男の魅力がギッシリ!香港映画と魅惑の香港スターたち
今週のクローズアップ
11月21日に香港スター、チャウ・シンチーが監督を務めた映画『西遊記~はじまりのはじまり~』が公開される。そこで今回は「香港映画を観たことがない」という方のために、香港映画のスターや、スターが出演している香港映画の魅力を紹介する。
文・構成:編集部 吉田唯
説明不要!伝説のアクションスター、ブルース・リー
香港映画のスターといわれて、多くの人が一番最初に思い浮かべるのがブルース・リーではないだろうか。1973年に32歳という若さで急逝したブルース・リーだが、没後40年以上が経過した現在でもいまだにその影響力を失っておらず、その事実がまさに彼が伝説である証明であるといえる。
ジークンドーという独自の格闘スタイルを確立させた武道家でもある彼の代表作は、何といっても「考えるな、感じろ」というセリフでおなじみの『燃えよドラゴン』(1973)が含まれる『ドラゴン』シリーズ。目にも留まらぬ速さで繰り出される蹴りや、誰もが知らず知らずのうちに脳裏に焼き付けられている見事なヌンチャクさばき、“怪鳥音”と呼ばれる彼独自の「アチョー!」という叫び声など、次々と繰り広げられるジェットコースターのようなアクションシーンに魅了されること間違いなしだ。
ちゃめっ気と命懸けのアクション!ジャッキー・チェン
ブルース・リーの偉大さが正統派といえるアクション映画を極めた点であるのに対し、ジャッキー・チェンの新しさは従来のアクション映画にコミカルな要素を取り入れた点にある。主演&監督を務めた代表作『プロジェクトA』(1983)では、高い時計台の時計針につかまったジャッキーが頭から地面に落下するシーンが披露され、スタントなしの命懸けのアクションは人々を圧倒した。そうしてアジアに新風を巻き起こしたジャッキーはクリス・タッカーと共演した大ヒット映画『ラッシュアワー』(1998)でハリウッドでの知名度を獲得。持ち前の運動神経とコミカルな演技で世界的スターへの階段を駆け上がった。ちなみに、もはや人間業とは信じられないほどのアクションの数々にはケガやNGがつきもので、そうしたNGシーンがエンドクレジットで紹介されるのもジャッキー作品の楽しみの一つ。
体格とのギャップが魅力!サモ・ハン・キンポー
ジャッキー・チェンの盟友であるサモ・ハン・キンポーは、監督やアクション監督など幅広い才能を発揮しながら、ジャッキーと共にブルース・リー亡き後の香港映画界を率いてきた俳優である。『燃えよデブゴン』シリーズなど、その恰幅(かっぷく)の良い身体からは想像もできない俊敏な動きのアクションは感動を覚えるほどで、アクション映画からコメディー映画まで、多様なジャンルでその魅力を発揮している。また、一時期コメディー系カンフー映画に傾倒しすぎた香港映画からの脱却を試みるために、日本でも知られているキョンシーなど、中国の妖怪に関する映画を多数製作しており、俳優以外での活躍も目覚ましい。近年では、中華圏を中心に絶大な人気を誇る『イップ・マン』シリーズで出演と同時にアクション監督を務めており、年齢を感じさせない大迫力のアクションで人々を熱狂させている。
アイドルから国際俳優への華麗な転身!レスリー・チャン
アイドル歌手として華々しい芸能生活を送っていたレスリー・チャンは、『君に逢いたくて 紅樓春上春』(1978)で映画デビュー。香港ノワールの金字塔『男たちの挽歌』(1986)や、ウォン・カーウァイ監督の『欲望の翼』(1990)、第46回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『さらば、わが愛/覇王別姫(はおうべっき)』(1993)など数々の名作に出演し、確かな演技力を見せつけている。そうして世界中をとりこにしたレスリーだが、2003年に飛び降り自殺。46年の人生に幕を下ろし、その衝撃は世界中を駆け巡った。しかし、彼の魅力は今も作品に焼き付いており、『さらば、わが愛/覇王別姫(はおうべっき)』をはじめ、甘いマスクからのぞく繊細さとどこか孤独を感じさせるレスリーのまなざしには、いつの時代の女性たちも魅了されることだろう。
