「バットマン」前日譚!海外ドラマ「GOTHAM/ゴッサム」現場取材レポート!
■「バットマン」前日譚!海外ドラマ「GOTHAM/ゴッサム」現場取材レポート!
ゴッサム・シティーを舞台に、人気ヒーロー「バットマン」の誕生秘話を描いた話題騒然のテレビシリーズ「GOTHAM/ゴッサム」。全米では昨年9月に放映がスタートし、プレミアのエピソードの視聴者数が1,200万人と大ヒット。批評家の評価も非常に高く、今年1月、早々に第2シーズンの製作が決定している。(取材・文:吉川優子)
主人公は、後にゴッサム市警の本部長となるジェームズ・ゴードン刑事で、映画『ダークナイト』トリロジーでは、ゲイリー・オールドマンが務めた役どころ。ゴードンがまだ駆け出しの頃、後にバットマンとなるブルース・ウェインの両親の殺人事件を担当することになるところからストーリーは始まる。ペンギンやリドラー、キャットウーマンといった有名なヴィラン(悪役)たちが、どのようにして生まれたのかといった裏話や、ゴッサムを牛耳る暗黒街のボスたちの権力抗争など、見どころ満載の壮大なクライムサスペンスとなっている。
■ニューヨークがゴッサムに!
撮影が行われているのはニューヨーク。街のあちこちでロケが行われているが、ゴッサム警察署などメインのセットが組まれているのは、ダウンタウンから川を渡ってすぐのブルックリンにあるスタイナー・スタジオだ。大作映画のような豪華なセットをいくつか案内された後、主要キャストやプロデューサーらに新番組の魅力について話を聞いた。
■主人公はゴードン!
ゴードンを演じるのは、ドラマ「The OC」「サウスランド」で知られるベン・マッケンジー。意志の強さと人柄の良さが感じられるテキサス男のベンは、正義感溢れるゴードン役にピッタリ。世界的に注目されている新番組の主演、それも「バットマン」の前日譚(たん)ということでかなりのプレッシャーがあったという。「『バットマン』は75年間も存在していて、これまでに数多くの監督やライターたちによってさまざまに解釈されてきた。僕のアイデアをそこに足すことができるなんて名誉なことだよ。だから、失敗しないように頑張っている。このドラマがオリジナルストーリーというところも大好きだね。彼がどういう人になっていくかに縛られなくてすむから、ある意味自由に演じることができる。若者がトラウマを経験し、復讐しようとするのは、世界的に共感出来るコンセプトだと思うよ」。
さらに「各エピソードをできるだけ映画的な経験にする、というのが僕たちの目標なんだ」と言うベン。確かに本作は、テレビ番組とは思えない映像の美しさが特徴だ。映画の半分くらいの尺であるテレビ番組を9日間で撮影しないといけないため、撮影のペースはとても早い。アクションシーンも多く、以前、壁にぶつかってケガをしたときの傷跡が、まだ額の右側にはっきり残っていた。
「ファイトシーンがあるたびにスタント・コーディネーターと一緒にどうやるか考えるんだ。それと、以前やった警察もの『サウスランド』で、LAPD(ロサンゼルス警察署)と仕事をしたときに身につけた戦術トレーニングも使っている。警官たちと一緒に過ごして、彼らのメンタリティーを理解できたのは役立っているよ。肉体的には、ボクシングやレスリング、ムエタイとか何でも使うね。カンフー映画の反対で振り付けは少なく、もっと素早く残忍で、荒削りなファイトなんだ」。
ゴードンがパートナーのベテラン警官ハービー・ブロックと共に、毎回新たに起きる事件の捜査に当たると共に、シリーズ全体にわたってウェイン夫妻の殺人犯を追い続けるというストーリーが並行して展開。正直者のゴードンが、腐敗しきったゴッサムで仕事をするために、妥協せざるを得ない状況が次々と起きる。「エピソードが進むにつれて、彼の道徳的な厳格さはすり切れてきて、最終的には多分、破壊されることになる。また彼のフィアンセ、バーバラ・キーンとのロマンスや、警察権力、犯罪組織のメンバーとの関係も描かれる。彼は、ゴッサムの全ての人々と関係があり、みんなをつなぐ者でもあるんだ」。
