『アナ雪』だけじゃない!サントラを“即買い”したくなる映画
今週のクローズアップ
昨年、日本でも空前の大ブームを巻き起こした『アナと雪の女王』。観た直後に思わずサントラを買ってしまったという人も多いのでは? 今週のクローズアップでは、そんな『アナ雪』同様、観ればサントラを“即買い”したくなること間違いなしの公開中作品をピックアップ。映画ファンはもちろん、音楽ファンも要チェック!(編集部・中山雄一朗)
♪シーアが名曲を現代版にアレンジ『ANNIE/アニー』
先日発表された“最低映画の祭典”ラジー賞で、見事(?)最低リメイク賞を受賞、主人公の意地悪な里親役のキャメロン・ディアスが最低助演女優賞にノミネートされてしまった『ANNIE/アニー』だが、何げに音楽はかなり本格的。手掛けたのは、リアーナの「ダイヤモンズ」をはじめ、自らがボーカルとして客演参加したデヴィッド・ゲッタの「タイタニウム」やフロー・ライダーの「俺たちワイルド・ワンズ(Wild Ones)」など、数々のヒットソングを世に送り出してきたオーストラリア出身のアーティスト、シーアだ。
本作では、そのシーアが長年タッグを組んできた音楽プロデューサー、グレッグ・カースティンと共に、「アニー」の名曲を2014 Ver.として現代版にアレンジしているほか、映画のために書き下ろした新曲を複数提供。そのうちの一つで、アニーがパーティーでオーケストラをバックに歌う「オポチュニティ」は、第72回ゴールデン・グローブ賞歌曲賞にもノミネートされた、本作を代表する一曲。サントラには、作品中では使われていないシーアが歌うバージョンも収録されており、こちらも必聴だ。
また、市長選のためにアニーを引き取ることになる携帯電話会社CEO役のジェイミー・フォックスの歌声はさすがの一言。『ドリームガールズ』等でもその実力は証明済みだが、実はジェイミーは、ラッパーのT-PAINをフィーチャーした「ブレイム・イット」でグラミー賞最優秀R&Bパフォーマンス(グループ)賞に輝くなど、れっきとしたアーティストとしても活躍しており、本作でも一人うまさが際立っている。
♪ビヨンセら超豪華アーティスト集結『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』
もともとはロンドン在住の主婦が趣味でインターネットに投稿したものだが、今や50か国以上で翻訳され、全世界で累計1億部(電子書籍を含む)を超える大ベストセラーとなった官能小説の映画化とあって、製作開始当初から大きな注目を浴びてきた『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』。人を心から愛せず、ある特異な嗜好(しこう)を持つイケメン大富豪のグレイ(ジェイミー・ドーナン)と、彼の要求に戸惑いながらも初めて愛した男性の全てを受け入れようとする女子大生のアナ(ダコタ・ジョンソン)。かなり過激な描写も多い本作だが、それを上品かつスタイリッシュに見せるのに一役買っているのが、豪華アーティストたちによる音楽だ。
昨年7月に公開された予告編第1弾では、ビヨンセの大ヒット曲「クレイジー・イン・ラヴ」がエロティックにリミックスされた新バージョンが使われたことが話題を呼んだが、本作のサントラにはほかにも、アリアナ・グランデとのデュエット曲「ラヴ・ミー・ハーダー」で知られるR&Bアーティスト、ザ・ウィークエンドをはじめ、エリー・ゴールディング、スカイラー・グレイ、前述のシーアらの新曲を収録。ザ・ローリング・ストーンズやフランク・シナトラといった大御所たちの楽曲も収録されている。
また、映画の音楽を手掛けたのは、ティム・バートン作品の作曲家としておなじみのダニー・エルフマン。曲は提供していないが、グレイの義妹役でなぜかイギリスの人気アーティスト、リタ・オラがちょろっと出演しているのも気になるところ。
♪音楽のセンスが光る感動作『きっと、星のせいじゃない。』
ベストセラー小説「さよならを待つふたりのために」を、『(500)日のサマー』の脚本家コンビが映画化した本作。皮肉屋だけど情愛にあふれ、自分のことより自分が死んだ後の両親のことを心配してしまう末期がん患者のヘイゼル(シャイリーン・ウッドリー)と、骨肉腫を克服するために片脚を切断したがウイットに富んでいて底抜けに前向きなガス(アンセル・エルゴート)。難病を患いながらも懸命に生きる男女の恋を切なくもポジティブに描いた感動作だ。
本作にもまた、昨今のチャートをにぎわす若きミュージシャンたちが集結。イギリスの人気シンガー・ソングライター、エド・シーランを筆頭に、イギー・アゼリアの「ファンシー」でフィーチャーされブレイクしたチャーリーXCX、デビューアルバムがいきなりUKチャート初登場1位を飾ったジェイク・バグ、シングル「タン・タイド」がiPod touchのCMで起用され、人気ドラマ「Glee」でもカバーされたバンド・グループラヴ、アイルランド出身のバンド・コーダラインらが曲を提供。選曲の素晴らしさにうならされる。
中でも、エド・シーランが映画のために書き下ろしたエンディングテーマ「オール・オブ・ザ・スターズ」は、ピアノの旋律とエドの歌声が美しい名曲。チャーリーXCXの「ブーム・クラップ」も、聴けば本作のワンシーンが自然と思い浮かんでくるほど映画にマッチしている。
♪キーラ・ナイトレイがキュートな歌声を披露『はじまりのうた』
第80回アカデミー賞歌曲賞を受賞した『ONCE ダブリンの街角で』のジョン・カーニー監督がメガホンを取った本作は、恋人に裏切られた失意を抱えたミュージシャンの女性が、落ち目の音楽プロデューサーとの出会いを通して、人生の新たな一歩を踏みだすさまを描いたヒューマンドラマ。主人公グレタを演じたキーラ・ナイトレイの歌声は特別うまいという感じではないが、どこか素朴でキュート。『アベンジャーズ』のマーク・ラファロ演じるプロデューサー・ダンによって魅力を開花させていく姿に惹(ひ)き付けられる。
また、本作にはグレタの恋人デイヴ役でMaroon 5のアダム・レヴィーンが映画初出演を果たしている。本年度のアカデミー賞歌曲賞にもノミネートされた劇中歌「ロスト・スターズ」は、これまたアダムのファルセットが心地よい名曲で、Maroon 5の最新アルバム「V」にもボーナストラックとして収録されており、聴いたことがある人も多いかも。サントラには、デイヴがCD化のために録音したアップテンポなバージョンも収録。劇中ではグレタから「曲の良さが台無し」とダメ出しされてしまっていたが、これはこれで良いような気がしたり。
ほかにもヒップホップシーンから、大物ラッパーのトラブルガム役で「フォーゲット・ユー」の大ヒットで知られるシーロー・グリーンも出演している本作。お金のないグレタやダンたちがニューヨークの街角をスタジオ代わりにしてレコーディングしていくシーンは最高にハッピーだ。