100本以上の映画に出演!アンディ・ラウ
中華圏を代表する4人の映画俳優・歌手 “四大天王”のうちの一人であるアンディ・ラウ。香港ノワールの代表作である出演映画『インファナル・アフェア』(2002)は、レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモンの共演で巨匠マーティン・スコセッシによって『ディパーテッド』(2006)としてハリウッドリメイクされ、日本でも香川照之や西島秀俊が出演するリメイクドラマが製作されるなど、世界中に香港ノワールの名を知らしめた作品だ。また、100本以上の映画に出演しているだけあって、男の世界を描いたノワール映画から恋愛映画、コメディー映画まで、作品によって多様な顔を見せる演技の幅広さも魅力である。すでに『インファナル・アフェア』シリーズをチェックしている人は、『Needing You』(2000)、『桃(タオ)さんのしあわせ』(2011)といった作品で、アンディの別の一面に触れてみるのもいいかもしれない。
正統派アクションスター!ジェット・リー
シルヴェスター・スタローンやジェイソン・ステイサムら豪華ハリウッドスター軍団の共演で製作された『エクスペンダブルズ』シリーズに参加するなど、いまやジャッキー・チェンと並ぶ世界的スターがジェット・リーだ。『少林寺』(1982)で華々しいスクリーンデビューを飾って以来、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズなど第一線で活躍し続けている彼の特徴は、抜群の跳躍力や流れるような動きからピタリと決まる美しい型など、確かな実力に裏打ちされた迫力のアクションである。一方、脚本を読んでノーギャラでの出演を決めたという『海洋天堂』(2010)では、代名詞のアクションを封印して自閉症の子供を持つ父親を繊細に演じており、アクション映画以外でのジェットを見られる貴重な作品になっている。
香港映画はアクションだけじゃない!トニー・レオン
台湾の巨匠ホウ・シャオシェンの代表作で、第46回ベネチア国際映画祭金獅子賞に輝いた『悲情城市』(1989)をはじめ、それまでアクション映画が主流であった香港映画界に香港ニューウェーブの新しい風を吹き込んだウォン・カーウァイ監督の『欲望の翼』(1990)、『恋する惑星』(1994)、第53回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した『花様年華(かようねんか)』(2000)など、アート系映画に積極的に挑戦してきたのがトニー・レオンである。しかし、そうした映画で見せる繊細な青年の姿とは一転、『ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌』(1992)では男らしいガンアクションにも挑戦している。いずれにせよ、彼の出演作は重厚なストーリーのものが多いので、「アクションばかりの香港映画には興味がない!」という人でも楽しめる作品ばかりだ。
これぞ宇宙最強の男!ドニー・イェン
子どもの頃から熱狂的なブルース・リーファンであったことで有名なドニー・イェン。彼のブルース・リーに対する思い入れは相当なもので、その本気度は『ドラゴン怒りの鉄拳』(1972)をリメイクしたテレビドラマ「精武門」(1995)を製作したことなどによく表れている。そんな彼が憧れの映画界に足を踏み入れるのは自然な流れで、スタントマンなどを経験しながら少しずつ役者としての地位を獲得していった。そうして俳優として活躍する傍ら、アクション監督としても多数の作品に携わってきた彼に転機をもたらしたのは、憧れのブルース・リーの師匠を演じた大ヒット映画『イップ・マン 序章』(2008)である。続編にあたる『イップ・マン 葉問』(2010)でも大成功を収めたドニーは、「宇宙最強」という愛称で呼ばれるようになり、その勢いは50歳を超えた現在も衰えていない。『イップ・マン』シリーズで見せた、激しいアクションをこなしながらも、老成した静かな闘志を感じさせるドニーの演技は必見。