくて、最後に流れることに意味があるんだと思います。
司会:「ホットロード」の世界観が集約されているようなところがあるんですかね。
O:尾崎のバックにある「おまえのためなら死ねる」的な世界観が、作品にうまくハマっているのかな。
M:尾崎は不朽の10代ソングなんです!
© 2014「ホットロード」製作委員会© 紡木たく/集英社