『想いのこし』岡田将生&広末涼子 単独インタビュー
痛みと闘いながら挑んだポールダンス
取材・文:早川あゆみ 写真:高野広美
岡本貴也の人気小説「彼女との上手な別れ方」を、『ツナグ』などの感動作を次々と世に送り出している平川雄一朗監督が、岡田将生と広末涼子を迎えて映画化。金と女にだらしない最低男・ガジロウが、突然の事故でこの世を去ってしまった4人の幽霊の最後の願いをかなえていくファンタジー色豊かな物語が、観る者の心を揺さぶる。同時に、岡田のウエディングドレス姿や、広末と共に披露するポールダンスシーンが公開前から話題だ。互いを親戚みたいな関係だと語る岡田と広末が、撮影現場の様子や本作への思いを明かした。
役者として信頼できる間柄
Q:お二人は2013年のテレビドラマ「リーガルハイ」が初共演で、今回は2度目の共演ですよね。
岡田将生(以下、岡田):そうです。実はこの作品の後にテレビドラマ「白銀ジャック」の撮影でもご一緒していたので、半年くらい共演が続いたんですよ。なので、僕は普段女優さんには一歩引いて「(丁寧に)おはようございます」って感じなんですが、今日、久しぶりにお会いした広末さんには「(フレンドリーに)あ、広末さ~ん、おはようございまーす!」って(笑)。
広末涼子(以下、広末):ちょっと親戚みたいな感じで。こんなに共演が続くことって、あまりないですよね。
Q:お互いにどのような俳優さんだと感じていらっしゃいますか?
岡田:僕にとって広末さんは、昔からテレビでずっと拝見していた大先輩です。役によって「ここまで違うのか!」というくらい違って見えますし、お芝居が大好きで、どうしたら良い作品になるかを常に探って迷っていらっしゃる姿が、とてもすてきだと思います。
広末:岡田さんは「リーガルハイ」のときに、セリフがたくさんあって大変な中、苦戦せずクールにお芝居していらっしゃるイメージがあったので、今回の映画に入る上でも不安は全くありませんでした。ポールダンスの練習でも思い切りぶつかっている姿を見て、すごく心強かったです。ですから、キャリアや年齢は関係なく、自然と役者さんとして信頼できていた気がします。今回は座長ということもあり、自然とみんなを引っ張っていってくれました。とてもうまくみんなのチームワークを作ってくださっていました。
岡田:すごくうれしいお言葉です。
広末:人柄ですよね、きっと。
岡田:そんなことないですよ!(笑)
広末:いえ、ほんとに。「俺についてこい!」って感じではないのに、みんながついて行きたくなっちゃう。それは人柄と、何よりお芝居の力なんじゃないかと思います。お芝居に説得力があるんです。わたしも三つの作品でご一緒して、全然違う役でしたが、すんなりと気持ち良くお芝居の対峙(たいじ)ができる役者さんだなと思いました。
ハードだったポールダンス
Q:完成品をご覧になって、お互いのシーンで印象深かったところはどこでしたか?
