『るろうに剣心 伝説の最期編』佐藤健&藤原竜也&伊勢谷友介 単独インタビュー
剣心はこの作品で本気になる
取材・文:編集部・森田真帆 写真:高野広美
和月伸宏の人気コミックを映画化し、世界でも好評を博して「るろ剣」ブームを巻き起こした前作に続き、オリジナルの人気エピソードである「京都編」を2部作で実写化したアクション大作の後編『るろうに剣心 伝説の最期編』。3作品を通して人斬り抜刀斎こと緋村剣心を演じた佐藤健、剣心の強敵となる志々雄を演じる藤原竜也、蒼紫役の伊勢谷友介と、本作で華々しく「伝説の最期」を飾った男たちが集結。映画の裏側に隠された、壮絶な撮影を振り返った。
悲しい運命を背負った男たちに、全員が共感!
Q:全員が悲しい過去を持った男たちです。それぞれの役柄とどのように向き合って演じられましたか?
佐藤健(以下、佐藤):登場人物全員が、悲しくて壮絶な過去を持った悲しい人たちなんですよね。それは志々雄であっても、蒼紫であっても、全員が悲しい。剣心はそんな人たちを、どこかで救いたいという気持ちを持っているんです。アクションももちろん大事ですが、戦う最中に剣心が相手に向かって放つ言葉を大切に演じました。映画を観ていただく方には、剣心が、蒼紫や志々雄にどんな言葉を掛けるんだろうというところも観てもらいたいですね。
藤原竜也(以下、藤原):政府のために命を懸けて突っ走っていた志々雄は、そこで自己確認と言いますか、存在証明ができていたのだと思うんです。でもそこで大きな裏切りに遭ってしまった。それでも、その熱い思いを持ってはい上がった志々雄の姿というのは、時代が変わっても共通するものがあると思えたんです。だからセリフや立ち回りで、共感できるところは意外に多くありましたね。「ここはきっと悔しいんだろうな」とか、すごく考えましたね。絶対悪として、ひとくくりにはできないという思いはありました。
伊勢谷友介(以下、伊勢谷):幕末で必要とされなくなってしまった人たちと、それを処分する人たちという見え方だったんですよね。でもそれぞれの中には、エゴがあって。蒼紫は、裏切られたという思いから抜け出せずに、間違った思いを誰かにぶつけてしまっていた。だけど、剣心も志々雄も、蒼紫も、結局は時代に引きずられてしまった男たちなんです。
Q:全員の役柄に、相手役の女性ヒロインがいたのも印象的でしたね。
藤原:由美役の高橋(メアリージュン)さんは美しくて妖艶で、隣にいてくれてとても頼もしかったですね。
佐藤:そんなこと言っても志々雄さんなんて、最後めちゃくちゃ悪い男じゃないですか? 言えないけど!
藤原:でも俺、薫ちゃんが一番悪い子なんじゃないかと思うんだよね! こないだ(笑福亭)鶴瓶師匠にあったら、この映画を観てくれていて「武井咲ちゃん大好きなんだけど、薫ちゃんの行動がトラブルを招いてるんやないか!」って言ってた(笑)。
佐藤:やっぱり、剣心は大切な人のことを守りたいという気持ちで動いていますからね。でも薫ちゃんのそういうところもいとおしいんだと思います!
伊勢谷:俺は、(土屋)太鳳ちゃんのキャラクターがものすごく純粋で、蒼紫が大きな間違いを犯したときに掛けてくれた言葉がとても胸に響いて……。好きになっちゃいそうでしたね(笑)。結局は、女性たちも全員、男たちの人生に引きずられて悲しいんですよね。
壮絶すぎるラストシーンの撮影を振り返る!
Q:ラストの全員での殺陣のシーンは本当にすごかったですね! 壮絶でした!
伊勢谷:殺陣の負担が4分の1になったぜ! って喜んだよね!
