甘酸っぱくて、そして残酷……中学生を題材にした映画特選
今週のクローズアップ
好奇心旺盛で、甘酸っぱくて、でも残酷で……大人でも子どもでもない多感な時期。今週は、そんな中学生を題材にした作品を厳選してご紹介します。(編集部:山本優実)
『天然コケッコー』中学生だからこその甘酸っぱさ
くらもちふさこの同名人気少女漫画を、『リンダ リンダ リンダ』『苦役列車』の山下敦弘監督、『ジョゼと虎と魚たち』の渡辺あやが脚本で映画化した青春ストーリー。小中学校合わせても、たった6人の生徒しかいない田舎の分校を舞台に、転校生との甘酸っぱい初恋や、友人や家族との何げない日常を、伸びやかに描き出す。主人公の中学2年生のそよを夏帆が、東京から転校してきた大沢を岡田将生がさわやかに演じる。
大沢と神社の裏で初キスするシーンで、ぎこちなく「キスする前に握手しよう!」と言ったり、卒業式では勢い余って歯と歯をぶつけたりと、天然ボケをさく裂させるそよがとにかくキュート。一方で「女とキスをした」と男友達に自慢する大沢の中学生らしい「大人の背伸び」もほほ笑ましい。夏休み、バレンタインデーなど中学生の甘酸っぱいエピソードがみずみずしく描かれ、忘れかけていた初恋の思い出がよみがえる。
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『くちびるに歌を』中学生だからこその一生懸命
シンガー・ソングライター、アンジェラ・アキの名曲「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」を題材にしたテレビドキュメントから着想を得た中田永一の小説を、『ホットロード』『アオハライド』などを手掛けた純愛映画の名手・三木孝浩が実写化したヒューマンドラマ。
産休を取ることになった親友の音楽教師ハルコ(木村文乃)の代理として、生まれ故郷の五島列島にある中学の臨時教師となった元ピアニストの柏木(新垣結衣)が、中学校の合唱部顧問として生徒たちと心を通わせていく姿を描く。母親は病死し、父親に捨てられた女子生徒や、自閉症の兄を持ち、自分は「兄の世話をするために生まれてきた子」と自覚する男子生徒……。内に秘めた思いを抱えながらも、全国コンクールで優勝するという目標のために、発声練習や筋トレなどに一生懸命に取り組んでいく。柏木が「どうしてそんなに頑張れるの?」と言うセリフそのまま、中学生だからこそ一つのことに懸命になれるひたむきな姿に、大人も胸を打たれる。
映画『くちびるに歌を』は2月28日より全国公開
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『中学生円山』中学生だからこその妄想
毎日、妄想に明け暮れる中学2年生の円山克也(平岡拓真)が、同じ団地に越してきた謎のシングルファーザー(草なぎ剛)と出会ったことで成長していく、宮藤官九郎監督による爆笑ホームドラマ。
自分以外の家族が宇宙人だったら……お風呂にカッパが住み着いていたら……など、子どものとき一度はする妄想を1本の映画にしてしまった本作。主人公が「自分の股間をなめる」という行為を達成するために、ストレッチという名の“自主トレ”にふけるシーンや、抑えきれないエッチな妄想など、「中学生の男子にしかわからない」行動をクドカンワールド全開で面白おかしく描く。その一方で「考えない大人になるくらいなら、死ぬまで中学生でいるべきだ」という裏メッセージも込められている。
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『ドロップ』中学生だからこそのワルへの憧れ
人気お笑いコンビ「品川庄司」の品川ヒロシが、自らメガホンを取り自伝的小説「ドロップ」を映画化した青春ドラマ。監督の分身ともいうべき主人公・信濃川ヒロシを成宮寛貴が、カリスマの不良・井口達也を水嶋ヒロが演じる。そのほか宮川大輔、レイザーラモンRGやFUJIWARA藤本、ピース綾部など吉本芸人が脇を固める。
「不良になりたい」という理由のために公立校に転校し、授業をさぼって不良仲間とつるんでは、ケンカ三昧の日々を送る主人公。そうした日常の中で友情や愛、そして別れを知り、成長していくさまをすがすがしく描く。一度はワルへの憧れを持った人なら必見!