岡田:僕はラストシーンの、広末さん演じるユウコと息子・幸太郎との別れのシーンです。母親役としての広末さんの演技が素晴らしかったです。
広末:わたしはポールダンスのシーンですね。男性だと筋力があって上手にできるのかなと思っていたのですが、男性の方が皮下脂肪が少ないから女性よりも痛みが強いと、指導してくださった先生に聞いて。しかも岡田さんは「自分は体が硬いから」と、すごく苦労されていましたよね。それなのに、「自分は男だからフォローしたい」という気持ちをわたしたちに対して強く持ってくださっていました。ご本人を前にして言うのもちょっと恥ずかしいのですが、「とっても男らしい一面がある方なんだ」とかなりグッときました。そのときの岡田さんは女装姿なんですけどね(笑)。
Q:岡田さんは撮影中、ポールから降りてくる広末さんにすっと手を差し伸べてサポートしたりしていらっしゃいましたよね。
岡田:それは完全に無意識でした。ポールダンスはみんなが大変だったから、助け合わないとって気持ちが強かったんじゃないでしょうか。
広末:(ポールダンスのシーンは)肉体的にも精神的にもハードでした。役者の体力をキープするため、リハーサルは先生にやっていただき、一発本番で撮影するという、ちょっと特殊な方法をとってもらったりしていました。
岡田:それでも僕は、体が痛くてポールに触れなくなって、痛み止めも打ちました。全部が終わった後は体がまったく動かなくて、スタッフに服を脱がせてもらい、汗も拭いてもらって、「おじいちゃんみたいだね、ごめんなさい」って……。燃え尽きました。
Q:広末さんたち女性陣は3か月、岡田さんも1か月半、ポールダンスの練習にかけたと聞いています。完成した今、相当の充実感があるのではないでしょうか。
広末:わたしたちのできることはやり切ったと思います。当たり前ですが、スピードや技の切れはプロの方にはどうしたって追い付けないんです。でも、スタントは立てずに自分たちでやろうって決めていたので。
岡田:充実感はとてもありましたね。
一番抵抗があったシーン
Q:今回、岡田さんはウエディングドレスを着たり、男性とキスしたり、ポールダンスを踊ったり、多くのチャレンジがありました。一番抵抗があったのはどれでしたか?
岡田:ウエディングドレスは二度と着たくないですね。体のラインをきれいにするためにコルセットを着けたのですが、あんなにきついものを締めるのはもう嫌です。
広末:似合っていましたよ?(笑)
岡田:似合っていると言われても嫌だし、似合っていないと言われるのも複雑です(笑)。でも一番抵抗があったのはやっぱり、ポールダンスのときの女装かな。撮影所の顔なじみのスタッフさんに見られて、「おまえ何やってんだよ!」「とうとう違う道に行っちゃったのか」って、散々だったんですから。
広末:でもホントに似合っていて、とってもきれいでした。劇中では「気持ち悪い~」という空気を作らないといけないのに、「あれ、結構きれいだね」って思ってしまったので、お芝居に困るくらいでした(笑)。
人によって感銘ポイントが違う映画
Q:完成品をご覧になって、どんな映画になったと感じられましたか?
広末:わたしは自分が出演しているにもかかわらず、ボロ泣きしてしまいました。四つもクライマックスがある、すごくぜいたくな映画だと思います。ファンタジー要素が強いので女性にメッセージしやすい内容なのかなと思っていましたが、一緒に観ていた若い男性スタッフがすごく泣いていて、男性も大丈夫なんだ! とうれしくなりました。
岡田:僕は逆に、自分の出演作は普通に観られなくて、「撮影、大変だったよな」という思いがよぎっていました(笑)。でも、おっしゃる通り、四つのポイントがずっしり来ますよね。男性か女性か、あるいは年代によっても、感銘を受けるポイントが全然違うのかなって気がします。ただの泣ける映画ではなく、笑いもあって、爽やかな気持ちになれる映画になったと思います。
広末:キャッチコピーにもなっていますが、「明日、この世から自分が消えてしまうとしたら、今日、あなたは誰にどんな想いを伝えますか?」というのは、この映画の大きなメッセージだと思うんです。今、何が起こってもおかしくないこの時代の中で、そんなふうなメッセージがちゃんと届いたらいいなと思います。
「親戚みたい」という言葉以上に親しげな二人。写真撮影の合間にも気さくに世間話をしていて、まるで久しぶりに会った仲良しの姉弟のようだ。真面目で当たりの柔らかい穏やかな岡田と、キュートで生き生きとした広末から生まれてくる和やかな雰囲気は、劇中の二人の役柄や関係とはまったく違い、俳優とは不思議な生き物だとつくづく感じる。ポールダンスやウエディングドレス姿といった華やかな見どころと、心が温かくなる優しさが備わった映画の完成に、誇らしげにほほ笑み合う二人の姿が印象的だった。
(C) 2014「想いのこし」製作委員会
映画『想いのこし』は11月22日より全国公開