佐藤:手数、減ったぜ! って思いましたよね(笑)。その代わり、志々雄さんは、4倍動かなきゃいけないから大変でしたよね。
藤原:僕、4対1で、佐藤健、伊勢谷友介、江口洋介、青木崇高と戦うわけで、そのときにすっごい思ったことがあるんですよ。「これはめんどくさいな!」って。けがをしてもいけないし、させてもいけないし、大変だこりゃってめちゃめちゃ思いました。
伊勢谷:でも僕らはそんな竜也くんの気持ちをまったく考えずに斬り掛かっていくという(笑)。でも竜也くん、皮膚呼吸できない状態で4倍動かなきゃいけなかったから大変だよね。ざまあみろ!(一同笑)
藤原:そうなんですよ。セットに一度入ったら、絶対に包帯を顔から取ることはできないので苦しかったです。いま振り返ると本当に大変でしたが、貴重な経験をさせていただいたなって思っています。
佐藤:でもアクションチームの方々が、役者それぞれの個性に合わせて殺陣を作り上げてくださるので、とても助かりました。そのおかげで、剣心の気持ちを保ったまま殺陣に臨むことができたと思っています。
つらい撮影を支えたのは、続編を待ちわびるファンの存在
Q:殺陣のシーンも、すごい長回しでしたね。あれだけの長回しは本当に大変だったと思いますが思わず弱音が漏れたりはしなかったですか?
佐藤:ほんと死んじゃいますよ。大変そうだなって多分思うじゃないですか。大変なんです!
伊勢谷:頭がパンクしそうになったよね。暑かったこともあるし、頭の中であーだこーだ考えているんだけど体がついてこないから。何が何だかわけがわからなくなっちゃう。
佐藤:もう弱音も吐きまくりでしたよ。
伊勢谷:そう? 周りからは、すごくひょうひょうとやっているように見えていたよ。
佐藤:本当ですか!? もしかしたら、弱音を吐く気力すらなくなっていたかもしれません。弱音を吐くくらいならば、呼吸したかったくらいでしたね(笑)。
伊勢谷:健くんが立派なのは、そこまで大変なときでも現場を離れずに、ずっと殺陣の練習を続けているんですよ。それに自分から「ここをこうしたほうがいいんじゃないか?」というアイデアもくれる。俺なんて前編だけでもヒイヒイ言っていたのに。志々雄さんなんて、現場入ってきた時点で、ヒイヒイ言っていたもんね(笑)。
藤原:朝起きたときはすごい元気なんですよ。でもあの衣装を着て、現場に入ると、「帰りてえ……」ってなっちゃう(笑)。
Q:それだけ大変な思いをされて作った本作を、皆さん待ちわびていると思います!
伊勢谷:だって、あのラストからでしょ! 「え、何!? 龍馬!?」って言っている人多そう(笑)。でも、アクションは本当にすごいですよ。僕も、胸を張って「観てください」って言える作品になっているので、多くの人に観てほしいですね。
藤原:そうですよね! でも、やはり大変な思いをした分、たくさんの方々にこの映画を観ていただければ初めて自分たちの苦労が報われるのではないかなって思っています。
佐藤:とてもありがたいです。撮影しているときも、この作品を楽しみに待っていてくれている人たちがいたと思えば頑張れたし、その方たちに早く出来上がった作品を届けたいです。この作品は「京都大火編」と合わせて一本の作品だと思っているので、この作品まで観ていただかないと話にならない。アクションに関して言うと、剣心はこの作品で本気になるんです。だから、絶対に観てもらいたいんですよね。ラストシーンも、きっと観たことがないものになっていると思います。
それぞれの世代を代表する3人の俳優たち以外にも、江口洋介や、神木隆之介、田中泯ら、さまざまな世代の俳優たちが名を連ねている本作。田中と対峙(たいじ)するアクションシーンを撮影した伊勢谷が「本当にすごすぎた! 圧倒されました」と話すように、それぞれの世代から刺激を受けながら役者たちが生き生きと暴れ回っている。一回りも二回りも成長し、CGかと見まがうほどのスピーディーな殺陣で観客を魅了する佐藤は、映画界をけん引する役者たちと共に時代劇の歴史に新たな「伝説」を作り上げた。
映画『るろうに剣心 京都大火編』は公開中、映画『るろうに剣心 伝説の最期編』は9月13日より全国公開