第2回:ジェシカ・チャステイン
『インターステラー』リレーインタビュー
クリストファー・ノーラン監督が『ダークナイト』シリーズ完結後、初めて手掛けたSF映画『インターステラー』が11月22日に公開される。本作については世界的な飢饉(ききん)に陥った近未来を舞台に、居住可能な新たな惑星を探すため、まだ幼い子供を持つ元エンジニアの男(マシュー・マコノヒー)と数少ないクルー(アン・ハサウェイ)が壮大な宇宙の旅に出るさまを描いた作品……ということぐらいしか明かされていないが、シネマトゥデイでは一足早くマシュー、アン、ジェシカ・チャステインという豪華キャストとノーラン監督の妻にしてプロデューサーのエマ・トーマスを直撃! ノーラン監督最新作の秘密を、リレーインタビュー形式で4回にわたってお届けします。(取材・文・構成:編集部・市川遥)
第2回 ジェシカ・チャステイン
ジュリアード学院の演劇部門で学び、舞台を中心に活動。アル・パチーノと共演した舞台「サロメ」の成功で注目を浴び、2008年に『ジョリーン(原題) / Jolene』で映画デビュー。その後、ブラッド・ピットと共演した『ツリー・オブ・ライフ』(テレンス・マリック監督、2011)はカンヌ国際映画祭でパルムドールに輝き、『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』(2011)と『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)で2年連続となるアカデミー賞ノミネートを果たすなど、瞬く間にハリウッドのアイコンの一人になった。
Q:『インターステラー』の脚本を読んでどう思いましたか?
とても気に入ったわ。初めて脚本を読んだとき、あまりにエモーショナルで本当に驚いたの。宇宙についてのSF映画だと知っていたけど、家族ドラマとして読んでとても感動したし、わたしが演じるキャラクターを大好きになったわ。彼女はとても悲しげでわたしも悲しくなったけど、とても感激させられたし、素晴らしくて……あまり話せないんだけど、わたしは彼女のことをとても尊敬しているわ。わたしたち(ジェシカ、マシュー、アン)が演じるキャラクターはみんな喪失感を抱いている。それをこの映画の中で解決しようとしているの。
Q:何の役なんでしょう? あまり話せないことはわかっていますが……。
フフ(笑)。わたしは食糧危機に取り組む科学者を演じているの。
Q:どんな役づくりをしたのですか?
科学者の頭脳は持っていないから、たくさんの公式を覚えなくちゃいけなかった。黒板に公式を書くシーンがあったから、全てを記憶しないといけなかったの。今はもう言えないわ(笑)。あと、この映画は未来が舞台だから、未来がどんなものかについては自由に考えられる余地があった。わたしが登場する最初のシーンの前に何が起きたのか、過去30年間に何が起きたのかという背景を創造したわ。
Q:クリストファー・ノーラン監督作は初めてですね。
クリストファー・ノーランは本当にいい先生だったわ。大作であるのはわかっているけど、インディペンデント映画のようなの。彼は役者たちと共に居て、アンサンブルの一部なのよ。彼がセットで座っているところは全く見なかったと思うわ。大抵(撮影現場には)ディレクターチェアとモニターがあるの。でも、彼はいつも立っていて、役者たちと一緒に居るの。とてもエキサイティングだったわ。『インターステラー』はわたしが関わった中で最も大きな規模の映画だから、驚いたわ。
予想していたのは、一人で残されることになるんだろうなということ。普通は大作の撮影だとほとんどトレーラーの中で座っていて、たまにセットに行き、演技について話すこともないものだから。だから、本作の撮影がインディペンデント映画のように行われたのは、うれしい驚きだった。あるシーンをやるのに丸一日かかったりしないの。3テイクだけだったりするのよ。それに彼がくれた演技についてのノートは本当に素晴らしかった。ただ“関わること”を目的に現場に来て話をして回る監督もいるけど、クリス(ノーラン監督)はとても正確だったわ。時々、いくつかの言葉を口にするだけで、いつもわたしの演技をずっと良いものにしてくれたのよ。監督と作業をすることは、わたしにとって最も重要なことなの。今作でとてもたくさんのことを学んだように思うわ。
Q:あなたにマシュー、アンと、素晴らしい役者がこの映画に出演しています。彼らと仕事をしてみていかがでしたか?