■ゴードンの仲間たち
理想に燃える新米刑事とは対照的なパートナー、ベテラン刑事のハービーを演じるのは、「サン・オブ・アナーキー」のドナル・ローグだ。二人が一緒のシーンには、どこかバディ映画を思わせるようなユーモアがあって、相性の良さを感じさせる。「ハービーは、最後の数年を務めあげて、年金をもらって辞めることに夢中なんだ。彼はこれまでにゴードンみたいな奴が来ては去っていくのを長い間見てきた。でも、ゴードンは本当に素晴らしい資質を持っているから、ハービーは、自分のかつての姿を思い出すようになると思うよ。ハービーがなぜ皮肉屋になったのか、そういうオリジンストーリーも出てくる」。
後にバットマンになるブルース・ウェインを演じるのは、「TOUCH / タッチ」で無言症の繊細な少年を演じた15歳のダヴィード・マズーズ。「バットマン」の大ファンだったそうで、ウェイン役に抜てきされてから、さらに徹底的にリサーチしたと語る。
「バットマンはスーパーパワーを持っていないから大好きなんだ。彼は悲劇に見舞われるけど、それを決断力や強さ、知性といった内的なものに転化し、それらを使ってケープをまとったクルセイダー(十字軍騎士)になるんだよ。多くの人たちがバットマンを演じてきたけど、僕のインスピレーションを選ぶとしたら、クリスチャン・ベイルだ。彼が演じるまで、あれほど暗くてシリアスなバットマンは誰も見たことがなかった。マイケル・キートンやアダム・ウェストが演じたバットマンは、もう少し軽く、明るかった。この番組では、間違いなく彼のダークサイドを見ることになるよ」。
■個性的な悪役が画面を彩る!
番組に登場するヴィランたちもとても魅力的で、大きな見どころとなっている。ジェイダ・ピンケット・スミスが迫力満点で演じるフィッシュ・ムーニーは、新たに作られたキャラクターだ。ナイトクラブを経営するこの残忍な女ボスは、年老いてきたマフィアのボスの地位を狙い、さまざまな策略をめぐらす。
そして、彼女のアシスタントのオズワルド・コブルポットことペンギンを演じているのは、「ウォーキング・デッド」などに出演したロビン・ロード・テイラー。ブロンドの髪を染め、鼻にプロセティックをつけてペンギンになりきっているロビンは、この役で一気にスターになった感がある。「『バットマン リターンズ』のダニー・デヴィートも、オリジナルのテレビシリーズのバージェス・メレディスも素晴らしかったけど、彼らの中間をうまく見つけることができていればいいな」。
また番組の冒頭、ウェイン夫妻の殺人を目撃する孤児でスリのセリーナ・カイルを演じるのは、まだ16歳というキュートなキャムレン・ビコンドヴァ。ダンサーでもあるキャムレンは、のちにキャットウーマンとなるセリーナの動きを、「(飼っている猫の)ミスターGの動きを見て研究した」そうだ。彼女とブルースとの関係がどう展開するのかも注目だ。
そのほか、リドラーになるエドワード・ニグマ役にコーリー・マイケル・スミス、ブルースのバトラー、アルフレッド役にショーン・パートウィーなど、全てのキャストに実力派が勢揃い。クリエイターのブルーノ・ヘラー(「ROME [ローマ]」や「THE MENTALIST メンタリストの捜査ファイル」など)が、「人々がそれぞれのキャラクターに持っているイメージを大事にしながら、新しいことをフレッシュな視点で描かないといけない。そのバランスが難しい」と語っていたが、今のところ、そのチャレンジを見事に乗り越えている。テレビの枠を超えたスケールの大きな今番組、観始めたら絶対ハマルこと間違いなしのお勧め作品だ。
海外ドラマ「GOTHAM/ゴッサム」はAXNで放送中
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