『ANNIE/アニー』キャメロン・ディアス単独インタビュー
40歳を過ぎて行き着く場所を模索中
取材・文:細木信宏/Nobuhiro Hosoki
名作ミュージカルを原作に、4歳でレストランに置き去りにされた少女アニーの姿を追うミュージカル映画『ANNIE/アニー』で、アニーが暮らす施設の経営者で、子供たちに手を焼く横暴な女性ハニガンを演じたキャメロン・ディアス。彼女のような子供たちと施設で暮らしていたアニーが、ニューヨーク市長候補のスタックスと出会い、支持率向上を狙う彼と暮らすことに。徐々にアニーに親心を抱き始めるスタックスと、けなげに生きるアニーの姿が描かれる本作についてキャメロンが語った。
舞台は現代のニューヨーク!
Q:主人公のアニーはとても冒険心の強い少女です。若いころからモデルとして活動し、日本に住んでいたこともあるキャメロンさんとしては、自分の少女時代との共通点を見いだしたりはしませんでしたか?
海外や他の国の人々に興味を持っていたから、自らその地を訪れて、新たなことを学んだわ。そんな冒険心はわたしのキャリアを築き、今でもその心を持って女優業をしている。でも、モデルという選択はわたし自身が望んだことで、そうしなければいけなかったわけではないの。両親もその選択をサポートしてくれた。だけど、アニーは、(両親に置き去りにされたことで)全てが彼女自身の手に委ねられてしまうのよ。
Q:本作では、舞台を原作の世界大恐慌直後から現代のニューヨークに移しています。こういった、これまでの「アニー」とはひと味違った点にひかれる部分はありましたか?
世界恐慌直後の時代を経験していないわたしたちが原作の世界に入り込んでいくよりは、現代という設定の方が俳優にとっては演じやすかった。(観客の)子供たちも当時を知らず、中には世界恐慌の意味さえわからない子もいるから、理解できない世界を見ることになってしまう。孤児院などという言葉も、現代ではほぼ使われていないしね。でも、現代版で描かれる「フォスターチャイルド」という言葉や、携帯電話などを使ったソーシャルメディアという存在は今日のものだから、子供たちも理解ができるはずよ。
Q:劇中では歌やダンスにも挑戦されていましたね。撮影前にレッスンを受けたのですか?
(うまく歌うためには)かなりの手助けが必要だったわ。いかに声を出すかに焦点を絞って、優秀な先生たちに囲まれながらベストな声を出すための訓練を受けた。個人的には2年間ぐらいかけてから撮影に入りたかったけれど、実際には3か月の歌声練習を行ったの。だけど、ダンスならいつでもできるわよ。大好きだし、歌よりも自信があった。ダンスならどんなステップでもすぐに把握して踊れると思うけど、歌は別物ね。
間違ったことに焦点を合わせる社会にNO!
Q:『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~』でも素晴らしい演技を見せた、アニー役のクヮヴェンジャネとの共演はいかがでしたか?
彼女はとてもスイートな女の子よ! 『アニー』のような話題作の主演を務めるのは、子役にとって大仕事のはずだけど、優雅な演技を見せていたわ。今の子役というのは、年齢のわりにすごく大人びていると評価されることが多々あるけれど、クヮヴェンジャネは等身大の11歳の女の子という感じで、わたしは好きだった。彼女やアニーの仲間を演じた子役たちは、映画界という大人の世界で大人の仕事をしていたけれど、セットではあくまで子供らしくして、素晴らしかったわ。
Q:あなたが演じるハニガンは、そんな子供たちにとても辛らつな言葉を浴びせるキャラクターでした。彼女のキャラクターについてはどのように分析されていますか?