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『リリイ・シュシュのすべて』中学生だからこその残酷さ
ウェブサイト上で展開されたインタラクティブ・インターネット小説から生まれた衝撃の問題作を『スワロウテイル』などの岩井俊二監督が映画化。リリイというカリスマシンガーに魅了された蓮見雄一を取り巻く人間関係と、中学生という心身共に不安定な時期を過ごす彼らの心の闇、焦燥、痛みを鮮烈に描き出す。
カツアゲ、レイプ、いじめ、自殺などショッキングな内容を扱い、岩井俊二作品の中でも「鬱(うつ)映画」と評される本作。無邪気に笑っている時でも目の奥のどこか居心地の悪そうな、かなしみを押し殺すような中学生の微妙な心情が一つ一つ丁寧に描かれている。主演を務めた市原隼人はじめ、蒼井優、伊藤歩、勝地涼、忍成修吾といった若手実力派俳優の演技が光る。
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『カラフル』中学生だからこその心の矛盾
直木賞作家・森絵都の同名小説を『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』『はじまりのみち』などの原恵一監督がアニメーション化。突然現れた天使により、自殺してしまった少年・小林真の体に「ホームステイ」することになった主人公の心の旅が展開する。声優に、宮崎あおい、麻生久美子、南明奈など。
現世に戻る再挑戦のため、真として生活を始める「ぼく」。一見幸せな家庭に恵まれた真が、なぜ自ら死ぬという選択をしたのか、次第に心の闇を知ることになる。思春期ならではの「性」に対する嫌悪感や、「好きなものをぐちゃぐちゃにしたくなる」矛盾した心のモヤモヤを繊細に描き出す。心の旅を通じて主人公が生きる勇気を見いだしたとき、温かい涙がこぼれる珠玉の感動作だ。
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まだある!中学生を題材にした作品
『ソロモンの偽証 前篇・事件』
人気作家・宮部みゆきのベストセラーを実写化した、ミステリー2部作の前編。ある中学校で起きた不可解な男子生徒死亡事件と、その真相を暴こうとする女子中学生の学校内裁判の行方を追い掛ける。いじめの仕返しに、いじめっ子を真犯人に仕立てようと告発状を提出する女子生徒や、告発されるいじめっ子の不良、いじめの現場を目撃しても、見て見ぬふりをしてしまった主人公、謎の死を遂げた男子生徒の友人など、さまざまな人間関係を描き出し、リアルな中学生の心をえぐる。監督を務めるのは、『孤高のメス』『八日目の蝉』などの成島出。本作のために1万人にも及ぶ候補者の中からオーディションで選び抜かれた生徒役33人の熱演が見どころ。
『ソロモンの偽証 前篇・事件』は3月7日より公開
『ソロモンの偽証 後篇・裁判』は4月11日より公開
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『耳をすませば』
「りぼん」に連載された、柊あおいによる少女マンガを、スタジオジブリ製作で映画化したアニメ作品。高校受験を控えた中学生の雫が、夏休みにバイオリン職人を目指す少年・天沢聖司と出会い、恋に落ち、自らの将来について考える青春ストーリー。
「あんなヤツ大嫌い」から始まった雫の恋は、一気に「一生一緒にいたいくらい大好き!」という状態まで盛り上がっていく。そんな、大人になってしまうとなかなか体験することのできない純粋すぎる恋模様が、中学生の女の子を取り巻くリアルな現実を交えながらつづられていく。
『告白』
教え子にまな娘を殺された中学校教師の復讐(ふくしゅう)を描くミステリー。『嫌われ松子の一生』『渇き。』の中島哲也監督がメガホンを取り、第34回日本アカデミー賞では作品賞を含む4冠に輝いた。時折ユーモアをちりばめロック音楽をかぶせつつ、13歳をめぐる殺伐とした今をポップな宗教画のようなタッチで描き出していく。
教師役の松たか子をはじめ、木村佳乃演じる過保護な母親、橋本愛演じるクラス委員長、西井幸人演じる殺人事件の主犯格・少年Aなど、役者の熱演は鳥肌もの。
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『映画 暗殺教室』
「週刊少年ジャンプ」で連載され、累計発行部数1,100万部(既刊11巻)を突破した松井優征の人気コミックを、実写映画化したアクションコメディー。地球の破壊を表明している正体不明の生物・通称「殺せんせー」と、殺せんせーを暗殺することになった生徒たちが壮絶なバトルを繰り広げる。出演は、Hey! Say! JUMPの山田涼介をはじめ、菅田将暉、山本舞香、椎名桔平ら。ドラマ「MOZU」などの羽住英一郎がメガホンを取り、金沢達也が脚本を務める。
『映画 暗殺教室』は2015年3月21日全国公開
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