マシューとアニー(アン)は大好きよ! マシューがしていたことで大好きなことがあるの。トレーラーが集まっているベースキャンプがあって、わたしたちはみんなそこでメイクとかをやってもらうの。マシューはそこのトレーラーに家族と一緒に滞在していたの。だから、彼が仕事をしていない日とか、わたしがランチやメイク直しのためにセットから戻って来たら、彼の子供たちが外で遊んでいるのが見えたの。「なんて美しいのかしら」と思ったわ。映画を作っている間も、自分の生活を続けることができるのよ。仕事をするために、自分の生活をやめる必要はないの。それはわたしにとっていい例だったわ。なぜなら、わたしも家族を持ったらそういうことをしたいと思っているから。彼らは二人とも本当にいい人たちよ。それはとても良かったわ。難しい人たちとは仕事をしたくないの(笑)。
Q:ノーラン監督はブロックバスター映画の黄金時代に育ったと言っていました。あなたが最も影響を受けた作品はどういうものですか?
『インディ・ジョーンズ』が大好きだったのを覚えているわ。『グーニーズ』も大好きだったわ。そうでしょう(笑)? 実は1週間前にまた観たの。なぜって、すごく長い間観ていなかったからよ。「あの映画をまた観たいわ」って思ったの。あの映画は本当にすごくいいの。スティーヴン・スピルバーグがプロデュースしたのよ。そうした映画にとても感激させられたわ。エマ(プロデューサーのエマ・トーマス)は今作について、まるでファミリーアドベンチャー映画だと言っていたの。『グーニーズ』や『インディ・ジョーンズ』はファミリーアドベンチャー映画だから、そのことがわたしを興奮させたわ。両親と子供たちが一緒に映画を観られるというアイデアがね。
Q:今ではファミリー映画=アニメーション映画ですよね?
クリスがそれを変えてくれると思いたいわ。なぜってわたしは子供時代に素晴らしいアドベンチャー映画を家族と一緒に観たのを覚えているからよ。『アナと雪の女王』も大好きよ(笑)。でも、もっとたくさん実写のファミリー映画を観たいわ。
Q:今後やってみたいのはどんな役ですか?
これまでやったのとは違うキャラクターを演じようとしているの。だから、誰かがわたしに脚本を送ってくると、いつも「これはまた同じことを繰り返すことにならないか?」「これまでにやったものみたいじゃないか?」「これは掘り下げることができる新しいことかしら?」と自問するの。今は、コメディーをやる必要があると感じているわ。なぜって、あまりにとても重い役柄を演じてきたからよ。それはとても大きな心の負担になるの。だから、次にわたしが探しているのは、もっとおかしくて、軽くて、ハッピーなものなのよ(笑)。
スティーヴ・カレルととても仕事をしたいわ。彼は素晴らしいと思う。ザック・ガリフィナーキスもすごくおかしいわ。そうでしょう? 彼のことが大好きなの。彼らと仕事ができればすごく楽しいでしょうね。仕事をしに行って、仕事場でずっと笑っていられるのよ。今は、わたしが仕事に行くと、キャラクターとしてずっと泣いているの。だから、そういうコメディーができたらとても楽しいでしょうね。
Q:舞台についてはどうでしょう?
学んだことが一つあるの。舞台では、観客に何を感じているか見せないといけないけど、映画では、もし観客にそれを見せれば演技過剰になるわ。だから、ただ感じないといけないのよ。わたしは今、そういうのを好むようなところにきているわ。その瞬間に身を置くというナチュラリズムが好きなの。必ずいつも舞台に戻ると思うけど、次に舞台をやるときは、とても小さな劇場でやるわ。そんなに(感じていることを観客に)見せなくてもいいようにね。
Q:近年の活躍は本当に素晴らしいですが、何が女優として働くことの原動力になっているのでしょうか?
「アラバマ物語」という本を知っている? わたしの大好きな本なの。本の中で、父親のアティカスが娘に言うの。「その人の身になって、1マイル歩くまで、他の人のことを判断しちゃいけない」って。女優という仕事の素晴らしいところは、他の人の身になるのが仕事だということよ。見ず知らずの人々について学ぶことができる仕事をするポジションに居られるのは、とても幸運なことだと感じるの。それがわたしにとって最もエキサイティングな部分よ。有名であることとかにはそんなに興味がないの。わたしはとてもプライベートな人間だから。わたしにとってとてもエキサイティングなのは、知らない人たちに会ったり、一度も会ったことがない女性たちを演じたりできることよ。
取材後記
サービス精神旺盛でとても楽しそうに作品について語り、これ以上話せないとなると本当に申し訳なさそうな顔……とくるくる変わる表情がとにかくキュートなジェシカ。ノーラン監督の妻でプロデューサーのエマ・トーマスに「わたしたちは長い間、彼女の映画の大ファンだったの。彼女は何でもできるのよ(笑)。だから、彼女に出てもらえてとてもうれしかった」と言わしめたジェシカが、本作でどんな新たな顔を見せてくれるのか注目だ。
『インターステラー』リレーインタビュー バックナンバー
■第1回:エマ・トーマス
映画『インターステラー』は11月22日より全国公開
映画『インターステラー』公式サイト
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