ハニガンは、結婚しなかったことやパートナーがいないことで、人生に失敗したと思っている女性で、当時(世界恐慌直後)ならば理解できる設定よね。特に当時は、結婚して家族をつくらない人は、価値のない、見捨てられた存在だともいわれていたから。でも自分自身を愛することができなければ、決してハッピーにはなれないし、自分の価値だって理解できない。ハニガンが子供たちに対して卑劣でヒドい態度を取るのも、彼女が自分自身に対してもそういう扱いをしてきたからだと思うの。本作でも、ハニガンが自分自身を愛さなければ、他の人にも優しくできないということが描かれているのよ。それに現代社会だって、より多くの人にFacebookで「いいね!」と評価されたり、(ツイッターで)フォローされたり、VineやYouTubeで有名になることで、自分に愛される価値があるのかないのかを証明できると信じている人たちがいるという問題を抱えている。そんなの全く真実ではない誤った考えで、間違ったことに焦点が合っていると思うわ。
女優として40代で迎える変化
Q:映画の冒頭では、ニューヨークのストリートの音が使用されているようですが、そのアイデアはどこから?
あのアイデアや本作の全ては、ウィル・グラック監督の明確なビジョンから生まれたものよ。グラック監督は、わたしたちの世代が知り、観たいと思う『アニー』を現代的な要素と融合させて描き出した。それに、わたし自身が30年間歌ってきて、今でも知っている(アニーが歌う『Tomorrow』などの)愛すべき楽曲が流れ、さらに現代版ならではの曲も使われている。劇中の楽曲は、いつラジオで流れていてもおかしくないものなの。
Q:キャメロンさんはこれまで多くのコメディー作品にも出演されてきました。近年、演技へのアプローチが変化したと感じることはありますか?
わたしの純粋な経験上、年を重ねるごとにそれが変化してきたことは確かね。自分がやることについて、多くを理解することで、異なった(演技の)引き出しを持つことができるし、より良い自分になることもできる。多くの人と関わる中で彼らの仕事ぶりを見て影響されることで、「そんな演技を考えたこともなかった」と感じることもあるの。だから何事にも、失敗することに対してさえもオープンでいられたなら、演技を通してさまざまな表現ができるということになるわね。
Q:ハリウッドでは、一定の年齢に達した女優には声が掛からなくなり出演作品が減るともいわれます。
ハリウッドでは、わたしくらいの世代に突入した女優は、ある役柄が演じられなくなるといわれているわね。でも、実際のところ役はたくさんあるのよ。(年齢的に)演じられなくなった役柄を(今でも)やろうとするから、みんな問題を抱えることになるの。その役がセクシーで魅惑的なキャラクターであれば、余計それを手にすることはできないわね。
Q:でもあなたは、40歳を過ぎた今でもトップ女優として活躍されています。
アカデミー賞を受賞してきたような女優たち、メリル・ストリープ、ヘレン・ミレン、ジェシカ・ラングなんか、わたしより年上だけど今でもベストな役を手にしているわよ。わたしだって、アクション映画に出てくる純情な女の子が今の自分にベストな役だとは思わない。キャリアの浅い若手女優ならばそれでも良いけれど、今の年齢でそんなキャラクターを演じたくはないわ。現時点では、自分がこれからなるであろう人物像であったり、(これからの人生で)行き着く場所を探索させてくれるような役柄を求めているの。これからも、その役が自分に舞い込んでくることもあれば、自分で探していくこともあるでしょうね。
設定を現代のニューヨークに移し、天才子役クヮヴェンジャネ・ウォレスを主演に迎えた本作では、現代の社会情勢を盛り込んだ物語が、アニーたちが歌う「Tomorrow」やポップソングと共に展開。ミュージカルが苦手な若者たちや『アニー』を全く知らない子供たちも関心を持てる作品になっているだけでなく、 長年、原作に親しんできた世代も楽しむことのできる工夫がなされた家族映画に仕上がった。
写真:(c) Armando Gallo / Retna Ltd. / Corbis / amanaimages
映画『ANNIE/アニー』は1月24日より全国公開